韓国の文在寅大統領は10日、国内企業トップらを招集し会議を開いた。日本による半導体の材料など3品目の輸出規制強化の撤回を求めていると話すとともに、協議に応じない日本側を牽制。また、日本時間10日未明に行われた世界貿易機関WTO)の理事会でも、日本による「政治目的での経済報復措置」だと主張し、撤回を求めている。

 こうした主張に対し日本政府は「韓国の輸出管理については、適切な輸出管理が行われていないと懸念される事例がある」(野上浩太郎官房副長官)とコメント。“不適切な輸出”が何かは明らかにしていないものの、軍事転用が可能な戦略物資が韓国から他国に流れていることを懸念している。

 そうした中、韓国政府は軍事転用可能な戦略物資の密輸出をこの4年間で156件も摘発していたと明らかにした。その中には今回、日本が輸出規制を強化した3品目の1つ「フッ化水素」もあり、アラブ首長国連邦UAE)などに不正輸出されていた。

 摘発した156件について韓国政府は、「輸出管理が効果的に運営されている証拠だ」と実績をアピールしている。また、北朝鮮へのフッ化水素の横流しを日本が疑っているとしたうえで、「いかなる証拠も発見できない」と真っ向から否定した。

 不正輸出の摘発件数は、文大統領の就任前は年平均で約18件だったのに対し、就任後は年平均約60件。いかにも急増しているように見えるが、東京大学先端科学技術研究センター助教の佐藤信氏は「日本側と韓国側とで、同じ数字を見ていても言い分が違う」と指摘する。

 「気をつけておきたいのは、これは韓国政府から示されたデータで、日本が『不適切な事案がある』と指摘したデータに該当するかはわからないこと。北朝鮮に横流ししている可能性があるというのは、日本政府が別に何らかの強い情報を持っている可能性があるが、それらが積極的に示されない限り、日本の措置が『報復』だと言われる恐れは常にある」

 菅官房長官は2日の定例会見で、韓国輸出規制の理由について「友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次いだ」、元徴用工問題をあげて「信頼関係が著しく損なわれた」と発言した。

 佐藤氏は「この発言の趣旨がよくわからない」といい、「輸出規制措置は元徴用工問題への対抗措置ではないと日本政府は言い張っている。しかし、なぜ今なのかと聞かれると、元徴用工問題などで信頼関係が損なわれたことが原因だと結局説明していて、疑われる結果になっている。韓国側の輸出管理の問題だ、報復措置ではないと国際的に主張するためには、日本はより強い証拠を公開していく方が説得力はある。このままだと日本が自分勝手に動いているように見えてしまうので、うまく立ち回ることが今求められている」と指摘した。

 韓国外務省によると10日深夜、康京和外相は米ポンペオ国務長官と電話会談を行い「日本の輸出規制は韓国企業への被害に加え、グローバル供給システムを撹乱させ、アメリカ企業や世界の貿易秩序にも否定的影響を及ぼしかねない」と懸念を示したという。これに対し、ポンペオ長官は理解を示したということだ。

 韓国がアメリカに働きかけたことについて佐藤氏は「アメリカとしても日韓の関係は収めたいが、中国との貿易戦争の方がプライオリティは高い。韓国はアメリカにプライオリティを上げてもらって関与してほしいということを考えていて、有力な外交官たちがワシントン入りして協議しようとしている。今回、アメリカの動きがひとつ重要になる」と分析。一方の日本は参院選を控えていることから動きにくい状況だとし、「ここで譲歩すると弱腰に見えるので、今の与党としては引くに引けない状況。おそらく参院選が終わって政況が安定してから、この状況を収めていくという動きになると思う」とした。
AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
 

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