日本政府が韓国に対し半導体材料について輸出管理を強化する措置を7月4日に発動してから、1日もたたないうちに韓国民は自発的に日本ボイコット運動を始めた。

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「行きません、買いません」と書かれたポスターは、クリアンというウエブサイトにアップされたものを著作権なく使えるということで、SNSにそれが出回っている。

 こんな短時間で仕上げたとは思えない完成度の高いキャッチ―なポスターである。

 こういった不買運動は、反日感情が高まると出てくる常套手段ではある。

 民間で不買運動が起こることだけでなく、政治家たちもこぞって反日感情を丸出しにする。

 直近では今年3月、京畿道議会(道は、日本の県に当たる)で「戦犯企業認識表付着条例案」を発案した。

 道内の小中高の学校で使っているプロジェクター、ビデオカメラコピー機などの機材に「これは日本製、つまり戦犯企業の製品」だと印をつけようとしたのである。

 これより前の1月には、ソウル市議会でも「日本戦犯企業との随意契約締結制限に関する条例案」を発議した。

 つまり、ソウル市庁やソウル市教育長、市議会、市・教育庁の傘下機関において、日本戦犯企業と随意契約をしないするといった内容の条例案である。

 どちらも、「学生たちに正しい歴史認識を確立させ、教職員には警鐘を鳴らすため」としている。

 しかし、当時道教育庁と外交部(部は省)から外交的摩擦を懸念され、条例案審議は保留された。

 しかし、今回日本ボイコット運動に乗じてまた条例を推進させようと検討している。

 韓国の最高裁判所の判決と条例案は、企業が行為に対して道徳的責任を認め、社会貢献をせよということであるという。

 これを発案したファン・デホ議員(共に民主党所属)は、次のように言う。

ドイツの戦犯企業は、社会貢献財団やメモリアルパークを作って幾度となく謝罪し、日本の戦犯企業も中国には賠償した」

「それなのになぜ韓国には賠償せず、国を挙げてこんな(政治的報復)をしているのか」

 いつもこの問題に関して日韓は堂々巡りだ。韓国は日本が謝罪もせず、賠償もしないという。

 日本は謝罪も賠償も繰り返し続けて疲労感が出ているという。

 韓国人が全員そう思っているわけではない。1965年日韓基本条約において日本は賠償したのだから、その賠償金を個人に与えるのは韓国政府がすべきであると思っている人だっている。

 しかし、韓国で今そんなことを口にしたら、「親日派」「売国奴」「土着倭寇」と罵られる。だから、黙って様子をうかがうしかないのだ。

 ちなみに、戦犯企業は2012年国務総理室所属「対日抗争期、強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者支援委員会」が発表した東芝、三菱、日立、川崎、住友など、日本の統治期に収奪や徴用をした企業299社である。

 さて、今回の日本製品ボイコット運動は、前回筆者が指摘した「韓国人が日本へ年間750万人も旅行している」ことにも及び始めた。日本旅行をやめるように呼びかけているのだ。

 日本へは行くな、日本製品は買うな、そして、韓国に進出している日本企業名もSNSを通じてどんどんシェアされている。

 しかし、面白いのはソニーキヤノンのボイコット運動のパフォーマンスを撮影しているカメラは皮肉にもキヤノンだったり、ソニーだったりするのだ。

 今回のことで結構組織がかって見えるのは、SNSで韓国の消費者たちが取るべき7つの行動綱領が出回っていることだ。

 内容を見ると、

1.日本旅行をやめる

2.日本製品を食べない・飲まない(アサヒビールキリンビールポカリスエットたばこなど)

3.日本製品を着ない(ユニクロ、デサント、ニコアンドなど)

4.日本製品に乗らない(トヨタホンダなどの日本車)

5.日本製品を買わない(ABCマート、アシックスDHC、AnnaSui、資生堂SK2、マンソレーダム、ギャツビー、CJライオンソニー任天堂シャーペンぺんてる、a-gel など)、バンダイプレーステーション、ハイテク、ジェリーロール、ハローキティマイルドセブンミニストップ、ボディフィット、セブンイレブンローソン

6.日本製品を見ない(日本の時計:カシオG-shock」、セイコーアルバ」、イッセイミヤケ、日本製カメラ:キヤノンニコン、フジ、ソニーパナソニックペンタックスなど)

7.日本の音楽を聴かない

 こんな日本のモノに関しては、見ざる、聞かざる、言わざる(?)といった具合だが、あいにくそう簡単には問屋は卸さないようだ。

 食品安全情報ポータルの「食品安全の国」によると、日本で製造され輸入した食品は計4万356個で、農林産物、加工食品、食品添加物、器具または容器・包装、健康機能食品が含まれている。

 したがって、「日本食品を食べない」と言っても、どこまでを日本食品とするかという微妙な問題に直面する。

 さて、上記の行動要綱で日本製品を買わないという部分に日本のコスメが入っていて、名だたる日本のデパコスブランドが挙げられている。

 韓国女子の日本でのマストバイに資生堂の洗顔専科の「パーフェクトホイップ」は必ず入っていた。

 韓国の店でも売っているが、断然日本のドラッグストアが安いからだ。

 そんな目につく日本製は不買運動の対象になれるが、目に見えない原料などに日本製が入っていた場合はどうするのだろう。

 食品やコスメだけではない。家電、半導体、すべてが完全な韓国製品というものがあるのだろうか。

 お米も果物も日本で開発された品種を韓国で栽培しているものもある。こんなグローバルな世の中で自給自足はほとんどあり得ない状態だということをあまり感じていないようだ。

 それより、日本の規制により韓国はすべての素材を国産化することに努め、そうすることで韓国は半導体大国として強固な地位を手に入れることができるとさえ思っている。

 不買運動に賛成する人たちは、真っ先に日本旅行キャンセルし、それを立証する画面をSNSにアップしている。

 しかし、旅行代理店に問い合わせると、ツアー募客にそれほど問題がないという。

 日本に行く若い人たちはFIT(個人旅行)が多いので、そんなツアーには参加しないのだろう。

 7月10日、「ティーモン」という格安チケットの予約・販売サイトで、7月1日から7日までの航空券の予約とパック旅行商品の販売量を基に地域別旅行トレンドを調べてみた。

 その結果、航空券の予約順位は1位がダナン、2位大阪、3位バンコク、4位グアム、5位福岡となっている。

 昨年3位だった福岡が5位に落ちたが、上位に食い込んでいる。結局、日本旅行不買運動があっても、気にはなるが行く人は行くのである。

 地上波のニュースには出ないが、SNSで活躍する右寄りの人たちは、こんな鎖国まがいの時代錯誤的なことをしたって現状は何も変わらないと嘆いている。

 そして、実は現政権が望んでいたことを日本政府がしてくれたのではないかともいう。

 なぜなら、北朝鮮優遇政策を取ってきた文在寅政権だが、あまり成果は上がらず、経済成長率も予想を下回り、支持率も下降気味。

 しかし、今回日本政府が出してきた輸出規制により、韓国政府は今年の経済が芳しくないのは全部日本のせいだとすることができる。

 これまで2年間の経済低迷はもちろん前政権のせいである。今回反日、日本製品ボイコット運動の陰でほくそえんでいる誰かがいるかもしれない。

 参考までに、韓国統計庁によると、今年6月の失業者は113万7000人で、1999年6月(148万9000人:韓国最大の経済危機時代)以降20年ぶりに最高を記録した。

 失業率も前年対比0.3%ポイント上昇した4.0%とこれまた1999年6月(6.7%)以降最高を記録した。

 特に、失業率は今年に入って6か月連続4%台である。4%台の失業率がこのように持続したのは1999年6月2000年5月(12か月連続)以降初めてである。

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クリアンというウエブサイトにアップされたポスター