消費税増税や2020年のオリンピックが控える、2019年夏の参院選。4月に旗揚げしたばかりの、れいわ新選組は日本をどう変えたいのか、代表の山本太郎参議院議員@yamamototaro0)に単独インタビューをニコニコ生放送でおこないました。

 与野党問わず豊富な人脈をもつジャーナリストの鈴木哲夫氏が、生放送を見ているユーザーからの質問を交えつつ聞き手を務めます。

左から鈴木哲夫氏山本太郎参議院議員

※本記事はニコニコ生放送での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。


なぜ「れいわ新選組」を立ち上げたのか?

鈴木:
 いよいよ参議院選挙公示ですね。この放送では、2週間ぐらいかけて党首の方全員に視聴者の皆さんとインタビューしてきました。最後が今日、お話を伺う方でございます。れいわ新選組山本太郎代表、よろしくお願いします。

山本:
 よろしくお願いします。

鈴木:
 山本さんとの出会いは、議員になる前、『難波金融伝・ミナミの帝王』の萬田銀次郎の舎弟役を演じておられた時に、大泉学園の焼肉屋さんで会ったんですよね。その時に「家族でミナミの帝王見てます」とお伝えしました。その後、永田町でお会いしたら全然覚えてくださってなかったんですよね。

山本:
 すみません(笑)。永田町に入って6年になるんですが、30年ぐらいの月日が流れたような感覚で、記憶が上書きされるんですよね。

鈴木:
 そんな中でお伺いしたいんですけども……。小沢一郎さんとのチームワークも良かったし、森ゆうこさんとも政治疑惑を追及しようとしましたよね。なぜ「れいわ新選組」を立ち上げたのでしょうか? 

山本:
 自分の一議席だけを考えるなら、私は小沢さんと一緒にやらせていただいていたと思います。というのは、自分のキャリアはまだまだ粗削りのひよっこなので、政治の王道を勉強すべきだと一議員としてそう判断したんです。

 もちろん、議席をいただくことはありがたいことです。ただ、この席を守ったところで何なんだよ、と。6年前と同じことをやっても仕方ないだろうと思いました。なので、みんなの成功体験という部分で議席数を増やして、もっと大きくしていくことが必要だと思ったのが一点。

 ただ、小沢さんの構想のように野党がまとまっていくのは、大きな受け皿となるような形でなければ、やる必要がないと思っていました。でも、それは厳しそうだ、と。自分が旗揚げするタイミングだと、まだその可能性は1%ぐらいはあるのかな、と思っていたんです。

 野党がまとまっただけで勝てるなら、おそらく統一地方選や、その他の選挙の結果は大きく変わっていると思うんです。だから、野党がまとまることに加えて、共通の政策が必要だと思うんですよ。けれど、それは元々いた枠組みの中では言えない。野党のなかで腹六分ぐらいにしか、それぞれ思うことが言い合えてない。

鈴木:
 腹七分もいかなかった?

山本:
 でも、これは非常に重要なことだと思います。野党みんなが一緒になる時に、共通の政策を多くは持ち出せない。でも一緒になったとしても、私はここに政策が入ってくるということを後押ししたいと思いました。外に出て市民の皆さんと一緒に与党にプレッシャーをかけていけたらなと思ったんですね。

野党は経済政策が弱すぎる

山本: 
 今一番必要なことは消費税減税です。なぜなら、誰しもが一日一回は消費税を払っている。だから、当事者としてピンと来やすい話なんですよ。

 これが例えば「立憲主義を守る」と言われてもピンとこない人たちもたくさんいらっしゃる。やはり、みんなの目の前には生活があって、あまりにもその格差が開きすぎて、ギリギリの生活をされている方々を底上げするためにも、消費税減税は必要です。日本が景気回復を目指すならば、これはもう一丁目一番地であると思います。

 ということもあって、なんとか野党全体の政策を減税に持って行こうと思います。この時に与党側は「消費税増税凍結」のカードを切ってくるかもしれない。なので、最低限「消費税減税」も言わなきゃいけない。政局を見ても人々の暮らしを見ても、これを言うのが当然であると与党にプレッシャーかけてたんですけど、関係なかったんだって(笑)。

鈴木:
 でも、それは結果論が関係なかったのであって、僕はギリギリまで動いていたと思います。与党も「ダブル選挙なんてない」と言っていたけど、2000万円問題が出たあと、官邸トップの安倍さんは、やっぱり「どうしよう」ってなっていたから、ギリギリまであったと思いますよ。だから結果論としてこうなってるけど、与党だって揺れ動いたと思いますね。

山本:
 ダブル選挙という形になった場合には、向こう側にも切り札が必要ですよね。だから「消費税増税凍結」のカードは最低限切ってくるだろうし、下手をすれば向こうは減税を言い出すかもしれない。なので、警戒する必要があると思っています。減税を約束したとしても、減税しなくてもいい、という考え方の人たちもいるわけじゃないですか。TPPのときのように勝つためなら掌返しをすることはお家芸ですから。

鈴木:
 山本さんの中では「減税」というのが象徴的な意味合いがあったり、わかりやすい位置づけだった、ということですよね。

山本:
 減税は非常に重要だと思っています。なぜなら、私が2013年に国会に送っていただいてから今までの間に3回選挙ありました。その間に、与野党の衝突する法案があったんです。例えば、特定秘密保護法テロ等準備罪安保法制TPPがあったんですよね。それぞれの与党側の対応について、世論調査では「ちょっとやり過ぎでは?」という答えも多かったのですが、選挙では必ず自民党が勝ってしまう。

 野党側はこの総括をきちんとできていたんでしょうか? 私が総括した答えは経済政策が弱すぎる、という部分に行きついたんです。

鈴木:
 野党の経済政策が弱いというのは、いくつかの論文を見て共感したところもあります。「弱いと言われている経済政策で」というのが山本さんの強みのひとつですよね。

山本:
 どういう状況にこの国の人々の生活があるかといったら、もちろん景気が良くなった人たちもいるんですけど、どちらかというと格差が開いていったと思います。

 厚生労働省の国民生活基礎調査で生活が苦しいと言われてる人たちが、前回調査で多分52%程度だったんですが、これを越えたんですね。それを考えると確実に生活は苦しくなってきている。それはそうですよね、賃金が上がらずに消費税で強制的に物価を引き上げているのだから。そういったことに関して、本当は野党側が人々の声を拾っているはずなんです。すごく優秀な方が多いですから。

 しかし、とりわけ消費税などの財政問題になると、そこが非常に弱腰と言うか、「財政規律」であったり「財政再建」ということしか言わないんですね。

 でも考えていただきたいのが、デフレが20年以上続いている国の中で、財政規律、財政再建と言えば国は歳出をカットし、増税する以外に道はないです。でも、そんなことをしたら人が死にますよって話です。

 少なくとも財政規律、財政再建を言い出すのであれば、景気が回復した後に議論を始めようじゃないか、と。財政規律、財政再建は否定しませんという立場なんですけど。

鈴木:
 その通りですよね。その前に政治はやることがあるでしょ? と。

2億円以上の寄付、候補者擁立の苦労

鈴木:
 資金調達は大変だったでしょう。

山本:
 いや、私は大変じゃなかったです。ご寄付いただいた皆さんが非常に大変だっただろうなと思います。

鈴木:
 集まり方は想像以上でしたか?

山本:
 最初に自分で寄付を募って市民選挙で、国政政党を作ろうと思った時に、設定をしたんですよね。寄付が1億円に満たなかったら東京選挙区から出ます。そして、3億円集まったら、参議院で10人候補者を立てます。さらに、5億円集まったら参議院の比例で25人、二人区以上は全部立てます。衆参ダブルの場合は10億円必要です、という設定を設けたのです。いくら集まるかさっぱりわからなかったです。

 これは、期待したってしょうがないからですね。現実を見据えた上で設定しなくてはならないので。だから、もちろん私と、私たちのグループに対して2億円以上の資金が集まるというのは非常にありがたい話ですけど、これがもしも10億円集まっていたとしたら、選挙の前に普通の国会議員が動いてきてますよ。

 ということは、選挙前に政党要件を満たして、テレビにも出れて、こうやってニコニコの皆さんにわざわざ場を設けていただかずとも、ネットの党首討論に直接デッドボールを当てに行けるということです。与党も野党も遠慮なくしばきに行きますよ、みたいなことが実現できたわけですね。

 だから期待はしなかったです。ただ、自分たちの金額設定に関して、10億円が集まっていれば、現役の国会議員は流れてきて、4人は埋められただろうなと思っています。加えて、私で政党要件を満たせるだろうというイメージはありました。

鈴木:
 この寄付は政治への想いや浄財なんだろうなと思いますよ。あと、候補者は記者会見で発表して、もう10人集まったんですよね。ある人は「ユニークだ」と言っていましたが、ユニークという表現にちょっと引っかかるんですよね。

 僕はこの10人を、今の政策テーマ、日本の政策課題のど真ん中の人たちがみんな出てきたと思います。

山本:
 その通りだと思います。評価してもらえるのはありがたいんですけれども。

鈴木:
 候補者を、口説いて引っ張ってくるのは大変だったのでは?

山本:
 私だけの力ではなく、間に友人が入ったりとか、もちろんそういうパターンで知名度がある方にもお断りされたも場合もあるし、それを繰り返しながら今の形になりました。

鈴木:
 簡単におっしゃいますが、大変な時間と作業だったのではないでしょうか?

山本:
 4月10日時点、最初に旗揚げした時には一人も決まってない状態でした。そこからスタートしてますから、本当にギリギリですよね。

鈴木:
 私は立憲民主党が去年くらいからどれだけ面接して候補者を集めているか知っていますが、それを一人でやってきたということは、この2ヶ月大変だったんだろうと。あのメンバーを見てもそう思います。

山本:
 もう死にそうです(笑)。今年に入ってから今日に至るまででも、多分選挙5回分ぐらいの体力を使っていますね。

鈴木:
 候補者への口説き文句はどんな感じだったんですか?

山本:
 やはり、それぞれの方が一番心配されてる部分、どんどん国が壊れて悪くなっていってるということは共通の認識で、その渦中にいるので、揃っていただいてるメンバーの方々はそう多く語らずに済んだのかもしれませんね。何とかしたいという思いの方が先に来てる方々なので。

 逆に言えば、入っていただいたメンバーより、お断りになった方への説得の言葉の数の方が多かったかもしれないです。

鈴木:
 そういう断った方も想いはあったんだけど、やっぱり踏み切るって覚悟はいるじゃないですか。

山本:
 だって「俺に関わりたいですか?」という話ですよ(笑)。

 普通はある程度の政党であったり、数十人とか100人単位で人が入って動かしていく形ですけど、元々の事務所のメンバーは6人ぐらいでやっていますから、もちろん他の方もお手伝いいただいたりとかありますけど、メンバーは本当に大変ですね。最初はやっぱり事務所のメンバーはちょっと引いてました(笑)。けれど、自分の思いを理解してくれましたね。