反社会的勢力への「闇営業」問題で、お笑い芸人たちが謹慎処分となっている。

吉本興業の発表などによると、雨上がり決死隊宮迫博之さんなど、お笑い芸人たちが2014年12月、都内のホテルでおこなわれた特殊詐欺グループの忘年会に参加したとされる。元カラテカ入江慎也さんによる仲介で、事務所を通さない「闇営業」だったという。

吉本興業6月24日、宮迫さんや、ロンドンブーツ1号2号田村亮さん、レイザーラモン・HGさんなど、11人を謹慎処分とすると発表した。ワタナベエンターテインメント7月1日、お笑いコンビ「ザブングル」の2人を8月末まで謹慎とすると発表した。

宮迫さんたちは、一定の金額を受領していた。また、ザブングルも、入江さんを通じて、それぞれ7万5000円を受け取ったという。いずれも、反社会的勢力の主催との認識はなかったということだが、こうした組織からお金を受け取ることは、法的に問題ないのだろうか。桑原義浩弁護士に聞いた。

●「詐欺グループ」だと知っていたら・・・

――特殊詐欺グループからお金を受け取ることは、罪に問われる可能性はありますか?

組織犯罪処罰法では、「情を知って、犯罪収益等を収受」した人を罰すると定められています(3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または併科)。犯罪収益等収受罪といいます。

これは、犯罪によって得られた利益(金銭)であることを知りながら、受け取った人を処罰するものです。いわゆる「マネーロンダリング」(資金洗浄)を防止するために、犯罪収益を収受する行為を一律に禁止するものです。

犯罪が成立するには、「情を知って」いることが必要です。これは、前提となる犯罪の行為状況および収受にかかる財産が、その前提となる犯罪に由来することの認識を意味するもの、としている裁判例があります(大阪地判平成19年2月7日判タ1266号331頁)。

――今回のようなケースはどうでしょうか?

今回は、振り込め詐欺グループの会合に参加していたという報道がありますから、ここで得られている利益(金銭)は、組織的な犯罪による犯罪収益だと言えます。そうすると、「情を知って」、金銭を受け取ると、犯罪収益等収受罪に問われることになります。

今回参加したお笑い芸人たちが、そのグループが振り込め詐欺によって利益を得ているということを知っていたら、この罪に問われることにもなります。

ただ、「反社会的勢力とは知らなかった」と話しているようです。これが本当だとすると、「情を知って」いたとは言えないため、犯罪収益等収受罪に問われることはないということになります。(なお、今回のケースは2014年のことなので、そもそも時効になっているものともいえます)

――お笑い芸人たちはどう行動しておけば、よかったでしょうか?

今回は、闇営業と言われているように、事務所を通しての仕事の依頼ではないイレギュラーなケースなわけです。逆に言えば、そういうルートでしか依頼ができない団体、という見方もできます。その時点で、疑いの目を向けておくべきだったと言えますね。

また、反社とは知らずに参加したとしても、途中で何かおかしいと気がつくことも、さすがにあったのではないかと思います。そこで得ている収入が、誰かからだまし取られたお金によるものだとすれば、やはり受け取ることには、躊躇すべきです。

安易に収入を得られるような話には、十分に気をつけておくべきだと言えると思います。

【取材協力弁護士】
桑原 義浩(くわはら・よしひろ)弁護士
日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長(金融サービス部会、違法収益吐き出し部会)、九州弁護士連合会消費者問題連絡協議会副委員長福岡県弁護士会消費者委員会、民事手続委員会等。全国証券問題研究会、全国先物取引被害研究会などに多数参加している。
事務所名:弁護士法人しらぬひ柳川事務所
事務所URL:http://www.shiranuhi-law.com/

宮迫さんら「金銭受領」は犯罪なのか? 特殊詐欺グループへの「闇営業」問題