パンチキック、そしてヒザ蹴りにヒジ打ちが認められており、昨年末に無敗のレジェンドボクサーであるフロイド・メイウェザーと対戦した那須川天心選手も2016年、旗揚げ興行に参戦した「KNOCK OUT」。

 そんななかで赤マル急上昇中の女子キックボクサーが、NEXT LEVEL渋谷ジムに所属する、初代ムエタイオープン女子フライ級王者の小林愛三選手(23歳)だ。

小林愛三
初代ムエタイオープン女子フライ級王者の小林愛三選手(23歳)
 この端正な顔立ちで、打ち合い上等の激しいファイトスタイルが持ち味の彼女がキックボクシングを始めた理由、そして個性的でファニーな素の愛三にも迫ってみた(本インタビューは6/7に行われた)。

師匠からもらったリングネーム

――愛三(まなぞう)というお名前ですが、まさか本名ではありませんよね?

小林愛三(以下、小林):違います(笑)。愛三はリングネームです。もともとは私の“あだ名”だったんですけど、気がついたら、そのままリングネームになっちゃってました。

――どういう経緯で女の子のあだ名が愛三に。

小林:プロになる前からお世話になっている格闘技の師匠が、牧裕三さんという元日本チャンピオンキックボクサーの方なんです。それで、私の本名が小林愛実なので、師匠から一文字いただいて、愛三になりました。

 本名が愛実で、愛三も(マナミ)って読めるじゃないですか。そういう意味ではかかってもいるし、周りからもいいんじゃないかと言われて。でも正直なところ、最初は「え~っ!?」って思いましたけど(笑)

フルコンタクト競技をはじめたきっかけ

小林
どうしても学校に馴染むことができなかった
――そうでしたか。ところで、小林選手が主戦場にしているKNOCK OUTは、女子の試合でも顔面へのヒジ打ちがルールとして認められていますが、この危険なフルコンタクト競技を始めたのは、どんな理由が?

小林:高校卒業後、スポーツジムのインストクターになりたくて専門学校に通っていました。だけど、どうしても学校に馴染むことができなくて……。それで悩んでいた時に、たまたまダイエット目的で始めたボクササイズに思いのほかハマっちゃって。

 本当は良くないことなんですけど、学校の授業はサボっているのに、NEXT LEVELのジムにはちゃんと通ってるみたいな感じになってました。それである時、尊敬しているジムの先輩が、ふくらはぎを見て「立派だね」と褒めてくださったんです。

 で、その一言で目覚めたというか、「このコンプレックスを生かせるなら、本格的にキックボクシングをやってみよう!」と思ったのが、プロ格闘家になったきっかけです。専門学校のほうは優しい先生方に救われて、なんとか卒業だけはできました。

――もしもふくらはぎが人並みだったら、キックボクサー小林愛三は誕生していなかった可能性も。

小林:確かに(笑)。おかげさまで、今はNEXT LEVELの職員をやりながら、一般会員の方々を指導するインストクターやらせてもらっています。

今も週休2日でジムの仕事をしている

小林
今の環境は実は恵まれている
――それってプロ選手として、自分の練習もやりながらですよね。 かなり多忙な毎日じゃないですか?

小林:仕事に関しては、週休2日制なんですけど、ジムの仕事をしながら自分の練習時間を確保するのは限界があるので、今は休みの日もジムに来て練習してます。だから基本は週7ペースでこのNEXT LEVELにいますよ(笑)

――すごいなあ。

小林:このサイクルに慣れるまではたいへんでした。だけど、お仕事しながら練習させてもらえる環境って、実はすっごく恵まれているんです。他の先輩方は、朝から夜まで仕事をしてから、その足でジムに来てハードな練習をこなしてますからね。

プロになってからの試合は「克己心」

小林
まずは自分自身に打ち勝つ必要がある
――でも、スパーリングとかすると顔面を殴られたり、体を蹴られたりするわけですよね。キックを始めた頃は、打撃に対する恐怖を感じたりしませんでしたか。

小林:逆です。練習も試合も本当に楽しくてしょうがなかった(笑)。唯一嫌だったのは、プロテクターが煩わしくて。足に付けているすね当てもそうですけど、ヘッドギアも重くて前が見えづらいから「邪魔だなあ。これなしでやりたい」って、アマチュアの頃はずっと思ってました。

 それで、プロになってから2戦目か3戦目で、田嶋はる選手という大ベテランの方とKNOCK OUTで試合をすることが決まって。その時はすごくドキドキしたというか、格上の有名選手というのもあって、初めて恐怖心のようなものを感じた気がしました。

――その試合は初戦がドローで、再戦して見事判定勝利をもぎ取りましたよね。

小林:結局、格闘技って最後は自分との戦いなんだと思うんです。だから相手がどうこうではなくて、まずは自分自身に打ち勝たないといけない。だから「克己心」が必要不可欠というか、最初から自分に負けているようでは、計量もクリアできないし、普段の練習にだって身が入らないと思います。もしも自分に負けてしまったら、当然リングには上がれません。

プライベートでは恋バナでも盛り上がることも

小林
鋭いキックを披露
――なるほど。その考え方って、普通の仕事にも当てはまる気がします。ちなみに貴重なプライベートの時間は、どうやって過ごしているのでしょうか。

小林:天気の良い日は、ジムの先輩や後輩たちと高尾山をハイキングすることもありますよ。あとはみんなで美味しいご飯を食べに行ったりとか。銭湯も好きなんで練習後によく行きますし、この前は仲の良い後輩選手とディズニーランドに遊びに行きました。

――格闘家らしくアウトドア系ですね。逆に恋バナとかで盛り上がることもあります?

小林:ありますね(笑)。でも、相手の話を聞いてあげることの方が多いかな。どうしてもガールズトークになっちゃうんで、最後はいつもバカ笑いして終わってます。

――小林選手自身、好きな男性のタイプってどんな人ですか。

小林:そうですねえ、運が強くて簡単に死なない人がいいです(笑)。なんて言えばいいのか難しい……。たいへんなことがあっても「簡単にはへこたれないぞ」みたいな。いつも笑っていてケロってしている人と言えばいいんでしょうか? 要するに“強い人”が好きなんですよね。でもマッチョ系とか、肉体的にガッチリした人がいいというわけではありません。

追われれるより、追いかける側でありたい

小林
「やる」を選択し続ければ景色は変る
――同い年の女性とは一線を画するような独特な男性観ですね。でも見た目とか、ビジュアル的な部分は気になりませんか?

小林:笑顔がステキな人には惹かれます。芸能人だと菅田将暉さんが好きなんですけど、顔がタイプと言うよりは、カメレオンみたいにガラっと雰囲気の変わる俳優さんじゃないですか。そこにグッときちゃうんです。

――七変化できる才能がポイントだと。

小林:あと追われるよりも、追いかけるほうが好きなタイプなので、引っ張ってくれる男の人の方が合うと思うんですけど、束縛されるのは嫌い。やっぱり自由を謳歌したいので。容姿とかは別に気にしないかな?

――女子キックボクサーの道を邁進しているわけですが、同世代の人たちにエールを送るとしたら、どんなメッセージがあるでしょうか?

小林:未熟者なりにひとつだけ確信していることがあります。それはキックボクシングというスポーツを通じて、人として成長したいという目標。だから、強くなって結果を出すことも大事なんですけど、それだけで終わってしまうなんてつまらない。

 でも、それって、頭の中で考えているだけだと何も前に進まないじゃないですか。要するに「やるか」「やらないか」の選択を自分でしなきゃいけないと思う。それで「やる」を選択し続ければ、きっと目の前の景色も変わってくるんじゃないでしょうか(後編は近日公開予定)。

<取材・文/永田明輝 撮影/山田耕司>

【永田明輝】

関西でよく売れていた某実話誌の編集を経てフリーライター化。愛好するジャンルは裏社会・心霊オカルト陰謀論フィギュアおもちゃなど

「やる」を選択し続ければ景色は変る