燃えデブ第77回は雨中の甲子園でのオールスター第2戦リポート!

『日本エロ本全史』を熟読した。80年代の猛烈なドライブ感から、時代の流れとともに徐々に衰退していく様が儚い。

「学校やTVが教えてくれない大切なことは大体エロ本から教わった」

 そんな石野卓球の帯コメントもまたいい『日本エロ本全史』(安田理央著/太田出版)を熟読した。336ページで歴代本をオールカラー紹介、税込3996円という大物だ。ノスタルジーに浸るでもなく、過去を美化するわけでもなく、著者は圧倒的な情報量を元に淡々と丁寧にエロ本の歴史を紹介するわけだが、80年代の猛烈なドライブ感から、時代の流れとともに徐々に衰退していく様が儚い。特に2000年代に突入してからのメディアとして役割を終え、死を待つような状態がまた沁みる。いつの時代も、エロスの正体は愛しさと切なさなのである。

 で、エロ本が元気な頃にモノクロのコラムページで定番なのが、プロ野球プロレスだったりしたわけだ。まあこれを書いておいたら、興味持ってる人は多いし間違いないでしょ的な当時の「日本人男性の共通言語」。例えばあの頃、清原和博桑田真澄を知らないクラスの男子はほとんどいなかったと思う。1987年オールスター第3戦で実現した“KK対決”で、19歳の清原は盟友の桑田が投じた初球を甲子園レフトスタンドに叩き込む。ドラフト会議の因縁もあり、見たかコノヤロー的にジャンプしながらウェーイってホームインする青い背番号3。マウンド上で何とも言えない笑みを浮かべるYGマークの18番。当時小学3年の俺ですら不穏なものを感じるシュートマッチ。ドキドキしたし、お祭りの中にもヒリヒリするような意地のぶつかり合いと緊張感があった……なんつって、オールスター第2戦が行われた甲子園で『銀だこ』のチーズ明太子たこ焼を頬ばりながら今週もMVPコラム『燃えデブ』が始まった。

オールスター戦ってマニアサービスじゃなくライトユーザーも含めたファンサービスだもの。

 2019年夏に雨の降る甲子園球場の客席から、ルーキー近本光司の史上2人目のサイクル安打を見届けて、そんなセ・パ交流戦WBCがなかった昔のことを思い出した。最終打席のパ・リーグ守備陣も協力した忖度三塁打に客席は盛り上がっている。まあ、良くも悪くも近年のオールスター戦を象徴するようなシーンだった。まさにワッショイかっ飛ばせワッショイの夏フェスモードである。選手もファンも“それ”を前提に楽しむピースフルな空間。賛否あれど、この実際に「球場に来てカネを落としている客層が楽しんでいる」という事実は無視できない。だって、オールスター戦ってマニアサービスじゃなくライトユーザーも含めたファンサービスだもの。……とか物分かりのいいようなことを書いているが、正直、俺は忖度サイクルに拍手を送る球場の雰囲気に軽く引いてしまい帰り支度を初め、試合終了直後には梅田でお好み焼きを食っていた。

 勘違いしないで欲しいが、新人で5安打を放った近本は凄い。それはそれ、これはこれだ。で、思ったわけだ。なんか最近の新日本プロレスを見た帰り道と同じ気持ちだなと。今の新日はよく客が入り、チケットも取りずらくて、満員御礼が当たり前。ただ、柴田勝頼が長期休養中で、鈴木みのるがG1にエントリーされなかった今、少し前のストロンスタイル時代の残り香を感じさせるような要素はほとんど消えてしまった。確かに会場は大勢の客で盛り上がってる。でもなんか違うんだよなぁみたいなこの感じ。要は「長年好きだったモノが自分の好みとは違う方向性で支持されている」状態だ。ずっと付き合ってるおネエちゃんが少しずつ変わってしまうのは誰にも責められない。幸せそうで良かったじゃん……なんて言いながら、妙な寂しさも抱えちまう。いや、あらゆるものは常に変化していく。自分と対象が同じスピードで進み続けるなんてありえないと己に言い聞かせながら。ただ、こういうときに過去を否定するのは過去を美化するのと同じレベルイージーで危険だ。

アイドルでもロックバンドでも何にでも当てはまるけど、ファンであってもストーカーにはなりたくないよね。

 冷静に考えたら、80~90年代を生きた日本男児の三種の神器こと「エロ本・プロ野球プロレス」でさ、プロ野球だけがストロンスタイルのままでいられるはずないんだよ。生き残るには時代に合わせて変わらなきゃならない。テレビ番組のNGラインとか酒の席のパワハラセクハラもみんなそうじゃん。で、つまらなく感じたり最近の傾向についていけなきゃ距離を置いたらいい。娯楽なんだもの。無理して飲む酒なんか不味いに決まってる。というスタンスに辿り着いてから、最近はプロレスの連載コラムも一時休載して、少しユルく楽しんでいる。アイドルでもロックバンドでも何にでも当てはまるけど、ファンであってもストーカーにはなりたくないよね。エロメディア周辺もこの30年で激変した。で、俺らはエロ本死亡遊戯から「変化を受け入れ適応する」ことを学んだ気がする。

 エロ本は終わった。プロレスは変わった。ならプロ野球はどの方向へ行くのか? 少なくとも、個人的にはペナントレース後半戦が俄然楽しみになった。令和のオールスターが完全夏祭りモードに振り切れたのなら、それでやってくれたらいい。支持もしないが否定もしない。だったら俺はいつもの日常のペナントを目一杯楽しませてもらうよ。梅田の『ぼてぢゅう』で豚玉お好み焼きを口に運びながら、2019年オールスター戦は静かに終わったのである。

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