米国のドナルド・トランプ大統領が日米安保条約は不公平だとクレームをつけている。日本がより具体的に応えなければ、大統領選への再出馬を決意したトランプ大統領の不満は募るばかりであろう。

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 これまでの野党は「憲法9条が平和を守っている」「9条の改定を目指す安倍政権は戦争内閣だ」などと非難ばかりしてきた。

 危機をはらんだ国際情勢やトランプ発言などからは、国家の存続と国民の安全を真剣に考えなければならない段階であるが、この期に及んで野党各党はいかなる政策をとろうとしているのだろうか。

こんな野党は邪魔なだけ

 この小見出しは筆者の言い分ではない。『新潮45』が昨(2018)年の7月号で、1年半ぶりに開かれた党首討論(同年5月30日)を評した「特集」記事につけたものである。

 リードで「党首討論はひどいものだった。立憲民主党の枝野(幸男)代表は相も変わらずモリカケモリカケである。どこまで行っても『安倍憎し』、もはや野党に冷静な政策論議など望むべくもない。野党には総入れ替えが必要なのではないか」と提案していた。

 それもそうであろう。当時は北朝鮮核弾頭開発と大陸間弾道ミサイルが最大の問題になっており、国民の多くは、北朝鮮核ミサイルからの被害をいかに避けるかに頭を悩まし、核防護シェルターなども話題になっていた。

 しかし、このときの野党が提議した討論からは「そんなことあるの」と言わんばかりに素通りして、モリカケ問題に終始したのである。

 「国民の命」よりも「安倍おろし」を優先するリアリティをもたない無気力野党を曝け出したのだった。

『新潮45』が論った面々は枝野幸男氏、福山哲郎氏、蓮舫氏、辻元清美氏らで、筆頭は「卑怯はどっちだ『枝野幸男』」であった。

 事前に提出した質問要旨は「国家の基本問題」というもので「さすがに」と思わせたが、討論時間の19分全部をモリカケに費やし、羊頭狗肉というか形容不一致も甚だしかったのだ。

 つまらない質問を首相にいなされると逆に首相を卑怯呼ばわりしたのだが、評者の阿比留瑠比氏は「そもそも、聞かれたことにまともに答えず、木で鼻をくくったように答えるのは、むしろ枝野氏の得意技ではないか」として、閣僚のとき革マル派の影がつきまとうことを問われ、「テキトーな回答で記者を煙に巻こうとした」ことを例示して「卑怯はどっちだ・・・」の本人見出しをつけたのだ。

 それから1年余後の今回の党首討論(2019年6月19日)であったが、「モリカケ」を「2000万円」に読み替えただけの批評で足りそうだ。

 枝野代表は2000万円問題を取り上げ、「安心ばかりを強調して実体と向き合わない」として安倍政権批判をしたが、首相は年金積立金とその運用益に言及して、(政権の6年間で)44兆円の運用益が出ており、民主党政権時代の約10倍だ」などと具体的な数字で反論した。

 翌日の「主張」(産経新聞)は、「不安のみ煽ってどうする」の見出しで、「残念なことに、実のある論戦になったとはとてもいえない」と切り出し、年金は国民の大きな関心事であり、論点にすることは理解できるとするが、「内容がいただけない。参院選を意識した一方的な議論に終始した印象が拭えない」として、「公的年金制度の持続可能性と、2000万円問題で高まった国民不安をあえて混同させた面はなかったか」と注文をつけている。

モリカケ論争時よりも脅威は増大している

 ここ数年、森友学園用地の取得に関わる値引き問題、次いで加計学園に獣医学部を設置するにあたっての岩盤規制緩和問題ばかりが議論された国会と言いていいほどである。

 特に岩盤規制緩和問題では前川喜平元文科事務次官の「行政が歪められた」という決まり文句のオンパレードだった。「安倍憎し」「安倍降ろし」だけが念頭にある朝日新聞の先導に野党が御輿を担がされたからである。

 実際は第2次安倍政権以前からかかわってきた加戸守行元愛媛県知事が約半世紀も続く不条理な規制を難じ、四国に獣医学部が設置されれば「(長く歪められてきた)行政が正される」と主張していた。しかし、朝日新聞を筆頭にほとんどのマスコミは前川氏の言い分だけを報道し続けたのである。

 それからほぼ1年後の今次の党首討論であったが、今度は「2000万円問題」ばかりであった。相変わらず政策論戦ではなく、安倍攻撃の一手でしかない。

 北朝鮮の核・ミサイルは一層強化され、拉致問題に韓国の徴用工問題も加わった。さらに米中新冷戦、イランの核問題を含む中東情勢の悪化、正常化されたという日中関係の裏で続く中国の尖閣諸島侵入問題など、外交・安全保障問題で厳しさが増大しているにもかかわらず議論は皆無であった。

政策合意のない相互支援は野合

 選挙戦で「自民党を倒す」ためだけに、野党が一致して「相互に応援」し議席を増やしても、その後の国会で建設的な議論が期待できるであろうか。最大懸案である安保政策の一致がほとんどないのだから「否」である。

 これでは、緊張が増す国際情勢に適切に対応できない国会となり、一貫した政治は期待できない。

 今次の参院選で最も大切なことは、12年前の悪夢の再来を許さないことである。国会は国民の安全安心と国家の健全な運営を多角的に議論する場である。

 わずか3年で終わったが、決められない民主党政権という悪夢がなければ、普天間問題はとうに解決して基地の返還がすすみ、沖縄県民の安寧は増大していたはずである。

 悪夢がもたらしたものは、本質を議論しない国会で感情むき出しの不安を煽るだけである。いままた混迷しかもたらさない野党の野合が進んでいる。

 国際情勢は危機を孕み、日本への外国人の流入も増え、多民族・多文化共生が求められるが、国会が真剣な議論をしなければチベットやウィグルのように、日本人の領土が漢民族などによる「他民族・他文化強制」を強いられ兼ねない現実が近づきつつある。

 これも民主党政権で入国審査の簡略化と健康保険の適用緩和が行われ、敵愾心を植え付けられた中国人の多数移住によってミニ・チャイナタウンが発生して摩擦を引き起こしたりしているからである。

 以前にも増して増大する各種の危機や脅威に適切に対応するためにも、決められない野党の進出を許しては日本の安全が覚束ない。

民主党以上の泥沼しかやってこない

 野党第一党の枝野幸男氏は「野党5党派のトップは自民党を倒すという大きな方向性で一致している」と語るが、これでは5党派というよりも「野合党」と冠した方がいいだろう。

 言うまでもなく政党は政策でまとまった政治集団であるが、自民党を倒すというのは自民党に代わって政治をやりますよという政治主体を示すだけで政策ではない。

 政治主体が政策を示さないで、現在の政治主体、すなわち自民党を倒せば、倒した後に来るべき各党のバラバラな政策を纏めること、即ち政策作りから始めなければならない。しかし、政策が大きく異なるから、纏まらない、すなわち泥沼しかない。

 こういう無責任な選択を迫る野党に、国民が政治を預けていいはずはない。イランの核濃縮問題は戦争になるかならないかという目の前の問題である。長期化が予測される北朝鮮の核・ミサイル問題も深刻さを増している。その背後には米中の覇権争いが絡んでいる。

 このように、国際情勢は日に日に深刻さを増し、12年前に民主党が政権を執った時以上に舵取りが難しい。民主党自民党をはるかに上回る議席を獲得して政権を担ったが、日本をめちゃくちゃにし、世界の中の日本の信頼性も存在感も喪失させてしまった。

 今日の少数多党への分裂も、その淵源は民主党にある。第一党になり「マニフェスト」なる外国語で政策を打ち出したが、財源の裏づけさえない代物が多かったために誤魔化しの夢でしかなかったのだ。

 民主党という野合集団を創り出した筆頭責任者はいまだに反省することもなく、「日本は日本人だけのものではない」という間違った信念に固執して日本売り行脚を続けている。民主党は元首相というには恥ずかしすぎる首相たちを生み出してきた。

 政策なしの「安倍憎し」だけで野合党を急ごしらえして参院選を戦っている。本来あるべき姿は、選挙前に大同団結して一党を成して「政策」を掲げ、国民に信を問うべきはずであろう。それが国政選挙ではないのだろうか。

 国民を馬鹿にするのも程ほどにしないと、選挙の暁には消えていく運命しか待っていないに違いない。

日本が世界の潮流を作る

 日本は世界で最も尊敬されている国であるが、そうしたことを教育しないために残念ながら国民の多くは、「日本(の存在価値)」を知らないようである。

 日本は歴史上最も戦争をしない平和な国であること、自由と平等を大切にし国民の格差が最も少ないこと、国家が繁栄し人生を享受できること、外国人を排除しない人権尊重の国であることなどからである。

 もっと視野を広げると、日本は国際社会の先導役であったことが分かる。欧米は奴隷を使い、人種差別をして植民地を保有して繁栄した。ところが、日本はそのすべてを排除する潮流を創ったのである。

 米国は奴隷廃止を宣言したあとも実際は労働力として奴隷を移入していた。それに一撃を加えたのがマリア・ルス号事件であった。中国人苦力(クーリー)を運んでいたペルーの船が修理のために横浜港に立ち寄ったおり、苦力の一人が脱走して救助される。船底に200人を超す奴隷同然の苦力が食糧も十分に与えられず生き地獄の状態にあったことが知れ、副島種臣外務卿(外相)は神奈川県副知事に命じて解放させる。

 第1次世界大戦後のヴェルサイユ会議で、日本は人種差別撤廃条項を国際連盟規約に入れる提案を行う。米国のウィルソン大統領は従来の多数決から満場一致の採決を提案して辛うじて否決するが、国際社会に重くのしかかったのは言うまでもない。米国に黒人大統領が出現した折に、日本の人種差別撤廃提言が思い出された所以である。

 日本は日清戦争の結果として台湾運営に関わるが、欧米の搾取する植民地経営ではなく、恩沢による同胞化であった。日本の国家資源をつぎ込み、開拓を進め、国土の開発と民生向上を図ったからである。

 その眼目は自立であり、民政長官として赴任した後藤新平は現地の風俗習慣を壊さず、逐次に文明化をすすめ(生物学的植民地論)、外国の植民地経営のようなトラブルは少なく、現地人の協力によって生命財産の安全と生活の向上が保障されたのである。

 満州は植民地ではなかったが、初代満鉄総裁の後藤は台湾の経験を生かし、共存する五族がそれぞれに文明化すれば自ずと防衛の観念も増大(文装的武備論)し、武力によらない安全保障が確立するとした。

 こうした意識の下、大東亜戦争を戦うにあたっては「各々その所を得させる」ことを掲げ、植民地化されていた東南アジア諸国の独立に貢献したのである。これがアジアをはじめアフリカなどの植民地解放にもつながり、米英仏蘭等の反感を買ったことはいうまでもない。

 いずれにしても、日本は奴隷解放、人種差別撤廃、植民地廃止という歴史に燦然と輝く大業の先鞭をつけたのである。

9条死守で中米の餌食

 このように、国際社会でも由緒ある、126代も続く天皇を頂く安定した国、しかも現代においては経済力と安全保障で世界に貢献する日本である。

 しかし、この日本は9条の制約から、自分を守る力さえ剥ぎ取られている。

 今は日米同盟によって手を出せない中国であるが、「正常に戻った」と呪術を唱えながらも尖閣諸島への侵入を執拗に繰り返し、北海道をはじめとした日本全土にまたがる要地での土地買収などで、中国が虎視眈々と日本奪取を企図している。

 尖閣諸島への侵入はかつては40余日の連続が最高記録であったが、先のG20直前には64回連続になった。日中首脳会談を前に一端途切れたが、首尾よく会談を終えた直後から再度連続侵入を重ね続けている。

 日本人の尖閣諸島への関心を喪失させ、常時侵入が「新常態」となることを意図していることは明らかであろう。

 しかし、日本は9条の制約から自国の領土である尖閣諸島手出しができない。然るべき組織がないし、もとより領土を平時から防衛する「軍隊」も保有していない。すなわち国家を外国の武力から守る組織がないのだ。

 自衛隊があるではないかと国民はいうであろうが、国民の90%以上が認めるように、災害派遣で活動する「自衛隊」であって、国家の防衛に任ずる「軍隊」ではない。

 尖閣諸島に中国人が上陸してもそれを殺傷すれば、国内法によって自衛官は殺人や傷害罪に問われることになる。しかも、その裁判は軍人を裁く軍法会議が存在しないので、一般の裁判所で行われることになる。

 国(や国民)を守るためにとった行動が殺人罪で起訴される法体系の下では、言うまでもなく自衛官は誰一人として国(や国民)を守る行動はとり難いし、とり得ないことになる。

 参院選では、無防備の日本であるが軍隊を急ごしらえもできないし国民感情も許さないであろうから、せめて現存する自衛隊に国家防衛の任務を憲法に明記することを提案しているのである。

なぜ憲法を論議しないのか(デマクラシーで社会秩序破壊)

 ファーウェイの孟晩舟副会長カナダで捕縛された時、カナダの理由説明に対して中国外務省の華春瑩報道官は「嘘は1000回言ってもウソである」といっていたが、尖閣諸島問題ではウソを重ねている。

 福建省の漁師が尖閣沖で遭難した折、尖閣で工場経営していた日本人が救助し介護した。中国は感謝状を贈って、日本の行為を称した。文面には「日本帝國沖縄縣八重山郡尖閣列島」と明記し、書状の発刊者は「中華民国駐長崎領事馮冕(ひょうめん」」となっている。

 これほど明確な証拠があっても、尖閣は古代以来中国の領土であったと言い張る中国にはあきれてものが言えない。日本人は「嘘は一回でもウソだ」とみる国である。

 香港が中国への犯罪容疑者引き渡しを可能とする逃亡犯条例改正問題で揺れた。そもそも香港引渡しの「中英共同宣言」では50年間(すなわち2047年まで)は一国二制度を維持するとしており、英国占領時の自由主義社会であり続けるはずであった。

 2014年の雨傘運動デモの際、英国は調査団を香港に派遣しようとしたが、中国は内政干渉として入境を拒否し、返還時点で共同宣言は無効になったと強弁したのである。

 南シナ海の人工島などについてもフィリッピンの申し立てで仲裁裁判所が無効判定を出すと、中国はすかさず「紙屑」と宣言した。そして、当初は軍事利用の考えはないとしていたが、滑走路を開き、レーダーと対空ミサイルも設置し軍用機を飛来させ、ついにはミサイル発射を行った。

 こうした行動を見ると、中国要人の発言を信じることはできない。尖閣諸島についても棚上げと言っていたものをいつしか自国領に組み込んだのである。

 チベットの自国化の目処がたった現在は、ウィグル人の強制収容所での懐柔である。民主的な教育施設と言っているが、実際は思想改造を行っていると言われる。ウィグル女性は強制的に漢人男性と結婚させられ、漢族化でウィグル人種の根絶やしを狙っている。

 併呑される前の1949年当初は総人口400万人中の漢人30万人(1割弱)でしかなかったものが、2010年には2200万人中の870万人(約4割)が漢人となっている。

 北海道1000万人計画を中国人が北海道庁主催の会議で語り、うち200万~300万人は中国人の移住を提案したという。現鈴木直道知事は中国系資本に法外の安価で夕張の土地を売却した。沖縄でも玉城デニー知事は習近平が進める一帯一路での活用を提案したという。北海道や沖縄はみずから進んで「トロイの木馬」を抱え込もうとしている。「正常化」という甘言のデマで日本の協力を取り付け、同時に日本社会の秩序を破壊する下心を隠そうとしているのだ。

 日本でありながら日本の主権行使ができないような条約あるいは地位協定であり、大統領の疑念を奇貨として日本の安全を最小限確保する条件を見出しながら基地の縮小などに切り込むチャンスとして、野党は現実的な案を提示して、政権与党が米国と交渉する圧力にしてはどうだろうか。

 理想論は描くとしても、それを踏まえつつリアリズムの視点で提案すれば、9条もおのずと議論せざるを得ないのではないだろうか。

 今こそ、野党は「日本の安全」に資する対案を示さなければならない。

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