プロレスファンの方々、覚えておいでだろうか。1990年代プロレス界を席巻したハルク・ホーガンを中心とした一大ムーブメント、そう「nWo」こと「ニューワールド・オーダー」の存在を。アメリカプロレス団体「WCW」で巻き起こったこのムーブメントは、「笑ってはいけない」でもお馴染みの蝶野正洋の手によって新日本プロレスにも輸入された。そして瞬く間に日本中のプロレスファンが「nWo JAPAN」によって黒く塗り染められる事となったのである。

 そしてあれから20数年。今度は我々オリックス・バファローズファンの脳内を席巻する新たな「nWo」が台頭している。「N」中川圭太、「W」若月健矢、「O」大城滉二。そう彼らこそオリックス・バファローズの後半戦の鍵を握る「ニューワールド・オーダー」、まだまだ狙えるCS進出への新世界秩序なのである。む、無理やり感が……。

交流戦首位打者ルーキーと、打率だけでは語れない若月健矢の活躍

 まずは「N」中川圭太だが、ここは前回の文春野球コラムで木村幹センセイが熱弁されている為、今回は軽めに止めておこう。今季の交流戦首位打者で一躍全国の野球ファンにその名を轟かせた、ご存知「最後のPL戦士」である。前半戦の規定打席まで27打席ほど足りないものの、今季ここまで打率,304ルーキーとしてはじゅうぶん過ぎる成績である。これは仮に規定打席に達していれば打撃5傑入りする成績であり、しかもその65安打のうち、2塁打が14、3塁打が2、本塁打1の長打率.402というのも中軸を任せるに申し分ない。そして何より出塁への執念が凄まじく、土壇場で十数球粘った末、四球を選びサヨナラ勝ちへの扉を切り開くなど、見ていて実にドラマティックな選手なのである。今季のフレッシュオールスターでも4番を務めたルーキーは、間違いなく後半戦オリックスの打撃のキーマンとなる事だろう。

 そして何と言っても「W」若月健矢だ。打率こそ.183と物足りない数字ではあるが、本業の捕手の方では今季ここまで79試合でスタメンマスク。守備指標「UZR」値で3.5と、こちらは非常に申し分ない数字である。守備ではパ・リーグNo.1捕手と言われて久しいソフトバンクホークス甲斐拓也の「UZR」が3.7である事から間違いなくパ・リーグ1、2を争う守備成績と言えるだろう。実名を出すと問題が大きい為あえて名前は伏せるが、他球団の正捕手のUZR値が「-0.2」や「-2.3」である事を鑑みると、若月は守備で毎試合2点~5点の貢献をしているのと同等の事となる。そう考えれば少々打撃指標が物足りなくとも、若月の存在で勝てている試合が大半という事になる。流石は選手会長と言った所か。

 常に、明るく煌びやかな「太陽」ではなく、ひっそりと、しかし直実に足元を照らす「月」のような存在になりたいと語る彼。後半戦もその月明かりは直実にオリックス・バファローズの足元を照らすだろう、そうCSまでの道案内は彼に委ねられているのだ。

「岡田くん、頼む! もう一回大城に打たせてやってくれ」

 そして最後に「O」大城滉二である。興南高校で春・夏の甲子園を制した逸材はいよいよ正遊撃手の座をその手に掴もうとしている。今季ここまで82試合に出場し打率.276。5月に関して言えば月間打率.315を記録するなど、ここまで苦しいながらもバファローズが他球団と熾烈な争いを繰り広げる事が出来たのは、彼の活躍が非常に大きいと言えるだろう。それこそ期待はしていたものの、まさかこんなにも早く大城がクリーンナップを打つ日がやってこようとは。感慨深く彼を見つめるバファローズファンも少なくないはずである。また内野のファンタジスタの資質もじゅうぶんで、まるでオリックス時代の後藤光尊コーチプレーを見ているような感覚に陥る。残念なエラーをしたかと思えば、それを取り返してお釣りがくるファインプレーで魅せるなどプロとしての存在感も満点だ。

 3年前の地元沖縄での楽天戦で印象深い出来事があった。大城の事をあまりに愛する初老のファンが、大城の3振直後に打席に向かうT-岡田に向かって「岡田くん、頼む! もう一回大城に打たせてやってくれ、あんたはもう沢山ホームランを打ってるから譲ってくれても良いだろう」とルール無用の嘆願をしだしたのだ。そんな嘆願をされてT-岡田もさぞ困ってしまっただろうが、それ程までに地元のファンからも愛されている大城。このまま後半戦もそのバットとグラブで若きバファローズを牽引して欲しいものだ。

 とまぁ、無理やり「nWo」だ「ニューワールド・オーダー」だとキーマン3名を論ってみたが、バファローズは2位日本ハムまでたった4ゲーム差である(前半戦終了時点)。この3人に牽引されたチーム交流戦のような戦いを継続出きれば、秋にはCS争いに割って入る事もじゅうぶん可能だろう。願わくば本家、プロレスの「nWo」のように分裂を繰り返し、最後には自然消滅に至ることがないよう、我々ファンは暖かくも、しっかりと後半戦も見届けて行こうと思っている。

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オリックス・バファローズの後半戦の鍵を握るうちの一人、若月健矢 ©時事通信社