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Point

オーストラリアでの研究が、長い通勤時間や車や電車を使った通勤は、従業員の幸福度や能率に悪影響を与えていることを明らかにした

■通勤距離が伸びるほど、従業員の欠勤率も増加していった

■経営者や政府は、戦略の一環として従業員の通勤時間を減らす取り組みをおこなっていくべきである

内向的な人は「不機嫌」な時に生産性が向上する

車、電車、自転車、徒歩…その方法は様々だが、「通勤」は多くの人にとって避けて通れない。

オーストラリアメルボルン大学の研究者らが、そうした通勤方法の違いや職場への距離などが従業員の幸せにどの程度の影響を与えているのかを調査した。

研究は「Journal of Transport Geography」に掲載されている。

長い通勤時間はいいとこなし

1,121人のフルタイム・ワーカーを対象としたこの研究では、彼らが通勤にかけている時間が平均して週に5.75時間であることが分かった。

そのうちおよそ1/4の人々が、片道に45分以上をかけている「通勤時間が長い」とされる人々だ。

研究では、職場までの距離が長い人ほど仕事を休んでしまうことが多いことが明らかにされた。

下のグラフは縦軸が「1ヶ月の見込み欠勤日数」であり、横軸が「通勤距離」だ。これが右上がりの直線になっていることから、そこに相関関係があることが分かる。

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これについては2つの理由が考えられる。1つ目は、長い距離を通勤する従業員ほど心身の調子を崩しやすく、体調不良が欠勤の直接的な原因となっているというものだ。

2つ目は、長い距離を通勤する従業員は、通勤によって実質的に収入が少なくなってしまうということだ。つまり、交通費が余計にかさんだり、拘束時間が長くなって余暇が減るために、そうした人々はできるだけ通勤にかける時間を減らしたいと思っていることが考えられる。

また、オーストラリア主要都市における平均的な通勤距離はおよそ15km。そして、通勤距離が「1km」の人々は、通勤距離が平均的な「15km」である人々と比べて欠勤率が36%も減少していたことが分かった。

さらに通勤距離が「50km」である人々にいたっては、「15km」の人々と比べて欠勤率が22%も増加していたとのこと。

この研究では他にも、徒歩あるいは自転車で通勤するミドルエイジ(35~54歳)の従業員が、電車や車で通勤している人と比べて、仕事のパフォーマンスについて高い自己評価をしていることが明らかとなっている。

また、ミドルエイジに限らず短い通勤距離で、通勤手段に徒歩や自転車を選んでいる人々は、心が落ち着いていて情熱があり、通勤時間を有意義に感じており、生産性も高いことが分かった。

経営者や政府に求められる姿勢

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こうした結果から、経営者は従業員のパフォーマンスについて戦略的に考える上で、その通勤手段についても考慮に入れるべきであることが分かる。

つまり経営者は、従業員の通勤時間の短縮と、自転車や徒歩などのいわゆる「アクティブな通勤」を推奨していくべきだろう。

例えば安全な駐輪場の確保や、シャワーなどの設備の拡充は、自転車通勤者を増加させる要因となると考えられる。

また、経営者だけでなく、政府の役割も大きい。街なかのサイクリングロードを整備するなど公共事業に関することは、当然ながら国や地方の力なくしては実現することができない。

この点、注目すべき政策を実施している国としてオランダが挙げられる。オランダにおける多くの自治体は、自転車を推奨する政策を実施するための特別な予算割り当てを持っているのだ。

満員電車」で世界的にも悪名高い日本でも、できることは多くあるだろう。研究をするまでもなく、このような異常ともいえる通勤状態が、従業員の心身に多大な悪影響を与えていることは明らかだ。

ただでさえストレスフルな仕事に、通勤のストレスが重なるのは苦痛でしかない。こうした研究が、政府や経営者の通勤時間減少への取り組みに対して、背中を押してくれることを願うばかりだ。

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