これもまた、死者の怨念なのか。30年前に新宿区で発見された100体以上の人骨が最近良好な日中関係をにわかにざわつかせている。

7月14日朝日新聞デジタルがそして、翌日関係の深いハフポストが伝えたのは、1989年7月22日、当時東京都新宿区にあった厚生省(現厚労省)戸山研究庁舎建設現場で多数の人骨が発見された「事件」を振り返り、市民団体が展示会やフィールドワークを開くということ。

多数の人骨というだけでただならぬ話ではあるが、さらに話を難しくしているのが、発見現場にかつて「731部隊」と関係が深い防疫研究所があったということ。細菌部隊として批判される、731部隊の真偽については専門家の論評に任せるが、少なくとも中国で悪名高いのは事実。その731と関連してかどうかを追及する……というのも、市民団体の趣旨のひとつだ。

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この朝日新聞の報道、本質的には展示会やフィールドワークの告知であり、国内の他媒体の反応はほとんどなかったが、案の定と言うべきか中国や中華圏ではネットニュースなどを中心に大きな反響を呼んだ。中国国内のニュースはもちろん、「東網澳門(イーストネットワークマカオ)」や「新浪臺灣」なども飛びついたのだ。

基本的に朝日新聞の報道を引用する形ではあるが、それでもネットニュースの特性として731や百体の人骨という文字が目につく。中国の人々に忌まわしい記憶を呼び起こすには十分であろう。

ちなみに、中国では長年続いた共産党の反日政策の影響もあり、「731」という数字自体が忌むべきものとなっているという。

ちょうど日本で言えば、「42」「49」という数字が忌み嫌われるのに似ている。かつて、筆者の知人が中国国内を旅行しているとき、宿泊したホテルの部屋が「731号」で、迎えにきた中国人の知人に笑われたことがあるそうだ(もちろん、冗談の笑いだが)。それだけ731部隊の“知名度”が高いということ。

現時点で、100体の人骨について推定されているのは、アジア人の骨であること。土のなかに数十年~100年あったこと。生前に、刺したり切ったりされた跡などがある……等だ。

再々言うように、731部隊の真偽云々を語るのは趣旨ではない。現実に誰のものとも、どうしてそこにあるのかもわからない人骨が100体以上あることが問題なのだ。彼らの御霊のためにも、真相追及の努力を怠るべきではない。(文◎鈴木光司)

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