お笑いコンビ ハライチ岩井勇気がお届けする、本音でアニメを語る番組「ハライチ岩井勇気のアニ番」。今期放送中のアニメ50本以上を網羅している岩井氏が、厳選に厳選を重ねたアニメ作品上位10本を“しがらみなし、本音100%”で大発表するという当番組。

 第113回の放送ではラジオパーソナリティーの二ノ宮市丸氏をゲストに迎え、2019年春クールアニメ総合ランキングを発表しました。岩井氏のランキングでは2位に『八十亀ちゃんかんさつにっき』、3位に『鬼滅の刃』がランクイン。

 一方の二ノ宮氏のランキングでは2位に『フルーツバスケット』、3位に『さらざんまい』がランクイン。そして番組初となる文句なしの両者が選ぶ1位には『キャロル&チューズデイ』が輝きました。

左から二ノ宮市丸氏岩井勇気

※本記事はニコニコ生放送での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。また、記事中には『キャロル&チューズデイ』、『フルーツバスケット』、『さらざんまい』のネタバレを一部含みます。ご了承の上で御覧ください。

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第3位は二ノ宮『さらざんまい』、岩井『鬼滅の刃』

岩井:
 『さらざんまい』の評価は両極端ですね。

番組スタッフ:
 わかる人にはわかる。

二ノ宮
 でしょうね(笑)。

岩井:
 「『さらざんまい』大好き、最高だ! ストーリー最高、泣けた!」って言っている人には何を言っても無駄(笑)。

二ノ宮
 『ワンパンマン』が陽キャ向けの作品なら、『さらざんまい』は完全に陰キャ向けの作品ですよ。

岩井:
 俺、中学の頃にライトノベルをすごく読んでいたんですよ。今となっては、「みんながわからない世界を俺は楽しめる」という感じがあったことを認めるんですけれども、それと同じでしょう?

番組スタッフ:
 ちょっとアンケートで聞いてみますか?

岩井:
 『さらざんまい』を見た人に「これ、わかんないの?」って言われちゃう感じ?

二ノ宮
 それは第三者目線ありきじゃないですか。そんなことないんですよ。

番組スタッフ:
 確かに幾原邦彦監督【※】作品の優越感とかあるじゃないですか。それはわからなくもないですけど。

幾原邦彦
アニメ監督、音楽プロデューサー。1997年、テレビアニメ『少女革命ウテナ』の監督を務め、以降『のだめカンタービレ』のOP映像演出、『輪るピングドラム』の監督などを歴任。

二ノ宮
 別に「俺、わかるんですよ」とかじゃなくて、もうね、第三者とかどうでもいいの! ひとりで部屋で見ていて「はぁ~おもしろ~い!」ってなっている陰キャ感(笑)。

番組スタッフ:
 アンケート結果出しますか。どん!

二ノ宮
 半々ということは、バランスとしていいんじゃないですか。

岩井:
 アニメ全体で見たら、『さらざんまい』は残るかと言われたら微妙なところだと思う。

二ノ宮
 アーティストってちょっと尖っていたほうがいいし、量産作品よりも好き嫌いははっきり分かれる。たぶん人種が違う。みんなが嫌いなところが僕は好き。たぶん僕が好きなところはみんな嫌いなんですよ。

岩井:
 『輪るピングドラム』を見たときは、おもしろかったんですけれども、なんかね……。

輪るピングドラム
(画像は輪るピングドラム | Amazonより)

 アニソンの電波ソングを聞いたときの気持ち悪い感じ、あるじゃないですか? 気持ち悪いけど、すっごいハマっちゃう! あの感覚はわかりますか?

 『輪るピングドラム』を見たときに、その感覚に近かったんじゃないのかなって思います。

二ノ宮
 なるほど。「こんなのを見ちゃう、聞いちゃう俺って……」みたいな感覚は自分にはないんですよ。周りが別におもしろいって言ってなくてもいい。俺はおもしろかった。

岩井:
 「雰囲気がおもしろかった」っていう意見は、わかるんだけどストーリーは……。

二ノ宮
 そんなトリッキーなテーマじゃないんですよ。メインは、外のつながりとか絆はすごく大事だけど絶対なものではないし、簡単に切れたりするものだけど、いつでもつなぎ直そうと思ったらつなぎ直せるものだし、一生巡ってくるみたいなことだと思うんです。

 それをわかりやすく「俺たち仲間じゃないか!」みたいな感じで描くこともできるじゃないですか? でも、それはみんなやっているから。そこを違う表現で工夫をしてみましたっていう作品だと思う。

岩井:
 でも、その工夫って『輪るピングドラム』でやっていたことじゃない?

二ノ宮
 『輪るピングドラム』は自己犠牲の話で、表現方法はひねくれた描写をしてくる。そのひねくれた描写が好き。どうやってくるのかなと。

岩井:
 でも、さほど手法は変わってないんじゃないんですか?

二ノ宮
 でもほら、おいしいものはおいしかったら食うじゃん(笑)。

番組スタッフ:
 たとえが合っているかわからないけど、こんなにラーメンブームなのに台湾まぜそば⁉ みたいな。それ食うんだったら普通のつけ麺でよくね? みたいな。ちょっと変わったまぜそばが出て、ファンはめっちゃ好き。一発食ったら確かにまあまあ……と。

 第二弾でパクチーまぜそばが出て、「これパクチー入れただけやん!」って言う人はいるんだけど、でも「パクチーが全然違う香りで麺として最高ですよ」って言っている人もいる。これをめちゃくちゃ自慢したい人もいる。でも二ノ宮係長の場合はテイクアウトして家でこっそり「ウホホホ!」って言いながらズルズル食べてる。

 だから王道ではない。『輪るピングドラム』が岩井くんに一発刺さったんだけど、「結局味付けが変わっただけでしょう?」ってなっちゃうとハマらない。だけどファンとか好きな人は「出た!」って。ハマる人は好きなんですよ。

岩井:
 『輪るピングドラム』を見て、新しい! と思ったんですよ。だから、俺は新しいと思わせてよ! って思っちゃう。やっぱり表現方法が似ていると……。今度はこういうことをやるんだ! みたいな。全然違うことをやっていたら俺はすごい好きになれた。

二ノ宮
 ベテランのアーティストのライブに行って、新曲をやってほしい気持ちもあれば往年の名曲をやってほしい気持ちもあるしみたいな。

岩井:
 最初にいいと思った部分が違ったんでしょう。二ノ宮係長はあの表現方法がすごいと思ったけど、俺はあの表現方法が新しいと思った。こんなアニメなかった! くらいに思っちゃったから、そこを求めちゃっている。

二ノ宮
 好きな監督だと、どうしてもその人っぽさを求めちゃうからね。富野由悠季監督には富野監督っぽさを求めちゃうし。幾原監督には幾原監督っぽさ。庵野秀明監督には庵野監督っぽさ。

番組スタッフ:
 これがすごいのが、久々にふたりの意見が真っぷたつに分かれた。

二ノ宮
 『さらざんまい』は絶対に岩井さんは入っていないだろうなと思いましたもん。

岩井:
 なんか違う気がするんだよな……。新海誠監督は同じ味付けというか、この手法が受けたからこうやるみたいな。

二ノ宮
 新海誠監督は結構濃い目のスープでずっと出していたけど『君の名は。』のときに「薄味にしないとチェーン店出せないぞ」って言われて「なんだよ!」ってスープを薄くして大ヒットした感じじゃないですか(笑)。

君の名は。
(画像は君の名は。 | Amazonより)

岩井:
 だいぶ薄まったけどね(笑)。

番組スタッフ:
 岩井くんは本店の元の味を知っているから、もう一回勇気出してこういうのを出そうぜ! ってなるけれど、それは周りが許さないよね。

岩井:
 濃い味のときの味がしなくない? っていうくらい。むしろ違う味のほうが強くなっちゃってない? って。これを新海誠監督のラーメンだっていって食べていいんですかって思う。

番組スタッフ:
 ジブリって作り方を含めて基本一緒じゃないですか。でもジブリは毎回一緒でいい。「よし、ジブリを食いに行こう」って言って食いに行くけど、「この味だ」って決めていなくて尖った味のラーメンを食ったら、それが一般受けしたときの違和感はやっぱり感じる。

岩井:
 なんか業者が入ったなっていう感じがするんですよ(笑)。スーパーアドバイザーが入ったんだな、みたいな。

番組スタッフ:
 なるほど(笑)。看板にはでかでかと監督名が書いてあるわけです。違和感は感じるでしょうね。

岩井:
 好きだった人がかわいそうだなって思ったんです。

二ノ宮
 それはあるかもしれない。だから『さらざんまい』はこれでいいんです。

岩井:
 なるほどね。