佐々木倫子原作、石原さとみ主演の火曜ドラマ「Heaven? 〜ご苦楽レストラン〜」の放送がスタートした。

放送前の記事で「マヌケさで勝負するのだろうか?」と書いたのだが、本当にその通りだったので驚いた。夜10時台のドラマは大人が観るしっとりとしたものという一種の伝統があったのだが、それをまるっきり覆しに来た。

1話の視聴率は10.8%。今後、視聴率が伸びるかどうかは、アレにかかっているんじゃないだろうか。そう、「生首」ですよ……。

美しいが声の張りが弱かった石原さとみ
営業スマイルのできないシェフドラン・伊賀観(福士蒼汰)がヤクザ(波岡一喜! これしか出ないなんてもったいない……)に絡まれているところを黒須仮名子(石原さとみ)がスカウトして、墓地にあるフレンチレストラン「ロワン ディシー」(「この世の果て」という意味)を開業するまでのドタバタを描いた1話はおおむね原作(kindle版1巻無料)どおり。エアコンを再稼働させたらホコリだらけになるというコント風のオチも原作を再現していた。

「ロワン ディシ―」に集まった曲者たち(志尊淳、勝村政信、段田安則、岸部一徳)は芸達者揃いで、掛け合いも安心して見ていられる。彼らを引っ張る役回りの変人オーナー石原さとみ美しいのだが、もっとテンションをハイにしてもいいんじゃないだろうか。「潰れてしまえー!」の声の張りがちょっと弱かった。

冒頭に“謎の紳士”役で舘ひろしが登場したが、ネットでは「伊賀観のその後の姿だろう」という声が多数あがった。メガネ(ハヅキルーペにあらず)かけてるしね。ほぼ間違いないと思うが、違ったら違ったで面白い。

生首演出に賛否両論
視聴者から賛否両論の声(とはいえ賛の声はほとんど見なかったが……)があがったのが、「99.9 -刑事専門弁護士-」シリーズで大ヒットを飛ばした木村ひさしによる演出だ。「諦観」という文字が七色の光とともに現れたり(原作どおりといえば原作どおり)、登場人物の心の声を幽体離脱したように喋らせたりする(便宜上「生首演出」と呼ぶ)。特に後者は否定的な声が多かった。たしかに画面がワチャワチャするし、テンポも悪くなる。消えるときの「ピュー」という効果音もいるのかどうか。

最初の生首演出が登場するのは7分過ぎ。その後、8分過ぎ、10分過ぎ(ここは同時に6人)に登場して、11分過ぎには連打された(登場人物のセリフに生首が相槌を入れたりする)。その後も23分過ぎ、30分過ぎ、34分過ぎ、37分過ぎとコンスタントに登場する。

堤幸彦の影響を強く受けている木村の演出は、ストーリーとは直接関係ない小ネタの連打や短いカット割りなど、「遊び」が多いのが特徴。「99.9 -刑事専門弁護士-」シリーズなどは「日曜劇場」の伝統の重しがあってそこまで振り切れてはいなかったが(それでもプロレスネタなどの小ネタは多かった)、金曜ナイトドラマ枠の「民王」は遊びが激しかった。今回の火曜ドラマ枠は歴史が浅い分、振り切ってやろうという方針が制作側にあったのだろう。俳優陣の掛け合いに演出家もノリノリで参加しているように見えた。

とはいえ、ドラマが後半に進むにつれて生首演出は減っていく。これは登場人物が忙しくなって心の声を出している余裕がなくなるのと比例している。エンディングにも出てこなかったので、「何がなんでも生首演出をやりたい!」 というわけではなさそうだ。2話以降も登場人物が忙しくなればいいなぁ。繰り返しになりますが、芸達者が揃っているのだから、彼らの掛け合いにまかせておけばいいんですよ。

また、初回は10分拡大枠で放送されたが、それによってテンポの悪さが際立ったとも考えられる。もっと削れただろうくだりもあったはずだ(田口浩正の出演シーンとか)。「Heaven?」に限らず、ドラマの初回10分拡大は害悪でしかない(コメディーならなおさら!)。拡大枠は視聴者が「もっと見たい」と思うドラマ最終回にだけやればいいと思う。

いろいろ書いてしまったが、夏ドラマらしく気楽に見られるのが長所の「Heaven? ~ご苦楽レストラン~」。2話は今夜10時から。
(大山くまお

「Heaven? ~ご苦楽レストラン~」
出演:石原さとみ福士蒼汰、志尊淳、勝村政信、段田安則、岸部一徳舘ひろし
原作:佐々木倫子 『Heaven?』(ビッグスピリッツコミックス刊)
脚本: 吉田恵里香
音楽:井筒昭雄
主題歌:あいみょん 「真夏の夜の匂いがする」
演出:木村ひさし、松木彩、村尾嘉昭
プロデュース:瀬戸口克陽
製作著作:TBS

イラスト/まつもとりえこ