2019年はまちがいなく宇宙研究が躍進している。今年4月にはブラックホールの撮影に成功し(関連記事)、天体物理学の新時代の幕開けとなった。
そんな中、漆黒の宇宙を眺めていたハッブル宇宙望遠鏡が、思いがけず物体の薄いディスクを発見したそうだ。
それは地球から1億3000万光年離れた渦巻銀河「NGC 3147」の中央に鎮座する、超大質量ブラックホールの周囲を回転している。
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Artist’s Impression of NGC3147 black hole disc
飢えたブラックホールの周囲に円盤
NGC 3147のような低光度の活動銀河にあるブラックホールは、重量で捕らえて飲み込んでしまえる物質が周囲に少ないことから、飢えていると考えられている。
そのために、それよりもずっと活動的な銀河で見られるような、薄いディスクが存在するのはかなり意外だった。
相対性理論を可視光で証明
とりわけ興味深いのは、このディスクがアインシュタインの相対性理論を試す滅多にないチャンスであることだ。
ガスのディスクはブラックホールの凄まじい重力場の中にある。相対性理論によるならば、ブラックホールの近くにあるディスクから放たれる光はダイナミックに変化して見えるはずなのだ。
「一般相対性理論と特殊相対性理論の効果を可視光でここまでくっきりと観察できたのは初めてです」と米宇宙望遠鏡科学研究所のマルコ・キアベルジェ氏は話す。
相対論的ビーミング効果
ブラックホールの質量は太陽の2億5000万倍もある。そして、その周囲を旋回しているディスクを構成する物質は、光速の10パーセント以上の速さで移動する。
これほどの速度になると、ガスが地球へ向かって移動しているときには明るく、反対に地球から遠ざかって移動しているときには薄暗くなって見える。
これを「相対論的ビーミング効果」という。
またディスクのガスは、重力の落とし穴の奥深くにあるためにそこからの脱出が難しく、そのために赤い波長へ向かって伸びて見える。
「ブラックホールのすぐそばにあるディスクを見られるなんて面白いですよ。あまりに近いので、引力による速度と強さが、光の光子の見え方に影響するんです」と話すのは、イタリア、ローマ第三大学のステファノ・ビアンキ氏だ。
現行モデルの誤り
研究チームがNGC 3147を選んだのは、低光度活動銀河に関するモデルの正しさを検証するためだった。
このモデルの予測によれば、大量のガスがブラックホールの重力に捕まった場合に、物質のディスクが形成され、やがて光を放ちクエーサーができるはずだ。飲み込む物質があまり与えられない場合にもディスクが形成されるとは予測していない。
「観察されたディスクは、存在するとは予想していなかった規模の小さなクエーサーです。それでも、光度が1000倍から10万倍もあるような天体と同じ種類のディスクなんです。現行モデルによる活動に乏しい銀河に関する予測は、明らかに間違っていますね」とビアンキ氏は説明する。
研究者はほかにも似たようなコンパクトなディスクがどこかにないかハッブルを使って捜索する予定だという。
この研究は『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』(7月11日付)に掲載された。
References:Hubble discovers mysterious black hole disc/ written by hiroching / edited by parumo
全文をカラパイアで読む:http://karapaia.com/archives/52277041.html
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