米麦日報 2019年7月17日付

米麦日報 2019年7月17日

大阪堂島商品取引所(岡本安明理事長)は7月16日、臨時総会決議を経て、監督官庁である農林水産省に対し、コメ先物の本上場を申請した(実際には17日着の模様)。これを受けて農水省側は、現在の試験上場期限である8月7日までに、何らかの判断を下す運び。その選択肢は、
〈1〉本上場を認可
〈2〉試験上場の再々々延長
〈3〉廃止
――の3パターンがあり得る。本来、試験上場の延長はあり得ない話だが、同様の状況だったにもかかわらず延長された“実績”(2017年=平成29年)があるため、不透明だ。

なお堂島商取は、今回申請した定款変更理由書のなかで、「生産者の市場参加数は倍増している」、「先物市場で形成された価格は、現物価格との著しい乖離や極端な乱高下は認められず」、「取引量はそれまでの水準を下回る状況にあるものの、元来相場環境等により変動するものとして、価格形成に悪影響を付与する程度のものとは言い難い」などと指摘している。

〈大阪堂島商品取引所・岡本安明理事長コメント〉
コメの先物取引の試験上場については、平成23年8月8日から取引を開始し、まもなく8年を迎えます。この8年間、トラブルもなく、円滑な取引が行われてきたのは、関係者の皆様のご指導、ご協力の賜であり、まずもって厚く御礼申し上げます。

2年前には、生産者の取引参加がなお不足しているとのご懸念や平成30年産米以降の国による生産数量目標の配分がなくなったことの影響を見定める必要があるとのご指摘が示されておりましたことから、本所としても、商品設計の見直しや産地への積極的な啓蒙活動の展開等、市場環境の改善に努めて参りましたが、これまでの取引において、市場に参加する生産者の数は着実に増加しており、また、先物市場の影響による米価の極端な乱高下は引き続き確認されておりません。

むしろ、コメ先物市場において形成される価格は、農業関係者の皆様の経営指標としても、その必要性が評価されており、実際にご活用されている農業関係者の皆様からは、本上場を強く望む声が寄せられているところです。

生産者の方々のコメ先物市場をご活用いただいている具体的な一例といたしましては、一年先の新米価格を先物売りしてから作付けをすることで、稲作経営の安定策を講じている方や先物市場を販売チャネルの一つと位置付けている方もおられ、また、集荷業者の皆様からは、先物価格を基準として現物契約を締結するなどの市場活用の手法も伺っております。

このように、コメ先物市場は、経営感覚の優れた意欲のある『担い手生産者』がマーケットを見ながら自らの経営判断で生産を行う基盤の一部を選択肢の一つとしてご提供する等、『農業改革の動き』の方向性に沿ったものであり、ひいては国内農業の活力に寄与するものと確信しているところです。

一方で、取引量が減少した旨のご心配もおかけしております。しかしながら、減少したこと自体は喜ばしいことではございませんが、相場環境等による影響を受けて変動する性質のものであることを踏まえますと、価格形成に悪影響を与える程の異常な水準に落ち込んでいるわけではなく、例えば、本上場している他の上場商品を含め、国内農産物先物取引のなかで最も高い水準を示すなど、安定的にご利用いただいているところでございます。

また、米穀の輸出を視野に入れる等、将来に目を向けますと、海外に先んじてジャポニカ米の価格発信機能を強化することをはじめ、コメ先物市場が国民経済に資する市場としてお役に立つためには、さらに取引を活性化することで市場機能の充実を図ることが求められるところです。

そのためには、潜在的なニーズを有する幅広い新たな市場参加者の掘り起こしを急ぐ必要があるものと認識しておりますが、特に市場流動性を提供することが期待される農業関係者はもとより、国内外の大手当業者や金融商品取引業者におかれましては、市場参加の要件として、本上場への移行が必要不可欠であるとされている旨を伺っております。

以上の点を踏まえ、本日、臨時会員総会の決議を経て、コメの先物取引を本上場に移行する旨の定款変更の認可申請を農林水産大臣に提出したところです。

なお、認可申請が認められた場合にあっては、本所として責任をもって市場振興及び適正な市場管理に努めることはもとより、市場参加者の利便性を最大限に高めることで、先物取引の市場機能を十分に発揮させ、より安心できる市場の実現に努力して参る所存です。

〈米麦日報 2019年7月17日付〉
米麦日報 2019年7月17日付