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もくじ

どんなクルマ?
駆動用バッテリーの変更でEV走行距離を30%延長
GTEのメカニカル面での変更はわずか
どんな感じ?
力強いモーターでEVモードでの運転が楽しい
ナビと連動する知的なプラグイン・ハイブリッド
運転支援システムもアップデート
「買い」か?
ハイブリッドシステムの向上で人気は堅調
スペック
フォルクスワーゲン・パサートGTEエステートのスペック

どんなクルマ?

駆動用バッテリーの変更でEV走行距離を30%延長

8代目となるフォルクスワーゲンパサートの影はすっかり薄くなってしまった。ファミリー層向けのSUV人気の高まりの中にあって、フォルクスワーゲンらしさはしっかり息づいている。忘れないでいてほしい。

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そんなパサートに息を吹き返させるべく、モデル中期のフェイスリフトが施された。ドイツヴォルフスブルクを拠点に置く巨大自動車メーカーは、環境負担軽減の関心が急速に高まる、社用車目的で用いられる市場でのシェア拡大も目論んでいる。

パサートGTEプラグインハイブリッドは昨年の夏に発売が休止されていたグレード。欧州での排気ガス規制要件の変更に伴い、充分な対応ができていなかったためだ。そして今回復活を果たしたGTEプラグインハイブリッドは、駆動用バッテリーのセル構成を変更することで容量を増やし、純EVとしてゼロエミッションで走行可能な距離が先代よりも30%も伸ばされた。加えていくつかの新しいドライビングモードも追加されている。

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もちろん、パサートに用意されている各グレードに施したアップデートと同じ内容も享受している。新しいタッチモニターを採用したインフォテインメント・システムがインストールされ、エクステリアデザインにも変更が加えられた。

GTEのメカニカル面での変更はわずか

ガソリンと電気を組み合わせた、ウルトラ・ローエミッション・モデルの販売を後押しするのが、約5%ほど安価になった価格。英国では、フェイスリフト前の販売で見ると、およそ10%がGTEプラグインハイブリッドだったが、フォルクスワーゲンはフェイスリフト後の割合を25%にまで増やしたいと考えている。

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英国で最も売れているパサートはディーゼルエンジンを搭載したグレードだが、フォルクスワーゲンによれば、フェイスリフト後も変わらずGTEより多くが売れると予想されている。理由は、パサートは会社が社員へ貸与するカンパニーカーとして人気であることが大きい。個人ユーザーの中にも依然としてディーゼル人気はかたいが、社用車でも傾向は同様なようだ。

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スタイリングの変更はひと目見てすぐ気づくレベルのものではない。その分、内面の更新に力が入れられている。今回のフェイスリフトで最大の進化と呼べるのが、2019年後半に登場予定の、新開発となる2.0ℓTDIエボと呼ばれる150psのディーゼルエンジン。アクティブ・シリンダー休止機能を備え、さらなる燃費向上を目指したユニットとなる。

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一方でGTEのメカニカル面での変更は、駆動用バッテリーを除いて大きくはない。フォルクスワーゲンによれば、従来までの1.4ℓ4気筒ターボエンジンを、新しい1.5ℓTSIエボエンジンに切り替えたとしても、現実的な燃費や環境負荷という部分では大きな違いはないのだという。

どんな感じ?

力強いモーターでEVモードでの運転が楽しい

そんなわけで、パサートGTEの概要は既にわれわれが知っている内容と大きな違いはない。もちろん、パサートとして最大の特徴でもある、実用性や快適性、ファミリーカーとしての賢明さなども、前年までと変わりはない。

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駆動用バッテリーの容量が9.9kWhから13kWhへと増やされた結果、EVとしての航続距離は従来と同等な条件で50kmから70kmへと伸びている。実際の環境なら、フル充電状態でも60kmには届かないと考えておいた方が良いとしても、エンジンを一切始動せずに80km/h位までの加速は楽にこなせる。EV状態で走らせてみると、116psのモーターの扱いは簡単でレスポンスも良く、運転が楽しい。

GTEというグレードがリリースされた当初、クルマを比較的活発に走らせると、エンジンが頻繁に掛かりノイズも小さくなかった。しかしフェイスリフト後は、GTEというグレード名と、実際のクルマとのマッチングは良好になったように思う。

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「E」という文字が使われているだけあってか、エクステリアもインテリアも、取り立ててスポーティなデザインが与えられているわけではない。乗り心地は柔らかく快適。他のパサートと同様に、穏やかで安楽なドライブを味わえる洗練性も向上した。

ドライビングモードを「GTE」にした時に得られる、ハイブリッドシステム全体での最高出力は218psで、最大トルク40.7kg-mと充分なもの。かなり力強く、クルマに期待する以上のドライビング体験を叶えている。また、開けた道での運転を楽しむには充分以上の、グリップ力やボディコントロール、機敏性を備えてもいる。

ナビと連動する知的なプラグイン・ハイブリッド

トランスミッションは6速のツインクラッチ・オートマティックで、マニュアルモードを選べば、ドライバーが積極的にパワートレインを操っている感覚も得られる。反面、ハンドリングのダイナミクスに限っては、ペースを早めたとしても、奥深さや夢中にさせてくれるような内容は備えていない。

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フォルクスワーゲンによる最新の設計のおかげで、大型化されたバッテリーは、軽量化された燃料タンクと一緒にホイールベースの間の低い位置に搭載された。だがGTEは前輪駆動でボディの割に車重もかさむから、ドライバーが喜ぶような説得力の高いハンドリングを獲得することは難しいのだろう。

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プラグインハイブリッドのパワートレインは、穏やかなドライビングモードを選択することで、燃費を最大に伸ばすように機能する。ナビゲーションシステムで目的地を設定した場合、ナビの地形データを利用し、バッテリーの残量を測り、モーターとエンジンとのベストミックスを自動的に判断してくれる。電気とガソリンの消費量を可能な限り高効率に活かし、目的地へと到着することが可能となる。

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知的なハイブリッドシステムだが、状況によってはバッテリー回生機能の動作が、不意に行われる点は気になってしまった。アクセルを離すと、エネルギーの回生が行われず惰性でスルスルと走行できる場面がある一方で、別の機会ではアクセルオフと同時に減速が始まり、バッテリーへ充電されることもある。この動作の判断のされ方が、ドライバーには正直わかりにくい。

またドライブモードを切り替えると、ブレーキペダルを踏み込んだ時の感覚が変化してしまうのも、改善を求めたい部分。ドライバビリティにも影響は少なくなく、フォルクスワーゲンらしくない設定だと思う。

運転支援システムもアップデート

その他、モデル中期のフェイスリフトで加えられた変更は、細かい部分に留まる。わかりやすいところでは、第3世代となる「MIB(モジュラー・インフォテインメント・マトリックス)」と呼ばれるタッチモニター式インフォテインメント・システムが採用されている。間もなく登場する新しいゴルフにも採用されるはずながら、わたしには第2世代と大きな違いを感じ取ることはできなかった。

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ステレオのボリューム調整やナビゲーション・マップのズーム用に物理的な操作スイッチはなく、運転支援システムやエンターテインメントのメニューを切り替えるのには、やや画面操作の手数が多い印象。だが、フォルクスワーゲンとしては、ナビゲーションシステムの機能性や使いやすさは向上したとしている。

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アダプティブ・クルーズコントロールやレーンキープ・アシスト機能もアップデートした。クルーズコントロールの方は、道路に設定された制限速度や交通の流れを自動的に判断してくれ、慣れるまでは少し奇妙な体験にも感じられるかもしれないが、とても機能的だ。

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レーンキープ・アシストは、従来までの車線の白線だけでなく、縁石や路肩の草地も、自車レーンの境界だと認識することが可能になった。ライバルメーカーと比較すると、アシスト量は少ないようで、場面やドライバーによっては、もっと積極的に介入してほしいと感じるひともいるかもしれない。

「買い」か?

ハイブリッドシステムの向上で人気は堅調

謙虚で知的で洗練され、車内も広く作りも良い。クルマとしての完成度の高さに加えて、運転支援システムやインフォテインメント・システムなども充実した。パサートは従来通り、ファミリーカーや普段使いのクルマとして着実に進歩を重ね、アンダーステイトメントな見られ方を好むドライバーにとっては、訴求力の高いモデルだといえる。

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もし、より楽しい運転をお望みなら、GTEグレードは選択肢からは外したほうが良いだろう。しかし限定的とはいえ、フェイスリフトによってEVとしての走行距離も伸び、パフォーマンスも向上している。日常的な利用でも、燃費の向上を充分に期待できる仕上がりを得た。加えて社用車として見た場合、節税効果も期待できる。英国での堅調な人気には、今後も続きそうだ。

フォルクスワーゲン・パサートGTEエステートのスペック


価格 3万7500ポンド(510万円・予想)
全長×全幅×全高 4773✕1832✕1477mm
最高速度 225km/h(予想)
0-100km/h加速 7.6秒
燃費
CO2排出量
乾燥重量 1750kg(予想)
パワートレイン 直列4気筒1395ccターボプラグインハイブリッド
使用燃料 ガソリン
最高出力 218ps/5000-6000rpm(総合)
最大トルク 40.7kg-m/1500-3500rpm(総合)
ギアボックス 6速デュアルクラッチ・オートマティック

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