パナソニック、ロフトワーク、カフェ・カンパニーが運営する100年先を豊かにするための実験区「100BANCH(ヒャクバンチ)」が、7月6日から14日まで『100BANCHナナナナ祭2019』を開催しています。
本記事では7月10日から3日間にわたって行われた「エモHackathon」の様子をお伝えします。「エモHackathon」とはエモ、つまり「感情が動かされた状態、感情が高まって強く訴えかける心の動き」を喚起する作品やサービスを作り上げるハッカソン(主にIT業界で行われる、短期集中で共同作業を行い、プログラムやサービスを開発するイベント)です。
- エモHackathon
■1日目:脱コモディティ化の突破口は、人を動かすエモさ
初日はチーム内での自己ニックネーム紹介からスタート。その後、ファシリテーターの羽渕彰博さん(株式会社オムスビ 代表取締役CEO)は、全体を前にご自身をニックネームで「ハブチン」と自己紹介し、「エモHackathon」の企画意図を説明しました。
現在、モノづくりの現場で正しさのコモディティ化が進み、製作時には機能や、過去データに基づいた必要性が製作動機になっています。でも、今の時代、周りはすでに便利なもので満たされており、モノづくりが次のステップへ行くためには、「人の心を動かす」エモさが必要だということが共有されました。
そして、ハブチンさんは、このハッカソン期間中「エモいとはなにか?」、「なぜエモさが必要なのか?」、「どうすればエモさをつくることができるのか?」の3つを追求してほしいと語りました。
「エモいとはなにか?」を一緒に考える
早速、チーム内でエモさを感じたサービスやプロダクトを紹介。「ペット型ロボット」、「ゲーム」、「食べ物」など参加者は思いつく限り、大量に付箋に書き、分類していきました。その後、分類したカテゴリーが、ユーザーにどのような体験や価値を提供しているのかをチーム内で検討。具体的な例から抽象度を上げた視点を得ることで、参加者たちは様々なエモさの方向性があることに気がついたようでした。
■河野未彩さんによるインプットトーク
100BANCHではじめて製品化にまで至った彩る影をデザインする照明器具RGB_Light考案者で、グラフィックデザイナーの河野未彩さんが登場。ハブチンさんの質問に答える形で、まさにエモさを体現したプロダクトRGB_Lightの制作秘話が語られました。
※RGB_Lightについて>>https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000063.000034018.html
RGB_Lightは、河野さんが学生時代、卒業制作として提出した「現象プロダクト」のうちの1作品。締め切りまで3日と日が迫るなか、河野さんがフェスに遊びに行くと、赤と緑の光線が交互に光る演出があり「2色の光が重なった一瞬、黄色が見えた」体験から着想を得て制作したもの。
フェスから帰った河野さんは、すぐに三叉ソケットのシーリングライトを購入。プラスティック製の留め具を外して、ソケットの向きを内側へと変え、赤・緑・青のカラーレフ球をつけて、プロトタイプをつくったそうです。
ハチブンさんは、さらに河野さんに「エモさを発見しプロダクトへ落とし込む」方法論を、「モノの見方」や「アイデアの出し方」の観点から伺いました。
アイデアについて、河野さん自身は自身のプロダクトを「現象プロダクト」と表現し、《普遍的な現象をプロダクトとして見せるもの》として考案したそうです。「現象は普遍的なもので、どの世代でも、どの国の人にでも通じるから、現象に注目した」と語りました。他にも「現象プロダクト」のアイデアで、光の角度や大気中の湿度によって出現する現象の虹を加湿器でつくるプロダクトなども考えたそうです。
さらに、どのような観点で日常を観察しているのか聞かれると、「『まっすぐにモノを見ること』と『斜めに見ること』を自分のなかで意図してスイッチングしながら生活している」と答えていました。
■シブヤの街で行動観察。エモい人を探してみよう
河野さんのお話が終わると、参加者はチーム名を決定し、それぞれが考えた「エモさの方向性」をまとめました。この方向性を携え、各チーム人間観察に渋谷の街に消えていきました。最終日にはそれぞれどのようなプロトタイプが出来上がっているのでしょうか。
2日目は朝9時開始。
アイデアの方向性をもとに、渋谷の街で行動観察をして気づいたことを、デザイン・機能面を合わせてプロトタイプに落とし込むため、頭と手をフル回転で動かして、参加者一同、作業に没頭。
この日は、テックメンターとして、DMM.make AKIBAで技術顧問として活躍する阿部潔さんにご協力いただきました。限られた時間に焦り出すメンバーは「こんな材料を使ってみたら?」「100円ショップに売っているよ」などの的確なアドバイスに助けられ、モノづくりに没頭していきました。
※エモハッカソンメンター陣
佐藤綾香さん(株式会社蔦屋家電エンタープライズ)
「自分たちのエモいプロダクトをどう人に伝えるのか。そのキーワードを突き詰めて考えてほしい。」
小川哲史さん(パナソニック株式会社 パナソニックプロダクト解析センター)
「人の感情がスタンダードな状態から、エモさでどこまで変化するのかを意識してプロダクトを考えてほしい。」
藤川恵美さん(パナソニック株式会社 アプライアンス社デザインセンター)
「人間が持つ五感。その感覚を研ぎ澄ませることでエモさを追求してほしい。」
中山智裕さん(パナソニック株式会社 経営企画部)
「最終プレゼンでは、やってきたことすべてを伝えがち。たくさん伝えたい気持ちを抑えて、そのプロダクトがどうエモいのか要点を絞って伝えることを意識してほしい。」
■3日目:最終日、各チームの「エモプロダクト」を発表!
泣いても笑っても最終日の7月12日。この日も朝から、老若男女入り混じり、チームごとにすごい熱気で作業が始まりました。午後2時からのプレゼンリハーサル中も、最後の追い込みを急ピッチで作業を行う参加者たち。
そしてプレゼン午後3 時。審査員が入場して緊張感が高まる中、各チームのプレゼンがスタート!
●プロテインになり隊「これが僕のやる気 ボタン」●
ワクワクを見える化を掲げ、ユーザーが使うことに寄って完成したり、その人の色に染まるようなものを追求したチーム。
●エモンゲリオン「新世紀エモンゲリオン パナ家電エモ計画」●
エモさの要素として「つながり」に注目したチーム。
●Emoh!「ほっとつり革」●
温度と色の関係に着目し、ひとの混雑や危険源を解消を目指したチーム。
●EMO-NAMO「EMO-AMP~空気を変える魔法のランプ~●
「酔い」に着目したチーム。
3日間のハッカソンも、当初はみな緊張して殻に閉じこもっていたが、次第に殻が破れ個性を出せるように。このような状態を短時間で実現できれば、エモさを拡張できるのではと想定。アルコールとアロマを組み合わせたものを、空気中に漂わせる装置で、箱の中に置かれた金のランプから、アロマミントとアルコールを調合した香りが広がる仕組みです。くだけた飲み会の雰囲気とも、オフィスの硬い雰囲気でもない、その中間にあるような新しい「開放感のある空間」を実現します。
●Emoma「録香(RockO) EMOMA」
記憶を喚起する匂いに着目したチーム。
●なる一族(*天国と地獄)
楽しく苦労しながら美味しいものを食べることに着目したチーム。
●オクトパス「ジャリのエモさでより快適な会議環境を」●
音と感情の関係という切り口で考えたチーム。
●おたじまスカンク「エモさんすい」●
快感や癖になるようなもの、触れば触るほど勤勉になるようなものを目指したチーム。
●ナナナナ7班「気持ちの更衣室」●
「ほっとする、リラックスする」をキーワードに環境づくりを目指したチーム。
●☆星のカービィ☆「オーロラ線香」●
オーロラがなぜ綺麗なのかを分析して、見れるように目指したチーム。
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以上、10チームのプレゼンを受け、審査員が協議を行い結果が発表されました。
※4名の審査員
江渡浩一郎さん(国立研究開発法人産業技術総合研究所 主任研究員/ニコニコ学会β交流協会 会長/メディアアーティスト)
坊垣佳奈さん(株式会社マクアケ 共同創業者・取締役)
岩佐琢磨さん(株式会社Shiftall 代表取締役CEO)
小川立夫さん(パナソニック株式会社 執行役員)
■最優秀賞はどのチームに? 審査結果発表と評価ポイント
★★オーディエンス賞:ナナナナ7班★★
ハッカソン参加者が自分たちのチーム以外で一番良いと思ったチームに投票し、得票数の多かったチームが表彰されました。
★★審査員特別賞:EMO-NAMO★★
★★審査員特別賞:オクトパス★★
★★審査員特別賞:Emoh!★★
★★★最優秀賞:おたじま スカンク★★★
■怒涛の3日感を終えて……
表彰が終わり、ファシリテーターのハブチンさんは「最初はドキドキ怖いという感じだったと思うのですが、こうして皆さんの顔を見ていると、安堵感やエモさを感じられたように思います。ここで終わるのではなく、ぜひ普段の仕事に活かしたり、副業で作ってみたりと、次の機会につなげていただければと思います」という言葉で3日間にわたる怒涛のエモHackathonを締めくくりました。
最後に全員で記念撮影をした後の様子を眺めていると、初日に比べると声の大きさも違い、関西弁での打ち解けた雰囲気の会話があちこちから聞こえ、賑やかに談笑する姿が印象的でした。エモHackathonに関わったすべての人が、エモさに浸っているように感じられる一幕でした。
- 未来をつくる実験区100BANCHとは
アクセス:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-27-1/JR渋谷駅新南口から徒歩約2分
配信元企業:100BANCH
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