世界経済に関する調査によると、中国による海外融資は20年あまりで、世界経済の1%から5%以上にまで急速に拡大した。さらに、途上国向け融資の半分程度は、世界銀行やIMFも把握していない、公式記録のない「隠れ負債」を抱えているという。

ドイツ拠点のシンクタンクキール研究所(Kiel Institute)は7月13日、中国経済について報告した。このなかで、2000~17年の間に、世界各国の対中債務は5000万ドルから5兆ドルまで膨れあがった。

キール研究所は、1949年から2017年にかけて、対中債務を持つ発展途上国50カ国の約2000件の融資と契約を調べ、報告書をまとめた。その結果、債務が国内総生産(GDP)に占める割合が2015年の1%未満から、2017年は15%以上に急増したことが分かった。

さらに、債務の半分は、国際通貨基金(IMF)、国際復興開発銀行(世界銀行)、主要債権国会議(パリクラブ)などに記録もされていない「隠れ借金」だと報告書は指摘した。

報告によると、「隠れ借金」はベネズエライランジンバブエなどの国々で特に「深刻」だという。またスリランカウクライナエクアドルバングラデシュおよびキューバなどでも、債務規模を把握できていないとしている。

報告作成者であるハーバード大学の債務専門家カルマン・レインハート(Carmen Reinhart)氏は、「中国は、今はIMFや世界銀行による融資をはるかに上回る世界最大の債権者」と例えた。

中国ソブリン債で 先進国も恩恵か

報告によると、中国融資の文書は不透明さや不確定要素が多く、原油のようなエネルギーの現物を担保にして返済を要求している場合も多い。

さらに「先進国など中高所得国は、中国銀行のソブリン債の購入を通じて、債務フローを受け取る傾向がある」とした。このため、多くの先進国は、中国が途上国に貸し付けた融資の「恩恵を受け取っている」という。

また「低所得の発展途上国は、たいてい中国国営銀行から直接融資を受けており、多くは市場金利で、石油などの担保で裏付けられている」と付け加えた。

融資の大部分は、中国開発銀行と中国輸出入銀行の2つの官製の政策銀行を通じて契約されている。報告によると、新興市場への中国系銀行の融資は推計で総額4分の1を占める。

中国共産党政府は、主導する現代版シルクロード構想・一帯一路で、中国から中央アジアアフリカ、欧州に至る広範囲で鉄道、道路、航路など大型インフラ計画を進めている。これらの計画は、当該国の財政規模の考慮に欠け、巨額債務を負わせることで、現地当局や第三者機関、大手メディアから「債務トラップ外交」と揶揄されている。

「中国の国際融資ブームは、国内の急速な経済成長の延長だが、これに加えて、中国政策の『グローバリゼーション』のためでもある」と、キール研究所グローバル・ガバナンス担当研究員クリストフ・トレベッシュ(Christoph Trebesch)氏は分析する。

2018年、世界銀行は、ベネズエラへの中国融資について「中国の海外融資のほとんどが中国国営企業を介して行われており、受益者も国営企業になっている」とした。その結果、債務を背負う国は、どれほどの借り入れになるのか、どのような条件なのかを把握しきれていないという。

世界銀行によると、中国の融資先は、ラオスカンボジアなどの中央および極東アジアの国々、ラテンアメリカの国々が多い。今後、東ヨーロッパへの貸付額が増加するとみている。

(翻訳編集・佐渡道世)

2019年4月、北京で開かれた一帯一路フォーラムの看板を組み立てる作業員。ドイツ拠点のシンクタンクの調べによると、対外中国債務は世界で10倍上昇している。石油など現物返済や記録なしの「隠れ債務」もあるという(GettyImages)