【インタビュー①】3年ぶりに古巣へ復帰した宇佐美 一番の決め手は…

 ガンバ大阪にあの男が帰ってきた。6月24日ドイツ1部アウクスブルクからFW宇佐美貴史が完全移籍で加入すると発表された。3年ぶりの古巣復帰で、最短で7月20日のアウェー・名古屋グランパス戦からの出場となる。ドイツでの戦いを終え、日本に帰国した宇佐美は何を思うのか。発表から間もない頃、大阪府吹田市の万博練習場で汗を流す宇佐美を直撃。全4回で宇佐美が思い描く現在、過去、未来をお届けする。第1回は「G大阪に懸ける思い」――。

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 3年ぶりの古巣はまた違った姿をしていた。2016年6月25日、移籍前のセレモニー。本拠地のピッチ中央でスポットライトを浴びた宇佐美はこう言った。「どんなにボロボロになっても頑張りたい。でも、いつかこのクラブで引退できればそれ以上に幸せなことはない。一番、やれるんじゃないか、という時に帰ってきたい」。あれからドイツへ渡り、アウクスブルクで1年、デュッセルドルフで2年過ごした。自身も変化したが、G大阪もまた姿を変えていた。

「まだ実感ないけどね、練習参加しているっていう感じ。知らん選手も多いし、若い選手多くなってちょっと自分に対して違和感。だって、すごい挨拶されるし! 『お疲れさまです』とか言われると、すごい違和感やね」

 27歳。サッカー選手として脂が乗った一番いい時期。宇佐美はなぜG大阪へ戻ってきたのか。一番の決め手は一体なんだったのか。

「一番の決め手……まあ欲を言えばもう少し、長く欧州でやっていたかったのは理想としてあった。そういうチャンスを自分自身で作っていけなかった。自分自身の力不足が招いた結果であることは大前提であって、プラスアルファとしては(G大阪に)長いスパンで『必要とされる状態で帰りたい』という思いがあった。一番必要とされる時、となると、“今”じゃないかなという。ヨボヨボになって帰ってくるつもりはなかったから。順位的にも今はちょっと上がったけど、俺が(移籍を)決めた時は下から二番目やった。ここから上げていけるかなという期待と自信と不安もあったし、必要とされる喜びもあった。全部重なって、決断しました」

過渡期にあるクラブで変化した自身の立場 「チームのことを考えて動ける選手に」

 16年の壮行セレモニーで宣言した通りの“帰還”。G大阪に復帰してから、気付いたことがある。現在、成長著しい東京五輪世代のMF高江麗央、MF福田湧矢、MF高宇洋など、“世代交代”とも言われ、ベテランとの“融合”を図るチームでは若手の存在感が増している。今こそクラブにとっては過渡期。宇佐美も立場を自問自答してみた。

「やっぱ(チームの雰囲気が)静か。めっちゃ静か。練習も黙々とやるし、いい意味で悪い意味でも。俺がいた時で言うと、スタンスは違うけど丹羽ちゃん(丹羽大輝/現・FC東京)と敬輔くん(岩下敬輔/現・サガン鳥栖)。丹羽ちゃんはポジティブなことを言って、敬輔くんは嫌なことも言って、締めるところは締める。ヤットさん(遠藤保仁)と今ちゃん(今野泰幸)は背中で見せて、たるんだら健太さん(長谷川健太監督/現・FC東京)が雷を落とす。バランスが良かった。今は、ツネさん(宮本恒靖監督)が締めているけど、監督だけじゃなくて、選手のなかでそういう存在が必要」

 2013年夏、当時J2だったチームにドイツから復帰。J1に昇格した翌14年には三冠を達成した。“チーム”を作り上げる過程で得た経験。強い“チーム”に必要なエッセンスを宇佐美は確かに感じた。だからこそ、自身に何が求められているかも理解できた。

「チームのことを考えて発言できる選手はやっぱ必要かなと思う。でも自分が(嫌われ役を)買って出たところで、その手の役割も素人やから。自分のやり方でやっていくしかない。ちょうど(年齢的に)上と下の間にいる存在やし、上も見ながら下も見ながらやれたら。でも、敬輔くん、長谷部さん(長谷部誠/現・フランクフルト)、ヤットさんみたいに、というのは違う。所詮、真似事になっちゃうし、自分が見てきたところ、経験してきたところが、そういう選手たちとまた全然違う。俺が長谷部さんとかチームのために思って行動できる選手のやり方を真似したって、勝ち目はない。だから、自分しかできひんチームの中での立ち振る舞いがあるはず、という風に感じている」

 そして自身が目指すリーダー像へと、話は及んでいく。物心ついた頃からG大阪のゴール裏で応援してきた宇佐美だからこそ、クラブを牽引していくために思い描く姿がある。

長谷部さん、(川島)永嗣さんとかは、チームを一つのものとして見ている。20人以上がどういう方向を向いてるか、背中を向いている選手がいたら正すし、ちょっと緩んでたら締めるし、締まりすぎててもあかんからちょっと緩める。その絶妙な配分でチームに対して関わっていく。ガンバではヤットさんという絶対的な経験値のある選手がいて、ヤットさんはそういうタイプじゃない。だからこそ、その下の選手が(引っ張る役割を)やれるチャンスがすごくある。ヤットさんはそういう選手が現われた時に正したり絶対しいひんから。そっと見守る優しい太い軸があるわけやから、チームのことを考えて動ける選手になりたい。年齢的にもそういうことを考えて振舞ってもいい年齢」

最短で7月20日名古屋戦で復帰 プレーのイメージは?

 下部組織時代から「天才」と呼ばれトップへ昇格した時、13年にドイツから復帰した時とはまた違う、新たに求められるリーダーとしての“自覚”。その覚悟はある。もちろんプレー面でも。実戦に向けて、プレーするイメージも膨らませている。

「移籍の段階では、今のシステム(3-5-2)なら前の2枚(2トップ)か、真ん中(中盤)の3枚と言われて、4-5-1ならウイングの右左や前という風に言われていた」

 順調にいけば、7月20日名古屋戦で復帰する。再び日本のファンの前に立った宇佐美は一体どういう姿を見せるのか。間違いなく、愛するクラブに全力を注ぐ姿がそこにはあるはずだ。(Football ZONE web編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)

3年ぶりの古巣復帰が発表されたFW宇佐美貴史【写真:Getty Images】