米ブルームバーグや米ザ・バージなどの報道によると、米アップルはポッドキャスト番組の独占配信を計画しており、そのための協議を複数のメディア企業と行っているという。

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オリジナルポッドキャストの独占配信

 アップルは同事業の新たな展開について明確な戦略を示しているわけではない。しかし、オリジナル番組制作に対する資金提供や独占配信権の取得など、これまでとは異なるメディア企業との関わり方を計画していると、事情に詳しい関係者は話している。

 同社がポッドキャストサービスを始めたのはiPhoneの初代機発売前の2005年だった。しかし、単にオーディオ番組の配信企業にプラットフォームを提供するだけで、同社は何ら収益を得ていない。そしてそのビジネスモデルは何年も大きな変化がないという。

 ただ、同社のサービスは50~70%のシェアを持っており、業界トップだ。そうした中、最近は音楽配信サービスで同社のライバルであるスウェーデンスポティファイSpotify)がポッドキャスト企業を買収したり、著名人と契約して番組制作を支援したり、オリジナル番組を配信したりしている。

 スポティファイは今年(2019年)6月、バラク・オバマ前米大統領とその妻ミッシェル・オバマ氏が運営するプロダクションと契約し、両氏のオリジナル番組を独占配信すると発表した。

 こうした施策が奏功し、スポティファイはアップルに次ぐ規模のポッドキャスト利用者を抱える企業になったとブルームバーグは伝えている。

広告収入、毎年65%の伸びで推移

 米国のインターネット広告業界団体インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー(IAB)によると、同国のポッドキャスト番組配信企業の2018年における広告収入は合計で4億7900万ドル(約520億円)だった。音楽配信や動画配信と比較し、依然規模が小さいという。しかし、市場は過去3年間、毎年65%の伸び率で推移しており急成長中。利用者数は過去5年間で2倍になった。

 こうした市場動向の変化に伴い、「IHeartMedia」「Stitcher」「Pandora」などのインターネットラジオ企業もこのメディアに注目し、資金を投じるようになった。

Macに専用ソフト「ポッドキャスト」

 アップルは今秋開始する新たな動画配信サービスApple TV+」に向けて、数十のオリジナル動画作品を制作している。また今秋リリーする予定のパソコン用OSでは、従来提供していたエンターテインメント・ソフトウエア「iTunes」を廃止し、各機能を新たな3つのソフトウエア「ミュージック」「TV」「ポッドキャスト」に振り分ける。

 サービスを拡充するとともに、それぞれの特徴を明確に打ち出し、利用者の拡大を図る狙いがあるようだ。アップルには広告部門がある。同部門は現在「App Store」で配信するアプリを対象に事業展開している。しかし今後、ポッドキャストの利用者数が増えれば、こちらにも広告を導入する可能性があるとブルームバーグは伝えている。

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