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Saucy Dog企画による対バンツアー「One-Step Tour」の2日目公演が7月14日に愛知・DIAMOND HALLで開催された。

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バンドのステップアップを図るべく、04 Limited Sazabys、クリープハイプ、SUPER BEAVERというリスペクトする先輩バンドを迎え、東名阪で対バンライブを展開中のSaucy Dog。愛知公演ではクリープハイプをゲストに迎えてのツーマンライブを行った。

先陣を切ったクリープハイプは、まず長谷川カオナシ(B)、小川幸慈(G)、小泉拓(Dr)が定位置に付き、ゆったりとしたリズムの「5%」の演奏を始める。尾崎世界観(Vo, G)は、曲中にゆっくりと姿を見せると、同曲を優しく歌い上げ、ステージ前方に立ち最後はマイクを使わずに「ありがとう」とオーディエンスに感謝の気持ちを伝えた。改めて「こんばんは。楽しみにしてました」と話した尾崎は「鬼」で「津田沼」を「名古屋」に変えて歌うなどしつつ、場内の熱気を高めていく。長谷川は「リハーサルで(Saucy Dogの秋澤和貴に)ベースを貸したらめっちゃうまくて、貸さなきゃよかったと思いました(笑)。ベースソロから始まる曲をやらせていただきます」とユーモアを交えて語り、長谷川の切なげな歌声が印象的な「火まつり」を届けた。クリープハイプは終始リラックスした様子でパフォーマンスを展開。尾崎は「Saucy Dogさん、今日はありがとうございます。気を遣わないでください。こっちも気を遣わないので(笑)」とコメントしてから、Saucy Dogの楽曲「コンタクトケース」をアカペラでサプライズ披露。「サビも歌っていい?」とワンクッション置いてから、ギター弾き語りでサビを歌い、オーディエンスを喜ばせた。ライブ終盤には人気曲「HE IS MINE」でおなじみの合唱が起こり、会場は大盛り上がり。尾崎は「今日は本当にありがとうございます。このあともっといいライブがあると思うんで楽しみにしておいてください。おじさんたちはきれいに散って帰ります」と話し、ラストに疾走感と哀愁が入り混じった「栞」をエモーショナルに届け、ステージをあとにした。

Saucy Dogは「真昼の月」で勢いよくライブをスタートさせ、「Saucy Dog始めます!」と高らかに宣言。石原慎也(Vo, G)はときに笑顔でフロアを見渡しながら歌声を届け、場内の一体感を高めていく。バンドは秋澤和貴(B)のベースソロを織り交ぜた「ナイトクロージング」などでフロアを軽やかなムードで盛り上げた。せとゆいか(Dr, Cho)が改めてツアー来場者への感謝を伝え、「この『One Step Tour』というツアータイトルにはワンステップもツーステップも前を歩いている先輩を迎えて、私たちも成長しようという気持ちが込められていて。今日はクリープハイプSaucy Dogとのツーマンライブなのでワンステップ超えられるようにがんばります」と意気込んだ。またライブ後半のMCでは石原が「クリープハイプがいなかったら、Saucy Dogはできていないんです」と発言し、続けてせとが意気揚々と話し始める。せとは大学時代にクリープハイプコピーバンドを組んでいたが、大学中退後にアパレルに就職。生活環境に変化があってもコピバンは継続して続けていたという。アパレルの店舗閉店により路頭に迷っていたとき、コピバンの練習をしていたスタジオで、石原と出会うきっかけになる人物と知り合ったと説明。「クリープハイプは私が今バンドをやっているきっかけです。エモくないですか? しかも当時コピバンをしていた先輩が今日のライブを観に来てくれてるんです。エモくない?」とMCを続け、「まさか(クリープハイプに)出てもらえると思わなかったので、本当に感謝しています」と喜びと感謝をしっかりと言葉にして伝えた。

せとが思いの丈を伝えたあと、石原はクリープハイプへのお礼とばかりに彼らの「オレンジ」を弾き語りで歌い、「(『コンタクトケース』カバーを)やられたもんで、やり返そうかなと思ってやりましたー」と笑顔を見せた。さらにライブ後半には「“本家”、歌います」と一言述べてから石原は先ほど尾崎によってサプライズ披露された「コンタクトケース」を演奏。憂いのある歌声が力強く伸びやかに響き、場内は感動的なムードで包まれた。クリープハイプとオーディエンスに向けて、愛のこもった演奏を届けたSaucy Dog。石原は「幸せです。本当にありがとうございます」と胸いっぱいの思いを吐露し、ライブを締めくくった。ツアーファイナル7月25日に東京・Zepp DiverCity TOKYOでゲストにSUPER BEAVERを迎えて行われる。

なおそれぞれのライブ終了後、クリープハイプの尾崎とSaucy Dogの石原が音楽ナタリーのコメント取材に応じてくれた。尾崎はSaucy Dogとの競演について「実は何回か誘っていただいてたんですけど、好きなバンドなので嫌われたくない気持ちもあって今回オファーを受けました(笑)。ライブをやってみたら(クリープハイプを観ることが)初めてのお客さんも多いんだろうなという印象で新鮮なリアクションでしたね。静かなときもあったけど、興味がないというわけではなくてしっかり『どんなものなんだろう?』と興味を持って観てくれている空気感が伝わってきたので、こちらも緊張感がありつつ肩の力が抜けるような瞬間もあって、面白いライブでした」と振り返り、サプライズで披露した「コンタクトケース」については「Bメロをアカペラで歌ったらキー設定を間違えてしまって、サビのキーがわからなくなってしまいました(笑)。個人的に好きな曲だったので歌いました」とコメント。Saucy Dogに向けては「彼らは聴かせることもできるし、勢いを叩きつけるような曲もあって、どっちにもいける今のシーンでは貴重なバンドだと思います。自分たちもそういうところにいられたらいいなと思っているので、お互いがんばって、またこういう機会があったらうれしいです」と述べた。一方石原は「クリープハイプのライブが終わった時点で満足してしまったくらい、お客さん目線で楽しんでしまいました。まさか『コンタクトケース』を歌ってくれるとは事前に聞いていなかったのでびっくりしました! ……自分の曲を自分よりもっと上の先輩が歌ってくれて、自分の歌が“本家”になるなんて」と感慨深く話し、「実はめちゃめちゃ緊張しました。緊張を見せないようにできるだけ堂々としてましたけど」とステージに立ったときの心境を振り返る。さらに石原がクリープハイプの「オレンジ」を弾き語りでカバーしたのは、尾崎によるSaucy Dogカバーを受けて急遽決めたことだと明かし、「いやあライブって本当に“ナマもの”だなあと思いました」と笑顔で語った。

Saucy Dog ツーマンツアー「One-Step Tour」(※終了分は割愛)

2019年7月25日(木)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
<出演者>
Saucy Dog / SUPER BEAVER

Saucy Dogとクリープハイプの集合写真。(撮影:白石達也)