― 連載「佐藤優のインテリジェンス人生相談」―
外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

◆口だけ達者な野党に不満がある!

★相談者★やっかみ男(ペンネーム) 会社員 男性 56歳

 今年4月に行われた統一地方選、我が街でも県議選、市議選がありました。私は両方とも自民党候補に一票を投じました。入れたい人はおらず、野党は言っていることと行っていることに乖離が見られ、不毛の選択というのが本音です。野党は批判の口は達者ですが、そればかりで具体案を唱えません。

 この体質は何ともしがたいものです。国民のためというより、一サラリーマンのように保身に汲々と徹し、とにかく議員バッジを手放したくないとの魂胆が見え隠れしているのは明白です。こんな感じで2大政党制をとのお題目は有権者をあまりにも舐めてバカにしているのではないでしょうか? 政治屋に血税をかすめ取られている気持ちです。

佐藤優の回答

 私も現在の野党は頼りないと思います。自民党と同様に「全体の代表」になろうとするからです。政党を英語で「ポリティカル・パーティ」と言いますが、「パート」が部分を表すように、政党とは社会の一部の利益を代表する結社です。それが、公明党共産党以外は、全体を代表する「権力党」の発想です。その結果、選挙は単なる権力闘争になってしまいます。

 国民は積極的に自民党を支持しているのではないと思います。政権交代が起きると大混乱が生じる可能性があるので、消極的に自民党を支持しているのです。自民党の場合、地方議員は自分の後援会をつくっています。国会議員では自前の後援会を持っていない人が多いです。

 選挙は、地方議員の後援会と公明党の支持母体である創価学会に依存しているというのが実態です。こういう国会議員のメンタリティは、サラリーマンに近いです。一方、政治家は落選したときのことが怖いので、歳費をため込む傾向があります。野党でも、自前の後援会を持っている人は少なく、大多数は連合(労働組合)の組織票をあてにしています。地方議員の場合は、風頼みの人も多いです。

 現在、野党に必要なのは、はっきりした政治哲学です。国民民主党立憲民主党の両党の政治家から頼りにされている井手英策・慶應義塾大学大学院教授がこんな指摘をしています。

◆政党には理念を明確に提示してほしい

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 野党とは政府に属さない在野の党をさす。であれば、政府とはちがう政策を示してはじめて野党は野党たりえる。政府の主張に反対するだけでは野党とは言えない。

 リベラルは自由で公正、そして人びとが連帯する社会をめざす。自由で公正で、連帯する社会をめざすことに、右や左、政党や立場のちがいは関係ない。そして、僕たちは「恩讐の彼方」で出会い、立ちあがったのだ

(『リベラルは死なない――将来不安を解決する設計図』8頁)
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 井手氏の場合は、大幅な増税を行う代わりに、教育や医療、住宅の社会保障を強化する「オールフォーオール」という理念を打ち出します。もっとも、自民党公明党にも井手氏と同様の考えを持つ人はいます。対して、政府はできるだけ小さく、国民の税負担を軽くするが、給付も行わないほうがいいと考える新自由主義者がいます。自民党小泉純一郎政権のとき、新自由主義的政策を推進しました。

 理想的には、理念を共有する人が同じ政党に結集すればいいのですが、現実にはそうなりません。日本の文化に、政党政治を嫌う体質が埋め込まれているからと私は見ています。仮に政権交代が起きても、新たな与党はしばらくすれば自民党と同じ「全体の代表」を標榜する権力党になります。政党に過度な期待を持てない現状から、政権が優位に立つファシズムが生まれてくる危険があります。この危険を排除するためにも、政党には理念を明確に提示してほしいです。

★今週の教訓……国民は消極的に自民党を支持している

佐藤優
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数