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AUTOCAR JAPAN sponsored by アルファ ロメオ
text:Tomoyuki Shimada(嶋田智之)
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)

もくじ

QUADRIFOGLIOとは
シヴォッチの幸運のお守り 現代に
試乗 ジュリア・クアドリフォリオ
スリルが堪らない新世代
試乗 ステルヴィオ・クアドリフォリオ
ほとんどスポーツカー

QUADRIFOGLIOとは

四つ葉のクローバーを意味するイタリア語の “クアドリフォリオ” という言葉は、アルファ ロメオを知る者にとっては一際重要な意味合いを持っている。

一般的な幸運のシンボルということだけに留まらず、モーターレーシングの世界で数々の伝説を築き上げてきた歴史とそこに注ぎ込んできた情熱の象徴であり、そしてプロダクションモデルとしては特別なアルファ ロメオであることの証でもあるからだ。

アルファ ロメオのクアドリフォリオにまつわる物語は、1923年に始まった。豊かな経験と速さを持ちながら、不運に見舞われて大きなレースでは勝ちを逃してきたワークスドライバー、ウーゴ・シヴォッチが、白地に緑色の四つ葉のクローバーをあしらったマークをマシンに描き込んで、タルガ・フローリオに出場したのだ。そして過酷なレースの終盤に2位を走っていたシヴォッチはゴール直前にほんの僅かな運に恵まれ、総合優勝を手に入れることになった。

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以来、クアドリフォリオは幸運のシンボルとして、ドライバーとマシンを守る護符として、アルファ ロメオのレーシングカーにあしらわれることになった。グランプリマシンによる世界戦で初勝利したときも、ル・マン24時間レースで4連勝したときも、F1グランプリの開催初年度に全勝を果たしたときも、スポーツカーの世界選手権でタイトルを獲得したときも、クアドリフォリオは常に一緒だった。

1960年代からは、レース出場のためのホモロゲーションモデルや高性能バージョン、スペシャルな限定生産車など、特別な市販車にもクアドリフォリオが刻まれることになった。現在のジュリアとステルヴィオのクアドリフォリオは、その末裔なのだ。

シヴォッチの幸運のお守り 現代に

新世代の “クアドリフォリオ” はあくまでもプロダクションモデルではあるけれど、開発にあたっては、おそらく8Cコンペティツィオーネのようなスペチアーレ(=スペシャルモデル)辺りよりも手間とコストがかかってるかも知れない。

4ドア・セダンジュリアアルファ ロメオ初のSUVであるステルヴィオは、ほぼ並行して開発が進められた姉妹といえるモデルであり、現在はその2車が市販モデルの柱となっているわけだが、いずれも最初にクアドリフォリオありきで作られているかのようなのだ。

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エンジンやプラットフォームが完全な新設計なのは他のグレードも同じといえば同じなのだが、こちらはエンジンがだいぶ特殊だし、空力にしても電子デバイス系にしても軽量素材の使い方にしてもシャシーのセットアップにしても駆動系の組み方にしても、ゼロからスタートして徹底的に練り込んで作り上げた感があちこちから漂っている。一昨年の秋にジュリア・クアドリフォリオを初めて走らせたときの衝撃は、なかなか忘れ難いほどのものだった。

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あれから何度もステアリングを握ったが、こうしてあらためて対峙しても、ジュリアのクアドリフォリオは相も変わらず素晴らしい。フェラーリから移籍したエンジニアがカリフォルニアTの3.9ℓV8ツインターボをベースに設計したと思しき2.9ℓV6ツインターボは、510psに61.2kg-m。スロットルを踏み込むと、さすがのパワーとトルクである。

試乗 ジュリア・クアドリフォリオ

スタビリティコントロールとトラクションコントロールが完全に解除されることから公道で使うことは推奨されていない “レース” モードでは、時として3速でもタイヤのグリップがおぼつかなくなるほどだ。

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3000回転を超えた辺りからサウンドが澄んできて次第にオクターブが高まり、心の中に甘い官能の香りが漂ってもくるのだが、うっかりすると次の瞬間にリアタイヤのグリップを失っていたりもする。力の漲り方が凄まじい。

甘く危険な香り、というフレーズを聞いたことがあるけれど、まさに、である。ほどほどのところで制御を入れてくれる “ダイナミック” モードでも速さにそれほどの遜色はないから、普段はこちらのモードをオススメすべきだろう。

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まるでスーパーカーを走らせてるような錯覚に陥りそうなほど強烈な加速感、予想をしっかり超える目覚ましいばかりの速度の伸び。素晴らしく刺激的だ。現行のスポーツセダンの中に、ここまでの速さとこれほどまでの気持ちよさを併せ持ったモデルは他に存在するだろうか? と思わされてしまう。それでいて “ナチュラル” モードや省燃費系の “アドバンスエフィシェンシー” モードで高速道路を穏やかにクルージングしようとすれば、その乗り心地には荒さも粗さもなければ変に突っ張ったりするような硬い印象もなく、望外に快適なのだから恐れ入る。

そして何より印象的なのは、持ち前のビビッドなハンドリングだ。

スリルが堪らない新世代

ステアリングギア比は並みのスポーツカーを軽々凌駕する12対1。スッと切り込んでいった瞬間、全く遊びのようなものを感じさせることなく、ノーズは驚くほどの勢いでインを刺そうとする。

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初めて走らせたときにはその鋭さに面食らわされたが、慣れてくると、その先の領域にあるドライバーの意志を敏感に酌み取ってクルマの身のこなしへと繋げてくれるフィールが気持ちよくて堪らなくなってくる。モードによってはコーナリング中にアクセル操作ひとつで簡単にリアタイヤのグリップを放棄させることができるわけだが、デリケートに探るようにペダル操作をしていくと、後ろがスパッと弾け飛ぶのではなく、意外やコントローラブルであることが次第に判ってくる。

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それでもやっぱり500psオーバーの後輪駆動に切れ味鋭く正確なステアリングの組み合わせというのは相当にスリリングで、スポーツドライビング志向の強いドライバーにとってはかなり攻略しがいがある存在だ。走りのテイストは、めちゃめちゃ濃厚なのである。

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一方のステルヴィオ・クアドリフォリオはどうなのかといえば、ほとんど背の高いジュリア・クアドリフォリオ、といった印象だ。目線の高さを除けばSUVを走らせてるという感覚はあまりなく、何だかスポーツカーを走らせているような気にすらなる。

試乗 ステルヴィオ・クアドリフォリオ

エンジンのフィールは全くといっていいくらいジュリア・クアドリフォリオと同じ。車重が200kgほど重いから、較べればほんの僅かだけ加速は緩やかになっているように思えるが、そうはいってもそもそも510psに61.2kg-mもあるのだ。じれったさを感じることはない。

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静止状態からのフル加速では、後輪がグリップを失いそうになると前輪にも駆動を送る電子制御4WDシステムが効くせいか、派手なホイールスピンを演じることもなく、グーッとリアを沈めながら猛烈な勢いで風景を手繰り寄せていく。少なくともSUVの中では最速級であることは間違いない。

ワインディングロードでも、やっぱり面白い。ジュリアと全く同じステアリングギア比が生み出す、抜群の切れ味を見せる俊敏さ。それが次々と襲ってくるのだ。次のコーナーに到達するまでの速度の伸びが素晴らしくいいからブレーキングもハードめになりがち。

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けれどその際も引き締まった脚が巧みに沈み込んで姿勢を整えてくれて、鋭く気持ちよく曲がってくれる。ジュリアと違うのはここから先で、仮に後輪が滑ったとしても、抜群に反応のいい正確なステアリングに加えて瞬時にクルマを引っ張ろうとする前輪の働きで、物怖じとは無縁の状態でコーナーをクリアできてしまうのだ。

ほとんどスポーツカー

そこまでハードに走らずとも、マラネロ由来の現代のエンジンとしては相当にうっとりできる快音に耳をくすぐられながら、あらゆる道を走り抜けることができるわけだ。クルマと常に情を交わしていたいドライバーに、これほど相応しいSUVは他にないだろう。……というか、これは本当にSUVなんだろうか?

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こうした “バカっ速” 系のセダンSUVドイツが牽引してきたわけだが、ジュリアとステルヴィオのクアドリフォリオには、ドイツ御三家のドスの効いた感じとは異なる軽やかで美しいハーモニーがある。得られる感覚は全く違うのに、得られるスピードはおそらく上回っている。アルファ ロメオは全く違う精神的アプローチで、その高みに登ったのだ。

ALFA ROMEO STELVIO QUADRIFOGLIO

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価格:1167万円
エンジン形式:2891ccV6ツインターボ
最高出力:510ps/6500rpm
最大トルク:61.2kg-m/2500rpm
変速機:8段オートマティック/四輪駆動
車両重量:1910kg
全長×全幅×全高:4700×1955×1680mm
ホイールベース:2820mm
最高速度:283km/h(欧州参考値)
0-100km/h加速:3.8秒(欧州参考値)

ALFA ROMEO GIULIA QUADRIFOGLIO

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価格:1132万円
エンジン形式:2891ccV6ツインターボ
最高出力:510ps/6500rpm
最大トルク:61.2kg-m/2550rpm
変速機:8段オートマティック/後輪駆動
車両重量:1710kg
全長×全幅×全高:4635×1865×1435mm
ホイールベース:2820mm
最高速度:307km/h(欧州参考値)
0-100km/h加速:3.9秒(欧州参考値)


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