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Mystic Art Design from Pixabay

 イギリスに存在する環円陣状に並んだ直立巨石「ストーンヘンジ」は未だなお、多くの謎を残したままだ。紀元前2500年から紀元前2000年に作られたと考えられているが、誰が、いったい何のために作ったのか?そんな大昔にどのようにこれらの巨石を持ち運んだのか?

 現代の技術が、少しずつその謎に迫りつつある。

 最近発表された研究によると、ストーンヘンジのあの巨大な石は、ブタの脂であるラードを荷ぞりのワックス代わりに使って、所定の位置まで運んだ可能性があるという。

 これは、イギリスニューカッスル大学の考古学者たちによる新たな分析によって導き出された仮説だ。

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陶器のかけらから見つかった動物の脂の残りカス

 ストーンヘンジ近くにあるダーリントン・ウォールズで見つかった陶器のかけらに動物の脂の残留物がついていた。

 これは、古代の巨石建造物をつくるのにイギリス中から集められた多くの人々が食べていたものと関係があると、長いことみなされてきた。

 しかし、ニューカッスル大の考古学者たちによる新たな分析から、陶器のかけらは、食事に使う皿のようなものではなく、バケツのような形をした大きなものの破片だったことがわかった。つまり、これは獣脂を集めてとっておくために使われた容器ではないかというのだ。

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Pixabay

 同大の景観考古学の上級講師、リサ=マリー・シリトー博士は言う。

陶器のかけらに、驚くほどたくさんの脂が残っていたことは、非常に興味深いことでした。なぜ、こんなにたくさんのラードが陶器に残っていたのか、さらに知りたくなりました。

現場から発掘されたおびただしいブタの骨から、これらのブタが鍋の中で料理するために解体されたのではなく、串焼きにされていることがわかったからです

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Karin Henseler from Pixabay

巨石を運ぶ荷ぞりにラードが使用されたという仮説

 ストーンヘンジの巨石群は、人力で運ばれたことがわかっている。最近の実験から、石は高さ8メートル、重さ2トンもあり、20人で荷ぞりの上に石を乗せて、丸太の上の滑らせて運んだ可能性があることがわかった。

 ダーリントン・ウォールズの陶器は、有機物の残滓を調べるのにもっともよく研究されている遺物で、300以上のかけらは、イギリスで使われた溝のついた陶器の幅広い研究の一部として分析されている。最近では、シリトー博士が関わるストーンヘンジの食餌研究プロジェクトもそうだ。

 陶器の溝などに浸みこんだ脂の残滓(ざんし:残りカス)を分析するのは、さまざまな陶器がどの食べ物を入れるために使われたのかをつきとめるための通常のやり方だ。

 しかし、そこから得られた情報をどう解釈するかにもっと注意を払う必要があると、シリトー博士は主張する。

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Pixabay

ストーンヘンジの建設には、まだまだ答えの出ない疑問がたくさんあります。これまで、陶器に残されたラードの痕跡は、料理や食べ物の消費のみに関係があると考えられてきて、最初にこう解釈されたことで、あくまでも用途は食べ物だという思い込みにつながったのです。

でも、ほかの解釈もあるかもしれません。この残留物が、脂を塗った荷ぞり説の証拠かもしれないという考えは、なかなか捨てがたいものがあるのです。

陶器に残された残留物の考古学的解釈は、全体像の一部を与えてくれているにすぎないのかもしれません。

わたしたちがほかに知っている幅広い情報の前後関係について考えてみる必要があり、もっと理解を深めたいと思うなら、ほかの可能性があるかどうか見極めるために、多様な柔軟性のあるアプローチをするべきでしょう


 今年4月には、現代の遺伝子解析を駆使した結果、ストーンヘンジを作ったその先祖は、トルコからイギリスへやってきた移民だった可能性が示唆された。

 今後もストーンヘンジの謎は少しずつ解き明かされていくのかもしれない。

References:Stonehenge may have been built using lard/ written by konohazuku / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52277123.html
 

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