同じ思いはさせるまい。

 現役最年長関取、西十両11枚目の安美錦(40)が16日、現役引退を表明した。名古屋2日目の8日、竜虎(21)との一番で古傷の右膝を負傷して休場。再出場はかなわず、来場所、幕下陥落が確実となっての決断だった。

レジェンドが引退の理由を語る


 膝に爆弾を抱え「ケガがなければ大関になっていた」と言われ続けてきた。歴代1位の関取在位117場所。多彩な技を繰り出し、軽妙なトークでも人気を集めたレジェンドが、引退の理由を語る。

 「これまでケガをして治療をして、もう1回、もう1回と思ってきたけど、初めて今後のことを考えた。出てケガをしたらどうするんだとか、今まで思ったこともないことを思った。気持ち的に、初めて出る選択肢以外のことを考えた。勝負師として一線を引く時なのかなと思った。残念な部分もあるけど、いつこうなってもいいように、やることはやってきた。全部受け止めて出した結果なので、何の悔いもありません」

竜虎がケガをさせて落ち込んでいる

 むしろ気がかりだったのは、最後の相手となった竜虎がケガをさせて落ち込んでいると聞いたことだ。安美錦は、親方らを通じて竜虎にLINEライン)でメッセージを送った。

 「気にするなと伝えてほしい。いい相撲だったぞ。自信をもって相撲をとれ」

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貴乃花から金星→引退

 苦い経験がある。いまから16年前。03年初場所、24歳・安美錦が、初顔合わせの横綱貴乃花から金星を挙げた。翌日、貴乃花は引退を発表。日本中が大騒動になった。

 「大変なことをしちゃったと。(横綱の最後の相手で)勝った人はみんな強くなったと言われて…。勝手にプレッシャーを感じていた。自分で自分のことを縛っていた」

 以来『平成の大横綱に引導を渡した男』という事実に、長く苦しんできた。呪縛から解放されたのは、つい数年前。貴乃花親方がテレビ番組で、現役最後の相撲を「あの一番は(自分が)ケガをしていてもしていなくても同じ結果だった」と話していたのを見て、安美錦はようやく肩の荷が下りたという。

 引退を発表した日、安美錦はこう話した。

 「最後の相手が竜虎でよかった。投げたと思ったけど、投げきれない。向こうの方が上だった。いい若手とできてよかった。自分も大横綱(貴乃花)からバトンをもらって、若い人にバトンタッチできて終われたのはうれしい」

 『重い荷物』は背負わなくていい。後輩の心を救う最後の務めも果たし、思い残すことなく土俵を去った。

◆主な横綱の現役最後の相手【→その後の最高位】

稀勢の里2019年)前頭1・栃煌山【→関脇】

日馬富士2017年)前頭1・貴景勝【→大関】

朝青龍2010年)横綱・白鵬

武蔵丸2003年)前頭2・土佐ノ海【→関脇】

貴乃花2003年)前頭4・安美錦【→関脇】

三代目若乃花2000年)関脇・栃東【→大関】

※曙(2000年)横綱・武蔵丸

旭富士(1992年)前頭1・若花田【→横綱】

北勝海1992年)前頭3・久島海【→前頭1】

大乃国1991年)小結・安芸ノ島【→関脇】

千代の富士1991年)小結・貴闘力【→関脇】

双羽黒1987年)横綱・千代の富士

隆の里(1986年)関脇・保志【→横綱】

※勝敗は曙が武蔵丸に勝った以外、引退した横綱が黒星

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

安美錦が現役引退を表明『平成の大横綱に引導を渡した男』、主な横綱の現役最後の相手一覧