今年2月、スペイン北朝鮮大使館に数人の男が押し入った襲撃事件で、米当局は7月9日、実行犯の1人として逮捕された元アメリカ海兵隊員で韓国系アメリカ人クリストファー・アン氏を保釈すると発表した。

 「保釈金は130万ドル(1億4000万円)で、病院や教会を除いて自宅に軟禁されるということです。米捜査当局は、自由朝鮮のリーダーで襲撃事件の主犯格、米国在住・メキシコ国籍のエイドリアン・ホン容疑者については行方を追っています」(国際ジャーナリスト)

 主犯が指名手配と聞くと、自由朝鮮と米当局が対立しているように見えるが、自由朝鮮は、金ファミリー流の正当性でいえば、金正恩委員長より主流である金正男氏の息子、金漢率(ハンソル)氏を、北朝鮮の暗殺から救ったという点に注目しなければならない。

 「台湾から米国に連れ出したのは、米中央情報局(CIA)であることから、自由朝鮮はスペイン北朝鮮大使館の情報を渡した米連邦捜査局(FBI)よりCIAの関与がより深いのではないでしょうか。そしてもう1つは、米国がスムーズに彼を保護できたのは、中国サイドの了解も取り付けているフシがある点も要注目です」(同・ジャーナリスト)

 米紙ウォールストリートジャーナルは6月10日、関係筋の話として、正男氏がCIAの情報提供者だったと伝えていることからも自由朝鮮−CIAラインが浮かんでくる。

 自由朝鮮リーダーのホン氏は09年、自由朝鮮臨時政府の首席就任を脱北者の中で最高位の黄長燁(ファンジャンヨプ)元党書記に断られ、次に白羽の矢を立てたのが正男氏だった。その正男氏は17年2月に暗殺された。

 「正男氏も首席就任を断ったといわれますが、ホン氏と接触したことが北朝鮮の知るところとなって殺されてしまったのではないでしょうか。米紙ワシントンポスト記者のファイフィールド氏の著書『グレート・サクセッサー(偉大な後継者)』には、正男氏がシンガポールマレーシアCIAの担当者と会っており、生前最後にマレーシアを訪問した際に防犯カメラが捉えた映像には、同氏が米情報機関職員とされるアジア系の男性とホテルエレベーターの中にいる姿があったと記されています」(同)

 アン氏の保釈で米捜査当局は、今後もCIAの傭兵として自由朝鮮を温存する意図があるのかどうか注目される。