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 思っていたよりも世話が面倒だったという理由で、すぐにペットを手放す飼い主は未だ多く、施設に捨てられたペットは心に大きな傷を負うことになる。

 アメリカのテキサス州で、犬の世話が面倒になった一家が、近くの保護施設に1匹のブルー・レーシーを捨てた。全てを奪われた犬に残されたのは、たった1つの大きなクマのぬいぐるみのみ。

 犬はそのぬいぐるみに身を寄せながら、慣れない施設での恐怖をなんとかしのごうとしていた。

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部屋の隅にクマのぬいぐるみを抱えてうずくまるベラ

 昨年、テキサス州に住むある一家が、保護施設に1匹の犬を持ち込んだ。ブルー・レーシーという犬種で、ベラと名付けられたその犬はまだ1歳。

 その一家は、気まぐれで飼ったものの、マイクロチップの埋め込みや卵巣摘出手術、日々の散歩などが面倒に感じたのだろう。たった数か月で放棄されることになったのだ。

 ブルー・レーシーは、もともとテキサス州で生まれた優秀な牧牛犬で、頭が良く万能な能力を備えているいわば職業犬だ。

 本来の犬の能力を十分に発揮する機会もないまま捨てられたベラは、家も愛情も失って心に深い傷を負い、収容スペースの都合上、いつか安楽死を強いられるかもしれない犬たちが過ごす騒々しい施設で恐怖に怯えていた。

 唯一の救いは、飼い主がベラと一緒に置いて行った大きなクマのぬいぐるみが一緒だったことだ。だった。

 ベラは、部屋の隅にテディベアを抱きかかえるようにしてうずくまり、施設スタッフの誰にもなつこうとはしなかった。

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ベラに救いの手が差し伸べられるも、まだ恐怖が止まらない


 その頃、ニューヨークを拠点に犬の救済活動に尽力している動物福祉支持者のジェニファー・ジェサップさんは、フロリダ州に住む兄のジムさんから「ブルー・レーシーを飼いたいので、施設をあたってみてくれないか」という依頼を受けた。

 ジェニファーさんは、早速テキサス州ダラスで活動する救済団体「TAGG Rescue」に連絡し、同州の保護施設にベラがいるのを見つけた。

 テキサス州に住む友人に、ベラを施設から出すように頼んだジェニファーさん。安楽死させられるまでの時間を思うと、猶予がないことも知っていた。

 友人はベラをテディベアとともに施設から寄宿舎へと移動させ、獣医による治療や書類の手続きなど全てを済ませてくれた。

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 その後、フロリダ州に行くまでの間、ベラは一時的に仮里親のもとへ預けられることになった。

 施設から出て、仮里親の元に預けられても、ベラの心には恐怖しかなく、仮里親にもなかなか心を開くことはなかったようだ。

 体を小さく丸め、いつもクマのぬいぐるみの側に寄り添っていたという。

心に傷を負った動物の姿を見て考えさせられること

 やがてベラは、フロリダ州へと移動した。ベラを見るなり気に入ったジムさんは、旅で疲れ切ったベラの心をほぐそうと1日かけて側にいてやり、ベラが慣れるように懸命に尽くした。

 しかし、臆病なベラはジムさんの家でも部屋の隅に座り、ジムさんがおやつのビスケットを口元に差し出しても食べようとしない。不安と恐れが混じったベラの姿は、なんとも心が痛む。

Jennifer Jessupさんの投稿 2018年6月13日水曜日

 ゆっくりと焦らず、ベラの心の殻を破ってやりたいと思ったジムさん。ビスケットを床に置くと、ようやくベラは食べた。

 ベラにとってこの1年は、まさに天国と地獄を経験したようなものだったのだろう。深く傷ついた心が癒えるには時間がかかる。

 ペットを飼うにあたっては、飼い主がきちんと責任を持つことがいかに大切かということを、このベラのストーリーは伝えているといっていいだろう。

References: written by Scarlet / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52277078.html
 

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