発売後即重版の「救世主監督 片野坂知宏」の3刷が決定した。
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好調な売れ行きを見せている本書をよりディープに堪能するための、3つのトリビアを著者のひぐらしひなつ氏に紹介していただいた。


救世主監督 片野坂知宏』にまつわる3つのトリビア
  1. 書きはじめた当初のタイトルは『地上最大の作戦』だった
  2. スポ根マンガのような本を書きたい!という野心は達成できたのか
  3. Jリーグサポーターの共通言語を駆使し“適度な内輪感”を醸し出す

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2019年6月1日わたしの書いたサッカー本としては4冊目となる『救世主監督 片野坂知宏』が発売になりました。タイトルのとおり、大分トリニータを率いる片野坂知宏監督とそのチームを描いた一冊です。今回は、この本にまつわる3つの裏話を明かしてみたいと思います。


●書きはじめた当初のタイトルは『地上最大の作戦』だった
昨年7月に出した前作のタイトル『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』は、かの有名なスタンリー・キューブリック監督の映画『博士の異常な愛情-または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb)のパロディーです。そのスピンオフ企画的な要素もあった本作もパロディー路線を踏襲する方向で、当初は第2次世界大戦におけるノルマンディー上陸作戦を描いた『史上最大の作戦』(The Longest Day)に由来して『地上最大の作戦』としようかと考えていました。

片野坂監督は、コンセプトにそったチーム戦術をベースに、試合ごとに細やかな相手対策を施します。しかしサッカー監督の仕事はそこで終わりではありません。ボード上で組み立てた戦術をトレーニングを通じてピッチ上に落とし込み、さらには実戦で相手チームと駆け引きしながらその策を遂行して勝利を目指すまでがミッションです。

プレーヤーの技量や性格、その日のコンディションなどによって監督の思いどおりにはなかなか動かないし、ピッチコンディションや相手チームとの関係の中で、想定外の事態が発生することもあります。

その作業は非常に難儀なのですが、これこそがサッカー監督の最大の腕の見せどころでしょう。実際のゲームは盤上ではなくピッチで繰り広げられるものです。そんな理由から、この本の原稿には『地上最大の作戦』という仮題をつけて書き進めたのでした。
▲前著「監督の異常な愛情」(左)に続きパロディー路線で作られた「地上最大の作戦」のカバーサンプル




















●スポ根マンガのような本を書きたい!という野心は達成できたのか
何よりも重視したのは、読者をワクワクさせる躍動感でした。読みながら試合を見ているような気分になれる臨場感と昂揚感を醸し出したかった。また、そうやって文章による“試合観戦”を楽しむうちに、自ずと片野坂監督のサッカーに対する戦術面での理解も深まっている、という欲張りな仕掛けも盛り込もうとトライしました。

そのためにイメージしたのがスポ根マンガです。名作『キャプテン翼』に代表されるスポ根マンガには、奇想天外なものも含めていろんな技が登場します。

このキャッチーさをもって片野坂監督や対戦相手の指揮官たちの繰り出す作戦を伝えられないものだろうか、というところで「秘技・猫じゃらし」や「戦術・伊佐」といった“必殺技名”を勝手につけました。マンガと違って視覚的説明ができないので、なるべくベタでシンプルな技名にすることが大事です。
▲キャッチーさは見出しに如実に表れる。担当編集者が作ったPOPはどこかで見たことがあるような・・・・
もうひとつのポイントは“キャラ立ち”。サッカーチームは元々はひとりひとりの集団であり、個別にスポットをあててみればそれぞれにドラマティックな日々を生きている。その群像劇が大きなひとつの物語を織り成していくようにと、主人公の片野坂監督をはじめ選手たちや相手チームの監督の人物像をややデフォルメ気味に描くことで、個々のキャラを際立たせるよう努めました。

ノンフィクションでありながら、フィクションストーリーのように物語性豊かでエンタメ要素に富んだ読みものに仕立てたい。スポ根マンガというよりはTVのバラエティー番組の中の再現ドラマ的になった気もしつつ、あらためて高橋陽一先生の偉大さを思い知るばかりであります

Jリーグサポーターの共通言語を駆使し“適度な内輪感”を醸し出す
Jリーグサポーターには、シャレのわかる、ノリのいい方々が多く、様々なムーブメントが自然発生的に湧き起こります。『監督の異常な愛情』でも取り上げさせていただいたアビスパ福岡サポのHIRORINさん発祥「反町さん見てる」ハッシュタグとか、ファジアーノ岡山サポによる「桃太郎チャント」とか、かつて横浜F・マリノスサポと大分トリニータサポの間でかわされていた「ダンマク合戦」とか、例を挙げれば「ああー、あったあった!」と手を叩きたくなるような案件が目白押し。誰が仕掛けるわけでもなく「Jのある日常」の中で培われてきた、これぞオリジナルサッカー文化に他なりません。
▲本書でも言及されている、「誰かの作った片野坂監督のヒートマップ」がものすごい勢いでSNSで拡散された

SNSの普及にともなって文化は拡散・浸透力を増し、Jリーグサポーターたちは従来以上に“共通言語”を持つようになりました。この言語を駆使することによって同じクラスタとしての親近感が生じ、事象を共有できる喜びも味わうことができます。“内輪感”のもたらす盛り上がりの強度はなかなかのものです。

この“内輪感”を適度に醸し出すことができれば、“内輪予備軍”的な人たちを、より内側へと誘う引力も持つ。そんな力も借りるかたちで、本書にはJリーグファンサポーターだからこそ受信できるジンクススラングを、ふんだんに盛り込みました。

以上、本書にまつわる3つの裏話をつらつらと書きました。別にこんなことは意識する必要もなく楽しんで読んでいただければいいのですが、書き手側からの工房的な種明かしをすることで、よりディープに堪能していただくのも著者にとっての幸甚と思い、したためた次第です。

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大分トリニータサポーターでなくてもJリーグクラスタであれば楽しめること必至の本書、電子版の配信もスタートした。リーグ最低予算、最低総年俸ながら上位に食い込む健闘みせる大分トリニータの試合をより楽しく観戦するためにも必読の1冊である。

配信元企業:株式会社 内外出版社

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