自転車競技の古豪として全国的に知られ、今年は17人の部員(マネージャー1人含む)のうち6人がインターハイ出場を決めた川越工業高校自転車競技部。最高時速60km以上になるハイスピード、頭脳を使ったじりじりとした駆け引き、一瞬でライバルを抜き去る目まぐるしい展開と見どころ満載の競技です。昨年に続いてインターハイ出場の小鷹昴君(3年)と、アジア選手権大会で銅メダルに輝き、インターハイでは2連覇を狙う飯田風音さん(3年)に自分自身の強みや、大会にかける思いを伺いました。

練習量×頭脳的トレーニングで圧倒的な強さを生む

―― 練習がある日のスケジュールを教えてください。

小鷹:16時から19時まで、学校から15km以上離れたところにある物見山で練習をしています。1周13kmほどの8の字周回コースを3周走ったりするなど、合計で70~80kmくらい走ります。木曜は室内練習でエアロバイクや3点ローラーを使って体幹やバランス感覚を鍛えるトレーニングをします。月曜日は休みです。

飯田:私は家から学校までの約17kmを自転車で通っていて、遅刻しそうなときは必死でこいでいます。それもトレーニングになります(笑)。土日は競輪場での終日練習で150kmくらい走ります。他校の自転車競技部の人たちと合同で練習することも多く、よい刺激になります。

―― 普段のトレーニングや練習で意識的に行っていることはありますか?

小鷹:ペダルをこぐときは、どの筋肉を使っているかを意識しています。また、最高速度が時速60km近いスピードになる自転車競技は体幹の強さが必要です。体がぶれることなくペダルに力をしっかり伝えるためにも、体幹を鍛えることを心がけています。室内練習では、瞬発力を鍛えるためにエアロバイクの負荷を高めに設定しています。

飯田:練習に付き合ってくれる父(現役競輪選手の飯田威文さん)と、筋肉の使い方について話し合いながらトレーニングをしています。納得しながら取り組めるので、理解が深まります。


―― 自分自身の強みや、ここは負けない!という部分があれば教えてください。

小鷹:瞬発力です。相手の後ろを辛抱強くついていき、瞬発力を生かして一瞬の隙をついて抜き去るのが得意です。中学時代にサッカーで培った持久力も生きていると思います。

飯田:小鷹くんは、間を抜いていくのがうまいんです。接触のリスクもあるけれど、失敗しないのがすごいと思います。
私はテクニックに自信があります。相手から「やりづらい」と思われるような走りを意識しています。横で動きを見ながら、少しずつレースを仕掛けて自分のペースにもっていくテクニックが強みです。

憧れの存在が近くにいる。そのことが力になる

―― 監督や仲間などからかけてもらって印象に残っている言葉はありますか?

小鷹:指導者から言われた「疲れてからが練習」という言葉です。それからは「疲れた」と感じてからの練習を大切にするようになりました。
昨年のインターハイでは3年生の先輩2人とチームスプリントに出場して3位に入賞したのですが、先輩方から「スタートを切るときは上半身の使い方がポイント」と言われたことも心に残っています。

飯田:私は「練習は試合のように、試合は練習のように」という言葉です。試合になると練習通りに走れないことがあるのですが、「練習のときこそ試合のように真剣に緊張感を持って取り組んで、逆に試合のときは変に気負わないで挑むといい」と父から言われ、そのように心がけています。


―― 目標としている選手は誰ですか?

小鷹:今、競輪養成所で訓練を行っている太田龍希さんと山田雄大さんです。昨年、一緒にチームスプリントに出場した先輩なのですが、2人ともスプリント力、ダッシュの力がずば抜けていて憧れます。そういう先輩たちと一緒に練習をして、大会に出られたことは大きな誇りです。

飯田:私は父です。自転車競技選手は、先行を得意とする人と終盤で加速をつけて勝ちにいくのが好きな人といるのですが、父はどちらもできる選手。レース展開によって柔軟に対応していくところがすごいな、と尊敬し、目標にしています。

インターハイでは入賞、そして一番高い表彰台を目指す

―― 高校卒業後の目標を教えてください。

小鷹:自動車整備士になるのが夢なので、自転車競技は引退し、卒業後は自動車整備が学べる学校に進学する予定です。

飯田:競輪学校に入って、プロの競輪選手になるのが目標です。将来的には世界的なスポーツの大会にも出場したいです。


―― インターハイへの意気込みを教えてください。

小鷹:ケイリンとチームスプリントに出場します。ケイリンでは、自分から仕掛け、先行逃げ切りで勝ちにいき入賞を狙います。チームスプリントでは、3人の息を合わせることが重要なので、よく話し合いながら準備しています。学校総合でも上位に食い込みたいです。

飯田:ケイリンロードレースに出場します。目指すは共に優勝。昨年もケイリンでは優勝をしているので、2連覇を目指します。女子の自転車競技は九州の学校が強いので、インターハイになると関東大会との力の差を感じます。試合では、テクニックを生かして勝ちたいです。自転車競技は精神状態が結果に大きく影響するので、スタート前は試合展開をイメージしてしっかり集中し、一番高い表彰台を目指します。



体の大きい選手の方がパワー面で有利と言われる自転車競技。身長170cmの小鷹君と153cmの飯田さん、決して大きくない2人を中心とした川越工業高校のメンバーは、頭脳を生かしてどうレースを展開していくのでしょう? 結果はもちろん、試合運びにも大いに注目です。

profile埼玉県立川越工業高等学校 自転車競技部
小鷹昴(3年)、飯田風音(3年)