「なぜ愛子さまは天皇になれないのか」という国民の素朴な疑問が表出した――皇室アンケート・所功氏コメント から続く

 新天皇即位に伴って、皇位継承資格者は僅か3人になった令和時代の皇室。現在の皇室典範は、皇位を男性だけで継いでいく「男系男子」による継承を定めているが、将来的に皇統の危機を迎えかねない。そこで文春オンラインでは、皇位継承についてのアンケートを行った。

 結果は、「『女系天皇』を認めるべき」が23.4%、「『女性天皇』を認めるべき」が38.5%。この2つを足した6割以上が「男系男子」以外の継承を容認すると回答した。

 また「『女性宮家』を認めるべき」を選択したのは4.5%。事実上、男系男子存続を支持する「『旧宮家の皇籍復帰』を認めるべき」は21.1%だった。

 このアンケート結果について、有識者に見解を聞いた。

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岡野弘彦氏(歌人・元宮内庁御用掛)

 神話の時代、男性より女性の方が神々の声に近い「聖」なる存在でした。最高神を天照大神と信じ、女性が天皇になっても何もおかしくない時代は長かったと思います。

 日本の天皇家の伝統、あるいは歴史を見ると、最高位の神様である伊勢神宮の御祭神の天照大神は、女性の神様です。古事記に出てくる日本という国の成り立ちも、まずに女性が「あなにやし、えをとこを(ああ、なんとすばらしい男性でしょう)」と言って、それに答える形で男性が「あなにやし、えをとめを(ああ、なんとすばらしい女性だろう)」と返事をすることからはじまっている。

 世界の神話やシャーマニズムをみても、女性が男性よりも先に神の啓示を聞くという類の話は多い。女性が神の意志を身体に受け入れて表現する力は、普遍的なものかもしれません。

 日本の文化伝統の根底には、「日本女性の強さと優しさ」がある。私の実家は30代以上続く伊勢の村の神主の家ですが、祖先を祀るのにも一番細やかなところは母や女性たちがつとめていました。

 そういう古くから伝わる女性の細やかな思いを、後世に伝えているのが和歌の世界です。もちろん日本の男性にも優れた歌人はいますが、より生活に密着した言葉の使い方、詩の美しさは女性の方にも多くみられると思います。

男尊女卑的なものの考えは、日本の古来からの伝統ではない

 私は宮内庁御用掛として24年間、皇室の方々の和歌の御相談役をしてきました。長くかかわった美智子さま、雅子さま、紀宮さま達の和歌をみても、感覚の深さ、聡明さに感服いたします。言葉の使い方が見事であるのはもちろん、伝統的な心の奥行きが深いのを実感します。

 ひとたび戦争になれば、社会が男性優位になるかもしれません。それでも戦時中、夫や息子が戦死した女性たちの歌を、私の師、折口信夫は評価しました。その歌には、ふくよかで優しい、大いなる母性がにじみ出ていた。さらに戦争による死者の魂のために祈る、深い心がこめられ、「日本女性の強さと優しさ」が表れていました。

 男尊女卑的なものの考えは、日本の古来からの伝統ではありません。世界的な風潮として、男性中心の社会が当然という機運があって、それが影響した。とりわけ日本の近代は、日清戦争日露戦争太平洋戦争と、男社会が、より強烈に効果を上げる武器を使った闘争に巻き込まれた。近代ヨーロッパが戦争で領土を拡大していった影響を受けた、最近の思想だと思います。

 日本の良さは、男性と女性のどちらが優位かなど、単純に決めないこと。女性優位・男性優位にとらわれない歴史と考えていいのです。

(「週刊文春」編集部/週刊文春

今年の歌会始 宮内庁提供