AV女優として人気を博した麻生希さんは現在、覚せい剤取締法違反の罪で、ある地方の刑務所で服役している。

保釈中の2018年11月、都内のシンポジウムに登壇した彼女は、かつての所属事務所によって約3カ月も監禁されて、ドッグフードで飢えをしのいでいたこと、家の外で「火を付けるぞ」と脅されたことなど、壮絶な体験を告白した。

これに先立つ2017年10月には、ツイッターに「なんでこんなに嫌がらせされるの。。やめて」と、ワケありげな投稿をしたこともある。彼女は今、どんなことを考えているのだろうか。彼女の刑事裁判を取材していたことから、ずっと気になっていた。

このほど、そんな彼女と面会することができた。(ライター・玖保樹鈴)

●「現役時代から15キロ痩せた」

約3畳ほどの狭い面会室に、彼女は淡いオレンジ色の作業着に身を包んで現れた。もともとスレンダーな体型だったが、以前よりさらに細く見える。現役のころから15キロも体重が減ったそうだ。顔はやつれた印象があるものの、体調は良いといい、声にも張りがあった。

2018年2月、当時の交際男性と一緒に、覚せい剤約57グラム(1000回分)を所持し、使用した疑いで逮捕されて、翌3月に起訴された。2018年11月、懲役1年8カ月(うち4カ月は保護観察付きの執行猶予2年)の実刑判決を受けた。刑務所の生活はどうなのか。

「見える場所に時計がないから、何時に寝て、何時に起きているかわかりません。でも、だいたい夜9時ぐらいに寝て、朝4時ぐらいに起きてるんじゃないかと思います。これまで力仕事をしたことはなかったけれど、やっていることは辛くありません。ずいぶん痩せてしまったけれど、太ると膝が痛くなるので、太らないように気を付けています」

刑務所では、受刑者の食事の運搬や配膳を担当しているという。カレーやお菓子など、日々の献立は充実していて、元号が変わった今年5月1日には、赤飯も出たという。

●「ずっと吸っていたタバコのことすら忘れている」

面会前に受け取っていた手紙には、「全然なれません。刑務所は本当に孤独でさみしい場所です」とあったので、孤立しているのではないかと心配していた。しかし、アクリル板越しに向き合って話す彼女は、とくに不満を口にしなかった。

「所内は、空調が効いているから、暑さや寒さを感じないし、独居房に収容されているので、夜はきちんと眠れています。一緒に作業している他の受刑者たちとの関係も良いです。(この面会の)翌月には、類があがることにもなっています」

刑務所のルールで、類があがると、1カ月に面会できる回数や手紙を送れる回数が増える。とはいえ、余暇時間に、刑務所内のテレビで「カフェ特集」などを見てしまうと、外の世界が恋しくなることもあるそうだ。

「出所したら、そのカフェでお茶しよう」

私がそう言うと、彼女の表情は少し明るくなった。こちらもようやく緊張が解けた気がする。2016年、彼女は別のコカイン事件で有罪判決(懲役1年6カ月・執行猶予3年)を受けていた。今回は執行猶予中の犯行で、出所は早くても来年末以降となるという。出所後は元の仕事に戻りたいのだろうか。

「もう人前に出ることに疲れたから、現時点で復帰は考えていません。まずは、薬物と完全に手を切るために、しっかり治療をしたいと思っています。保護観察中は療養施設に入るつもり。今は以前ずっと吸っていたタバコのことすら忘れています」

しかし、それでも知人経由で、ストリップ出演の誘いが来ることもあるという。

●書籍以外は、専用売店の商品しか差し入れることができない

お互いの他愛のない話をしているうちに、約30分の面会時間はあっさりと終了した。

差し入れを買うために、刑務所外にある専用売店に向かった。リクエストをたずねたところ、彼女は「ちり紙と、3Bの鉛筆と鉛筆削りがほしい」と言った。

ちり紙は1カ月に購入できる枚数が決まっているが、トイレットペーパーも兼ねているため、その枚数が不足しがちなのだという。

頼まれた物とともに、ニベアクリーム(花王)を差し入れることにした。良い香りのアロマクリームや、オーガニックコスメなどをわたせたなら、きっと喜んでくれただろう。しかし、書籍以外は、専用売店の商品しか差し入れることができないのだ。

専用売店には、基礎化粧品が一切置かれていない。「受刑者はスキンケアをすべてニベアでまかなう」と聞いたことがあった。売店で買ったものは、出前形式で、収容者のもとに届けられることになっている。

●「逮捕されたときは妊娠4カ月、拘置所で死産した」

刑務所から帰宅したあと、彼女に「今の状況を記事にして良いなら、メッセージがほしい」という内容を書いた手紙を送った。すぐに長文の返信が届いた。次のような内容だった。(一部抜粋、表記ママ、改行は編集部による)

「薬物はとても重い罪で多くの方を悲しませてしまいました。自分自身もっと大きな人間になりたいとも思っています。自分自身やってしまった事の罪を考え毎日受刑生活を送っています。

とにかく沢山の方々にあやまりたいです。本当に申し訳ない気持ちと、こんなに沢山の人をうらぎってしまって出てからどう暮そう?私はこの先どうなるのかな?とか先がまっくらになって考えてしまう事もあります。

自分がどうあるべきか全く考えもせず、薬物のかいらくにおぼれてしまい毎日すごしていました。何で使用したかは、仕事のプレッシャーと前の事務所とのいざこざでげんじつとうひをしたかったから……そのじきがつらすぎて沢山かくせいざいを使用して死んでしまえたらと考えた事もあります。

逮捕されたとき、体重42K、にんしん4カ月でした。7カ月の時に死産いたしました。(横浜拘置所で)もう死産して1年以上たっています。

体調は十分もどりました。心も少しずつ入れかわれる事が出来 物事にたいしてしんちょうに考える様になれたのは、今の工場、担当の先生のおかげです。つらい時は話を聞いてくれて、はっきり物事を言ってくれます。

ここは刑務所何があってもがまんしなさいと強く言われた事がありました。だからガマンします。けっかとおまわしのやさしい言葉よりはっきりとそういわれた方が気持ちがらくだし、刑務所だからガマンするのはあたりまえなんです。あたりまえの事が出来なければ社会に出た時もっと大変なんです。

まだまだ刑期は長いけど、これから先も自分自身かんだいな人間になれる様同じあやまちはもうくりかえしたくない。誰もうらぎりたくもない。心からそう思います。誰もうらぎりたくないし、もうつらい時間もすごしたくないから深く深く思います……。

先生にめぐまれて受刑生活をまじめに送れています。周りの人にも毎日感謝してすごしています。人は1人では本当に何も出来ないと思いました。

ここを出てからは不安も沢山あります。。むしろ外に出た時の方が大変かもしれません。不安はそっちの方が大きいかもしれません。。。。でもとにかくがんばるしかないです。何に対してもまけずにがんばって生活していきます」

●薬物を断ち切るには周囲の手厚いサポートも必要だ

厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課によると、覚せい剤事犯における2016年度の再犯率は「64.9%」にのぼっている。実に、7割近くが再犯で検挙されているのだ。麻生さんもやはり再犯で服役している。

薬物を断ち切るには、本人の意思だけではなく、周囲の手厚いサポートも必要だ。はたして出所後の彼女に、適切な支援の手は届くのか。それ以前に本人が、薬物の誘惑を完全に断ち切ることができるのか。

彼女から受け取った言葉からは、服役生活を受け入れる覚悟と未来への不安、そして何より変わりたいという強い気持ちがにじみ出ているように感じられた。

刑務所の生活は、自由がなく、窮屈だと思うが、薬物とは強制的に距離ができる。初犯のころとは環境も違う。ある意味、この先どう生きていきたいかを自分自身に問う、絶好の機会と言える。今は、彼女の言葉を信じたいと思う。

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