詳細画像はこちら

もくじ

どんなクルマ?
新しいモジュラーCMF-Bプラットフォームを採用
先代の流れを汲むエクステリアデザイン
当初はガソリン3種にディーゼル1種
どんな感じ?
ライバルを凌駕する群を抜いたインテリア
物足りないエンジンとステアリングフィール
セグメント上にも匹敵する乗り心地
「買い」か?
スーパーミニの金脈としての素地
スペック
ルノー・クリオTCe100のスペック

どんなクルマ?

新しいモジュラーCMF-Bプラットフォームを採用

見慣れたエクステリアにも感じられるが、それは気のせいに過ぎない。第5世代となるルノークリオ(日本名:ルーテシア)は、まったく新しく生まれ変わった。今まで目にしたことがないであろう、プラットフォームに至るまで。

詳細画像はこちら

窓の形状は先代と似通っているが、窓ガラス自体は新しくなっているし、すべてのボディパネル、ヘッドライトやシフトノブ、ステアリングも新しくなっている。ホワイトボディは22kgも先代から軽量になった。サブフレームも一新され、サスペンションも形状は似通ってはいるが新しい。もちろん、エンジンも刷新されている。

詳細画像はこちら

チーフエンジニアのジャイルス・ムラートも話していたが、ルノー社内では歴史の長いクルマながら、全面的な進化を遂げている。複数のモデルのベースとなるモジュラーCMF-Bプラットフォームを採用しているだけでなく、ルノーのモデルラインナップすべてへ展開していく基軸的なクルマがクリオなのだ。先代よりも車両サイズは若干小さくなっているが、車内空間は大きくなっており、利便性は上がっている。

詳細画像はこちら

確かに発表時は話題になるが、その後長く脚光を浴び続けるようなクルマではない。だとしても、欧州でみた場合、最も数が多く売れているコンパクトカーでもあるのがルノークリオ。ちなみにフォルクスワーゲン・ポロが販売数2位で、フォード・フィエスタが3位となる。

先代の流れを汲むエクステリアデザイン

既にニュースでご紹介している通り、ハイブリッドにも対応し、このクラスではライバルを凌ぐ運転支援システムも採用。運動神経が自慢のフォード・フィエスタと、洗練された落ち着きが魅力のフォルクスワーゲン・ポロとの間を埋める良いとこ取りを狙うのがクリオだといえる。スーパーミニと呼ばれるA・Bセグメントの金脈であり、新しいプラットフォームが担う役割は大きい。

詳細画像はこちら

ルノーとしては、パフォーマンスに加えてインテリアの質感の向上も目指したとしている。シャシー性能とは別の課題でもあり、かなり様々な思いが込められているクルマだということがわかる。反面、ルノーとしては珍しく、エクステリアデザインに関しては、今回はあまり大きな話題にはしていない。

詳細画像はこちら

ルノーによれば、先代クリオが売れていた大きな理由は、そのアピアランスにあったと分析している。2014年の発表以来、毎年のように販売台数の増加が続いたという。オランダ出身のデザインディレクター、ローレンス・ヴァン・デン・アッカーへのルノーからの要望は多くはなかったのだろう。先代のクリオを手がけるまではブランド・アイデンティティの構築に関わっていたローレンスだが、野心は大きくなかったようで、先代からのブラッシュアップという雰囲気だ。

しかし、明確に新しくはなっている。フロントグリルは近年の傾向通り大きくなり、メガーヌ譲りのLEDアイラインが入った。ボンネットには2本のプレスラインが入り、フロントバンパーのデザインも一新している。大きな驚きはないけれど。

詳細画像はこちら

サイドウインドウはクロームメッキのモールで縁取られ、華やかな装いに。ドアパネル周りのボリュームを少し絞り込むことで、抑揚のあるフェンダーラインを生み出している。リアバンパー下部には黒いプラスティックパネルが埋め込まれ、軽快さを演出。過度な装飾は控えつつ、スタイリッシュにまとまっている。スポーティでもあり、熟成されたようにも感じられる。今回のクルマはバレンシア・オレンジという鮮やかなボディカラーで、ポルトガルの太陽の下では一層若々しく映る。

当初はガソリン3種にディーゼル1種

エンジンのラインナップは比較的シンプル。エントリーグレードのSCe75には自然吸気の1.0ℓ3気筒ユニットが積まれ、最高出力は72ps。より人気が高いと思われるグレードがTCe100で、今回の試乗車。1.0ℓ3気筒ユニットをターボ過給し、100psを発生させる。トップグレードとなるのがTCe130で、1.3ℓ4気筒ターボユニットにダイレクト・インジェクションが組み合わされる。他のルノー・モデルにも採用されているエンジンだ。TCe130のトランスミッションは7速デュアルクラッチ・オートマティックの1択で、0-100km/h加速で10秒を切れる唯一のグレードとなる。

詳細画像はこちら

追って、メガーヌに搭載されている1.8ℓ4気筒ターボユニットをデチューンしたルノー・スポール・グレードも登場するだろう。ディーゼルエンジンは人気が低迷していることもあり、用意されるのは85psを発生させる1.5ℓユニットのみで、トランスミッションは5速マニュアルとなる。クルージング時には31.8km/ℓという、優れた燃費を誇る。

詳細画像はこちら

また、2020年までにはEテックと呼ばれるハイブリッドグレードも登場予定。1.6ℓのガソリンエンジンに2基のモーターが組み合わされる。都市部での利用なら、燃費はガソリンエンジン・グレードの倍近くに向上するという。

詳細画像はこちら

新しいクリオは実用性も高い。Bセグメントでのトップクラスだったポロの351ℓを大きく凌ぐ、391ℓを確保している。フロントシートの背もたれはスリムになり、リアシート前のレッグスペースを26mmも稼ぎ出している。写真撮影に同行したカメラマンのルック・レイシーによれば、ヘッドルームジャガーXEよりも広いという。

それでは、走りの進化はいかほどだろうか。

どんな感じ?

ライバルを凌駕する群を抜いたインテリア

アピアランスの面で先代から大きく進化したことがはっきり分かるのは、インテリアデザイン。いかにも安っぽい素材は、もはや目に見える箇所や、手で普段触れるような部分からは姿を消した。先代から大きく飛躍し、ソフト加工された素材で覆われている。硬質なプラスティックを探したら、アウディR8のものに似ているシフトノブの下の方、台座部分に残っていた。

詳細画像はこちら

デザイン処理はプレミアム感さえある。ダッシュボードの中央、エアベントが配された部分のくぼみはアウディのようだが、ルノーはそこに鮮やかな色でラテンの個性を出している。インテリアのカラーや素材の選択肢はやや過剰に思えるほど複数が用意されている。

実際に触れた時の印象も良い。試乗車に備わっていたレザー巻きのステアリングホイールは、少なくともクラスの中では上位に入る触り心地の良さだし、エアバッグの収納設計を見直したおかげで、センターパッドが小さくなり、リムとスポークの間からはデジタル・インスツルメントが非常に見やすい。パワーウインドウのスイッチや9.3インチのインフォテインメント・システム・モニターに配されたスイッチ類のタッチも高級感がある。

詳細画像はこちら

ルノーは、エアコンの操作までモニターで済ませる昨今の流れに反し、物理的なロータリーダイヤルを残してくれた。プラスティック製のパーツだが、しっかり凹凸がつけられ、クロームメッキ処理されているから、小さくない存在感だが納得できる。インテリアの雰囲気は極めて素晴らしい。

詳細画像はこちら

ステアリングコラムの調整幅は大きく望み通りの位置に設定でき、背の高い大人でも不満を感じないほど、座面高を低くセットすることもできる。ただし、シートのサイドサポートは、見た目ほどしっかりしたものではない。一方で、運転した印象は充分以上なものではあるものの、インテリアほど群を抜いているというわけではなかった。

物足りないエンジンとステアリングフィール

ステアリングの操作感は滑らかだが、高い位置のシフトノブは、正確な操作が必要なようだ。変速時のフィーリングはややザラついたもので、楽しさを引き出してくれるものではない。前席空間の前後長もたっぷりあり、操作位置は良好な点は、標準グレードとしては評価できる。しかし、入力に対する動作感は物足りないことも事実。

詳細画像はこちら

クラッチは羽毛布団のように柔らかく、ステアリングは先代よりもクイックになっている。つまり、低速域中心の都市部での運転のしやすさを主眼に、重み付けが決められているのだろう。スーパーミニ・カテゴリーのクルマの主要な用途を考えれば、当然のことではある。しかし、AUTOCARの試乗記を読んでくれているようなクルマ好きにとっては、もっと手応えが欲しいところだと思う。

詳細画像はこちら

ダウンサイジングターボとなる1.0ℓ3気筒エンジンも、意外なことに及第点といったところ。特にフォード製のユニットがパワーと個性を兼ね備えていることを考えると、少々残念だ。まるでターボ過給圧が高すぎるのかのように、低回転域でのトルクが細いうえに、5000rpmを超えると単調なエンジンノイズがうるさくなってくる。

一方で、低負荷時は極めて静かで、ライバルモデルでもクリオと同等の静寂性を持っているものは少ない。TCe100の高速道路でのクルージングはとても安楽ではある。

詳細画像はこちら

期待ほどではないエンジンとは裏腹に、シャシーのダイナミクス性能は、新しいクリオの最大の魅力だといえる。サスペンションの衝撃吸収性は抜群で、ボディを揺らすことなく波打ったような路面を丸め込む。鋭い入力が加わると流石に衝撃もそれなりだが、このボディサイズなら無理なお願いだろう。フォルクスワーゲン・ポロはクリオより唯一優れているモデルとなるが、その他のライバルはクリオには及ばない。

セグメント上にも匹敵する乗り心地

垂直方向のボディコントロール性も良好。横方向の制御はややおっとりしているが、パフォーマンスを考えれば欠点として指摘するほどではない。クルージング時に静かな理由は、エンジンだけではなく、このシャシー性能の高さにある。しっかりコストが掛けられてあることは明白で、素晴らしい仕上がりを得ている。今年の後半にはロードテストとしても取り上げる予定だが、高速巡航時の上質さではセグメント上のゴルフクラスのライバルにも匹敵するという結論も、可能性としてはありそうだ。

詳細画像はこちら

ステアリングフィールの物足りなさには目をつぶって、クルマをプッシュしていくと、低転がり抵抗のタイヤが先にギブアップしてしまう。しかし、そこで感じ取れるシャシーバランスの良さには驚かされる。リアタイヤの追従性の高さだ。

詳細画像はこちら

ESPシステムの管理はどうにもならないし、直線を飛ばして走るにも一生懸命にならざるを得ないが、クルマの小さなテールが楽しさを生んでくれる。空力性能の向上も、貢献しているはず。ここまでクルマを操れる懐の大きさを持っているのは、フォードとミニくらい。これから登場するであろう、RSクリオへの期待が高まる。

詳細画像はこちら

価格はまだアナウンスされていないが、今回の試乗車の中間グレードの場合、1万7000ポンド(231万円)程度になるだろう。割高にも思えるが、ロードマナーで優れ、非凡なインテリアの質感を備えたクルマだ。恐らく現在のクラスリーダーである、フォード・フィエスタよりも、多くの人にとっての所有時の満足感は高いと思う。特にフランス製のコンパクトカーの魅力は、個性的なアピアランスと快適性にある。クリオなら、例え近所であっても、思わず運転したくなってしまう。

「買い」か?

スーパーミニの金脈としての素地

クリオの新しいプラットフォームの潜在的なダイナミクス性能は、間違いなく高い。しかし運転した時の楽しさで見れば、フィエスタの方がまだ愛すべき存在でもある。デリケートで遊び心があり、安心感も高い。

詳細画像はこちら

フォルクスワーゲン・ポロやセアト・イビザのステアリング性能も正確で、路面を問わずよく走るとはいえ、フィエスタや新しいクリオの脚さばきの前では、その輝きは霞んでしまうといわざるを得ない。ミニの価格設定は高いし、オールラウンダーと呼ぶにはサスペンションが硬すぎる。

詳細画像はこちら

第5世代に進化したルノークリオは、スーパーミニの中での金脈なのか。現段階では、まだもう少し掘り進める必要性があるだろう。より特徴を備えたパワフルなエンジンに、感触の確かなステアリングフィールを獲得すれば、その可能性は一気に高まるはず。すべての素地は、既に整っているといって良いだろう。

ルノー・クリオTCe100のスペック


価格 1万7000ポンド(231万円・予想)
全長×全幅×全高 4048✕1798✕1430mm
最高速度 186km/h
0-100km/h加速 11.8秒
燃費 22.6km/ℓ
CO2排出量 100g/km
乾燥重量 1178kg
パワートレイン 直列3気筒999ccターボ
使用燃料 ガソリン
最高出力 100ps/5000rpm
最大トルク 16.2kg-m/2750rpm
ギアボックス 5速マニュアル

ルノーの記事
ルノー・クリオ(日本名:ルーテシア)TCe100アイコニック
編集部で買う、新型メガーヌ・ルノー・スポール MT派とAT派で揉める
ルノー・ルーテシア・アイコニック 赤い外装色、限定車で復活 40台のみ
ルノー・スマートアイランド構想 ポルトガル現地ルポ 真のゼロエミッションへ

試乗 ルノー・クリオ(ルーテシア)TCe100 1.0ℓ3気筒ターボ 優秀な素地