ドラゴン桜」などで知られる三田紀房による同名漫画を、「永遠の0」(2013年)などのヒットメーカー、山崎貴監督が実写映画化。山崎監督との本格的なタッグはこれが初となる菅田将暉が主演を務め、巨大戦艦の建造によって戦争に向かおうとする帝国海軍に立ち向かう若き天才数学者・櫂直(かい・ただし)を演じている。

【写真を見る】戦艦大和の沈没シーンにうなる!菅田将暉「さすがは山崎貴監督」

■ 今やるべき作品だと思った

――もともと原作がお好きだったそうですね。

三田先生の漫画が好きで、この映画の原作だけでなく、先生の「ドラゴン桜」や「インベスターZ」も読んでいました。どの作品も一見固く難しそうな題材を扱っているんですが、いろんな豆知識を散りばめて、その中で描かれる人間模様をエンターテインメントに引き上げられているんですよね。だから、難しそうな題材も楽しく学べるという印象があって、「アルキメデスの大戦」も知っているようで知らない第二次世界大戦を学べるいい機会だなと思って読んでいました。

――それが今回、実写映画化されるということで、脚本を読んでの感想を教えてください。

僕たちの世代にとって第二次世界大戦はものすごく昔のことだと感じるかもしれませんが、脚本を読んで思ったのは、現在も同じようなことで悩んでいたりするんだなと。だからこそ、今やるべき作品だと思い、出演させていただくことに決めました。

――菅田さんが演じられた櫂直は、100人に一人の天才と呼ばれる数学者。数学と美に執着する変わり者ですが、演じる上で気を付けられたことはありますか?

櫂は帝国海軍が秘密裏に進める巨大戦艦の建造計画を阻止しないと、日本は戦争に突入すると聞かされ、建造反対派の海軍少将・山本五十六(舘ひろし)に協力することになります。それまで「数字はウソをつかない」と信じ、常に数学の理論で動いていた彼が、自分の体を使って汗をかき、非常にアナログ的なやり方で戦争を止めようとする。そこに人間味を感じて、とても面白いと思いました。

ですが、実際に映像に映し出される櫂の戦いは、会議室での頭脳戦であり、派手なところは一つもないので、自分がここで動かなければ日本が戦争に突き進んでしまうという危機感と緊張感は大事にしていました。

■ 頭が痛くなりました(笑)

――そんな中、彼が任せられるのが、巨大戦艦の建造がいかに国家予算の無駄遣いかを証明すること。巨大権力を相手にした無謀な挑戦のようにも思えますが、もし菅田さんの前に越えられないような山が現れたたら、どう対処されますか?

状況にもよりますけど、ちゃんと考えて1つ、1つに手をつけていけば、そんなに乗り越えられないことはない気がします。なので、あとは自分の精神面ですよね。自分で山だと思えば山だし、それを決めるのは自分なので。

――自分の限界を決めつけすぎないということでしょうか?

それもそうですし、そもそも大変なことをやっているという認識でやれば、感覚的には全く違うと思います。それこそインタビューなどで「撮影で大変だったところはありますか?」と聞かれますが、大変なのは当たり前。僕らは楽していいものを作ろうと思っていないから、それは苦じゃないんですよね。だから、考え方次第だと思います。

――では、この映画の撮影において、菅田さんの中で最も課題だったことは?

シンプルに脳のキャパシティですね。僕は天才数学者ではないので、櫂のようにものすごいスピードで方程式を導き出すことはできないですから。

――それでも戦艦建造計画の最終決定が下される本会議のシーンで、難解な数式を黒板に書きながら長せりふを話されるシーンは圧巻の迫力でした。

櫂の数式は一見難しそうに見えますけど、1つ1つをひも解いていくと理解はできるんですよ。かけ算とわり算、あとは足し引きするだけのものなので、意外と難しいことはなく。でも、そのスピードが圧倒的に早くて、本会議のシーンを撮影しているときは本当に脳を使っている感じがして頭が痛くなりました(笑)。とはいえ、僕も数学は好きなので、単純にキャパシティのオーバーだった、だけですけど。

――菅田さんも数学がお好きなんですね。

学生レベルですけど、数学は得意でした。もしこの世界に入っていなかったら数学の教師になりたかったぐらいなので。

――そういう意味では、天才数学者の櫂は導かれた役柄だったのでは?

さすがに天才の櫂と比べると雲泥の差ですが、数学は問題があって、それを解くということで、クイズをやっているような感覚で楽しんでました。

■ 僕が何をやっても絶対に拾ってくれる

――櫂と一緒に行動することになる海軍少将・田中正二郎を演じられた柄本佑さんとのバディ感もこの映画の魅力だと思いました。

佑君とは今回が初めての共演だったのですが、佑君は僕が何をやっても絶対に拾ってくれるし、形にしてくれるので、安心してお芝居をさせていただきました

――柄本さんとは以前から親交があったのでしょうか?

いや、今回からのお付き合いだったので、ここまで仲良くなれたのは自分でもビックリでした。撮影中はずっとしゃべっていたし、当時、僕らの間で「遊戯王」カードがブームになっていて、それで遊んだりしていました(笑)。

――映画の冒頭で描かれる戦艦大和の沈没シーンが大迫力で、さすがは山崎監督だなと思ったのですが、菅田さんが完成した映画をご覧になった感想は?

山崎監督が令和の時代に大和を復活させるというのも目玉の1つではあると思いますが、それをメインにするのではなく、最初に非情なシーンを描くことで僕たちの会議室での戦いに説得力が出ていたと思います。そのバランスがすばらしく、ちゃんとエンターテインメントしてもワクワクしている作品になっていたので、戦争ものや数学が苦手な人にも楽しんでいただけるとうれしいです。

――ちなみに櫂は数学を偏愛していますが、菅田さんが偏愛しているものはありますか?

ないですね。きっとそれがあったら俳優にはなってないと思うし、今日もここには来ていないと思います(笑)。(ザテレビジョン・取材・文=馬場英美)

映画「アルキメデスの大戦」で天才数学者・櫂直を演じる菅田将暉