Credit:depositphotos

Point

■月は常に同じ面を地球に向けているので、月面上では立つ場所によって地球が見えたり、見えなかったりする

■月が暗くなる「新月」が発生しているとき、月面上からは地球の全貌(フル・アース)が見られる

■地球のサイズは月よりも非常に大きいため、月面にいると「日食」がよく見られる

「ヒトの細胞のような太陽」が話題に

月で暮らすことを決めたら、地球上で当たり前にできることの多くを諦めなければならない。体は自然と浮いてしまうし、専用のヘルメットなしでは呼吸も満足にできない。

人類は何千年もの間、夜空を見上げて月の動きや満ち欠けを観察してきたが、反対に月の夜空で地球はどのようにして浮かんでいるのだろうか。

「それは立つ場所で決まる」とコーネル大学(米)の天文学フィルニコルソン教授は話す。

地球に向くのは同じ月面だけ

月と地球はお互いの引力によって固定されており、月の軌道周期と公転周期は一致している。つまり月が1周自転する間に地球の周りをちょうど1周するということだ。

そのため地球側に向けられる月面は必ず同じ面でしかない。これは手近の道具を使うと分かりやすい。例えばボールペンクリップ部分(月)をテニスボール(地球)に向けたまま周囲を1周させると、ボールペン自体の1周とテニスボールの周囲をまわった1周が一致する。

Credit:pixabay

それゆえ地球から望遠鏡を覗いてみると、月の表面のクレーターやその他の特徴は常に同じ場所にあるのだ。

つまり地球に面していない月の裏側に立っていると地球は見えないが、地球に面している月面部分に立つと常に地球が見えるというわけである。

視点が変われば「現象」も変わる

また月の半分は常に太陽に照らされているため、月相が発生している。しかし地球から見て月と太陽の方向が一直線に並ぶとき、月に反射した太陽光が地球に届かなくなる。こうして暗く見えなくなった月を「新月」と呼ぶ。

しかし一方で月面上の観察者は、地球が太陽に照らされることでフル・ムーンならぬフル・アースを見ることができるそうだ。

Credit:pixabay

さらにニコルソン教授は「もし月に住んでいたら、地球は月よりずっと大きいので日食が見やすくなる」と指摘する。地球の直径は月のおよそ4倍におよんでいる。

ただ少し複雑になるが、この場合、地球視点での「月食」が月面では「日食」に当たる。月食とは太陽と月の間に地球が割り込むことで、地球の影が月にかかり月面が欠けて見える現象である。

しかしこれは月面上にいると地球が太陽を覆うことになるので、月からは太陽が欠けて見えたり、あるいは全く見えなくなったりするわけだ。この現象は月面上にいると、年に2〜3回起こるという。

 

天体の全体的な動きは何も変わらないが、視点が変われば見え方も大きく変わるのだ。なんだか奥が深い。

金星や土星から見える太陽はこんな感じ

reference: livescience / written by くらのすけ
月で暮らすと地球はどのように見えるのか?