白バイならぬ「赤バイ」が、全国で増えています。大地震など、大規模災害への懸念が高まるなか、バイクならではの機動性が注目されているようです。

装備が異なる2台の「赤バイ」、その任務は?

白バイならぬ「赤バイ」が増えています。警察車両ではなく、消防車両としてボディが赤く塗られたバイクのことです。

名古屋市消防局では2019年7月、オフロードタイプの「赤バイ」2台を初めて導入、名東消防署(名古屋市名東区)へ配備しました。バイク隊の任務としては、現場での情報収集や、要救助者への最初の接触などを考えているそうです。

「おもに高速道路上の災害を想定し、消火や救助を迅速化すべく導入しました。渋滞が発生していても、バイクならば一般的な消防車より早く現場へ向かうことができます。また、大地震により街なかの塀や電柱が倒れるなどして、緊急車両が近づけない場面でも、その機動力が発揮されるでしょう」(名古屋市消防局

これら「赤バイ」2台のうち、1台には荷台へ消火器を、もう1台には油圧式のスプレッター(大きなペンチのような機器。開かなくなったクルマのドアをこじ開けるときなどに使う)を積んでいるといいます。

消防バイク隊の先駆け、結成のきっかけは?

こうした消防バイク部隊の先駆けといわれるのが、1996(平成8)年に結成された長野県上田市消防団のバイク隊です。結成のきっかけとなったのは、1994(平成6)年に市内のオイルターミナル(油槽所)で発生した大規模火災だったといいます。

「このときには周辺の交通がマヒし、緊急車両が足止めされるなか、隊員が可搬式ポンプを持って現場へ向かい消火に当たったのですが、ポンプの燃料切れという事態に陥りました。この際、消防団員たちが個人のバイクで燃料を現場までピストン輸送したことで、消火活動を継続できたのです。これによりバイクの有用性が認知され、バイク隊結成へとつながりました」(上田地域広域連合消防本部)

上田市の消防団では、緊急車両に指定されている「赤バイ」6台と、調査用のバイク4台を保有し、ふだんはテストコースで走行訓練を行ったり、消防の広報を兼ねて各方面を視察し、緊急避難場所の状況を確認したりしているそうです。また、山で遭難者が発生した場合に、悪路の走行性を生かして救助や現場の情報収集にあたることもあるといいます。

総務省消防庁によると、全国の消防本部に配備されているバイクの総台数は、2018年4月1日時点で240台。2012(平成24)年6月調査時と比べ、およそ6年で57台増加しています。「水を使った消火活動を目的としていることもあれば、狭い路地が多い街での情報収集を目的としているケースなど、地域の状況にあった使い方が見られ、装備も多様です」と話します。

ちなみに、バイクの業界団体である日本自動車工業会によると、消防だけでなく警察や国土交通省、自治体、あるいは鉄道会社などでも、災害対応を目的としてバイクが導入されており、道路やライフラインの被災状況確認などに使われているそうです。

【写真】真っ黄色な「黄バイ」も その任務は?

名古屋市消防局が導入した2台の赤バイ。公募により「赤鯱」の愛称がついた(画像:名古屋市消防局)。