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もくじ

最高のエンジン 存在は風前の灯
V12の魅力 洗練とパワー
理由はシンプル 12本のシリンダー
まるでオーケストラ もっとも純粋
番外編1:偉大なるV12エンジン5選
番外編2:ユーズドV12モデル5選

最高のエンジン 存在は風前の灯

求めるエンジンを考えるとき、本当にこれが最後のチャンスかもしれないと思うことがある。だが、もちろん、まだ最後ではない。少なくとも、過去を振り返り、過ちを正すチャンスは残されている。

だが、V型12気筒に関して言えば、もはやその存在は風前の灯であり、この世から消えてなくなる前に十分に味わい尽くすしかない。

そして、それがいま多くのV12エンジンラインナップされている理由かも知れない。つまり、チャンスを逃すなということだ。一度失われてしまえば、二度と戻って来ることはないのだから。

現在V12エンジンは、BMWベントレー(実際にはW12だが、ここでは細かい点は気にしないでおこう)、アストン マーティン、フェラーリランボルギーニロールス・ロイス、そしてこのS65が積むメルセデス・ベンツからラインナップされている。

さらに、コスワースでは最近アストンのヴァルキリーゴードン・マーレーのT.50向けに、完全新設計のV12を開発しているのだから、何も問題はないと思うかも知れない。

詳細画像はこちらだが、このうちどれだけが5年後にも生き残っているだろう? コスワース製V12は開発を終え、新車で購入することは出来なくなっているに違いない。BMWも難しいだろう。メルセデスではいまV12が最後の時を迎えており、新たなV12エンジンが登場することはなさそうだ。

創業当初からV12を代名詞としてきたイタリアスーパーカーメーカーからはV12が姿を消すことはなさそうだが、ロールス・ロイスではかなり前から完全電動化への道を歩み始めており、アストン マーティンも難しいだろう。

アストンが誇るV12ツインターボエンジンが、ラゴンダブランドのモデルに搭載されないことは明らかであり、いま彼らは急速にハイブリッド化へと舵を切り、自らの手でV6ガソリンハイブリッドエンジンを創り出そうとしているのだ。

もちろん、需要があり、規制が許す限り、アストン製V12が失われることはないだろうが、現行エンジンの設計が比較的新しいことを考えれば、新たなV12が登場する可能性は低い。

V12の魅力 洗練とパワー

では、なにがV12を最高のエンジンにしているのだろう? 個人的には、ふたつの要素が生み出す見事な相乗効果が、V12に特別な価値を与えていると信じており、それは、このS65に乗ってわずかな距離を走るだけでも、十分理解することができる。

ひとつめはV12が誇る高い洗練だ。直列6気筒エンジンは、その完ぺきなバランスによって一次振動と二次振動を打ち消しているが、このエンジンをふたつ合わせたV12でも、当然この完ぺきなバランスを味わうことができる。

さらに、排気量にかかわらず、2倍の気筒数がさらなる滑らかさをもたらしており、この滑らかさこそが、そのスポーティーなキャラクターが認識される以前から、高級車メーカーがこぞってV12エンジンを採用してきた理由だった。

早くも1916年には、パッカードから史上初となるV12エンジンを積んだカタログモデルが登場しており、キャデラックリンカーン、そしていまは亡きオーバーンにピアスアローといった、本物の米国高級ブランドもすぐに追随している。

詳細画像はこちら一方、英国車としてV12エンジン搭載したのは、1936年登場のロールス・ロイスファントムIIIが最初だった。

だが、V12の特徴はその滑らかさだけに留まらない。コンパクトな駆動部品がもたらす小さな慣性モーメントが、より高回転を許容することで、同じ排気量を持つV8やV10を上回るパワーを発揮することを可能にしており、だからこそ、フェラーリはその71年の歴史でつねにV12ラインナップし続けてきたのだ。

さらに、そのサウンド素晴らしい。これまで、フラット6やV8、V10、さらにはV16といった、さまざまなエンジン形式から、驚くほどのサウンドを放つモデルが登場しているが、自分の葬儀で流して欲しいと思うのは、他のどれでもなくV12サウンドであり、低回転から中回転へ、さらにはレッドゾーンへと迫るときの、強烈で純粋なサウンドV12でしか味わうことはできない。

フェラーリ250 GTOが積むジョアッキーノ・コロンボ設計のV12や、ジャガール・マン参戦マシンXJR-9が積む7.0ℓV12フォーミュラ11970年代スポーツレーシングカーで使われたマトラV12サウンドを聞けば、わたしの言う意味を理解していただけるだろう。

理由はシンプル 12本のシリンダー

だが、例えS65のようなラグジュアリーサルーンであっても、V12にはもうひとつの顔がある。どう考えても、このメルセデスに積まれたV12は、数年前にはお払い箱になって然るべきだった。単に1990年代にまで遡ることのできるその基本設計が古いというだけでなく、メルセデスにはこの排気量にはるかに相応しい別のユニットが存在しているからだ。

S63が積む4.0ℓV8であれば、この古の6.0ℓV12パワーでは若干劣るものの(それでも、GT 63 4ドアクーペが積むV8はよりパワフルなエンジンだ)、燃費性能に優れ、新型9速オートマティックとの組み合わせも可能だ。一方、S65の場合、その強大なトルクに対応できるメルセデス唯一のトランスミッションは、こちらも設計年次の古い7速オートマティックだけとなる。

メルセデスでは、S65のほうがわずかながらも速さで勝るとしているが、V12は重く、S63のほうがパワー・トゥ・ウェイトでも、トルク・トゥ・ウェイトでも勝っているのだから、それが真実だとは思えない。

詳細画像はこちらさらに、アッファルターバッハにあるメルセデス-AMGの拠点を訪れたとき、がっちりとした体つきの男たちが、トロリーに載った太古のV12ユニットを引っ張っている様子を目にしたので、なぜいまだにAMGでは、こんな面倒な作業を続けているのかと質問してみたことがあった。

その答えは非常にシンプルで、このエンジンを求めるひとびとがいるからだというものだった。そうしたひとびとは、性能やパワーなどに興味はなく。彼らが気にしているのは、V12という称号であり、求めるのは12本のシリンダーなのだ。

その理由は分からないでもない。明らかステータスの問題であり、正直に言えば、わたしにはまったく関心のないことだが、それでも、V12パワーデリバリーにはそれだけの魅力がある。

まるでオーケストラ もっとも純粋

そして、S65には9速ものギアなど必要ないのであり、7速も不要かも知れず、おそらく3速もあれば十分だろう。このロングストローク型エンジンの滑らかさには特筆すべきものがあり、なんの苦もなく前へと進んで行く様子は、まるで電気モーターのようだが、EVが苦し気な様子を見せ始めるような速度に達すると、威風堂々としたS65の違った一面が姿を現す。

エンジンサウンドとともに、なによりもV12がその存在を主張し始めるが、それは決して最高の6気筒エンジンが奏でるような咆哮や、クロスプレーン式V8の轟くようなものではなく、そのサウンドを表現するには、あまりにもお決まり過ぎて、いまでは陳腐に聞こえるようフレーズを使うしかない。

つまり、V12サウンドとはまさに音楽であり、オーケストラの奏でるようなそのサウンドに、ひとびとは酔いしれるのだ。

詳細画像はこちら確かに、V8ほどエキサイティングではないかも知れない。だが、多くのひとびとにとって、ベートーベンビートルズほど刺激的ではないかも知れないが、どちらも歴史に名を遺す存在であることに変わりはない。

V型12気筒とは、もっとも純粋で、もっとも素晴らしく、もっとも見事なサウンドを奏でる、最高のエンジン形式だと信じている。どれだけ欠陥が多く、つまらないクルマであっても、そのエンジンルームにV12が収まっていれば、それだけで非常に興味深い存在となる。

わたしにも、V12に残された日々がどれほどあるのか分からないが、それほど長くはないはずだ。だが、本当にV12が失われる前に、もう少しこの最高のエンジンを楽しみたいと思っている。

番外編1:偉大なるV12エンジン5選

フェラーリ コロンボV12

詳細画像はこちらフェラーリ最初の20年間、すべてのロードモデルとともに、もっとも有名なレースカーにも積まれていたエンジンだ。

バンク当たり1本のカムシャフトを持つ1.5ℓから始まったこのエンジンだったが、最終的には4カム3.3ℓにまで発展している。

スタロッサ、GTOツール・ド・フランスの愛称を持つ250ベルリネッタ、250 SWB、250 LM、そして275 GTB/4など、コロンV12を積んだモデルは枚挙にいとまがない。

ランボルギーニ ビッザリーニV12

詳細画像はこちらランボルギーニ初のモデルである1963年350 GTから、2011年の最後のムルシエラゴまで、3.5ℓから6.5ℓへと排気量を拡大しながら、すべてのランボルギーニに搭載されたエンジンであり、もっとも長い現役期間と柔軟性を誇るパワーユニットのひとつだ。

このエンジンが転機を迎えたのは、1985年カウンタッククワトロバルボーレに搭載された4バルブヘッドが登場した時だった。

マクラーレン-BMW V12

詳細画像はこちらこのマクラーレンF1に積まれたエンジンのどの程度が既成のパワーユニット由来のものだったかについては、いまも議論が盛んに行われているが、決して単にM3のエンジンをひとつのクランクシャフトで結合しただけのものでないことは確かだ。

史上もっとも刺激的な独特のV12でもあり、言うまでもないが、当時、量産モデルに積まれるものとしては、圧倒的なパフォーマンスを誇っていた。

ロールス・ロイス マーリン

詳細画像はこちら確かに自動車用ではないが、ごく少数の素晴らしく無鉄砲なひとびとの手によって、このクワッドカム、48バルブ、スーパーチャージャー付きの航空機用27ℓエンジンは、クルマにも搭載されており、だからこそ、今回ご紹介することにしたのだ。

第2次世界大戦当時、このエンジンは英国が誇るもっとも偉大な戦闘機に積まれており、そのなかにはスピットファイアハリケーンモスキートランカスターといった機体が含まれていた。

フェラーリ フラット12

詳細画像はこちらおそらく、ロードゴーイングモデル向けのV12としては、もっとも滑らかで洗練されたエンジンだ。

確かに、180度の狭角を持つV12ではあるが、ピストンが水平に向かい合っているわけではないため、「ボクサー」エンジンではない。

番外編2:ユーズドV12モデル5選

2011年 BMW 760LI 2万500ポンド(277万円)

詳細画像はこちらこの走行距離12万4000kmの個体は、すべてのメンテナンス履歴が残る完ぺきな車両として紹介されているが、545psを誇る6.0ℓツインターボV12エンジンにはひとことも言及がない。

新車時点では10万ポンド以上したことを考えれば、非常にお買い得だと言えるだろう。

1992年 フェラーリ456 GT 4万2000ポンド(578万円)

詳細画像はこちらいまもっとも安価にV12フェラーリオーナーになれるだけでなく、そのなかでも最高の1台だと言える。

だが、車歴が重要であり、ガッカリさせられるオートマティックギアボックスを選んではいけない。マニュアルのほうがより高価なプライスタグを掲げているが、それだけの満足を与えてくれる。

ハンドル仕様のほうが安く、探し出す価値はあるだろう。

1985年 ジャガーXJ -S HE 1万3000ポンド(176万円)

詳細画像はこちら格安でV12エンジンを積んだジャガーを手に入れることもできるが、よく考えてみた方が良いだろう。

それなりの金額を支払って、まともな車両を手に入れたほうが、つねに良い買い物であり、結局は安くつくものだ。

1981年以降のHEモデルにはファイアボールヘッドが与えられ、最高のパワーを発揮している。

2000年 アストン マーティンDB7ヴァンテージ 3万ポンド(406万円)

詳細画像はこちら3万ポンドを支払えば、V12を積むコンディション良好なDB7を手に入れることが出来るが、走行距離の延びたDB9があまり変わらない金額で存在していることも、頭にいれておいた方が良いだろう。

変速の遅いオートマティックギアボックスと、ボディ剛性に難のあるコンバーチブルは避けるべきだが、マニュアルのクーペであれば速く、美しく、そして運転が楽しい。

2005年 ロールス・ロイス・ファントム 6万4000ポンド(865万円)

詳細画像はこちらこの金額のファントムであれば、走行距離16万km以上だと思うだろうが、履歴さえしっかりしていれば、距離など心配する必要はない。

メンテナンスコストは嵩むが、いまも史上もっとも豪華で最高のドライビング性能を楽しませてくれる1台であることに変わりはない。


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