「世界水泳カウントダウン連載」今日いよいよ競泳開幕―男子200&400m個人メドレー、200mバタフライ瀬戸大也

 五輪を超える規模で2年に1度行われる水泳の“世界一決定戦”、世界水泳(テレビ朝日系で独占中継)が7月12日に開幕した。なかでも、注目を集めるのは競泳だ。金メダルを獲得すれば、1年後の東京五輪出場が内定する今大会。「THE ANSWER」は競泳開幕の30日前からカウントダウン連載を行い、出場25選手のインタビューに加え、特別企画を織り交ぜながら大会を盛り上げる。いよいよ21日に開幕する最終回は、男子200&400メートル個人メドレー、200メートルバタフライ瀬戸大也ANA)が登場。初めて男子主将として世界水泳を迎える25歳は、毛穴全開の“鬼メニュー”を乗り越えて金メダル獲得を狙う。

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 男子のキャプテンとして迎える世界水泳。今大会の日本勢で最も注目を集めるであろう瀬戸は、エースの重責を担う覚悟だ。

 世界水泳は2013、15年の400メートル個人メドレーで連覇。16年リオ五輪も同種目で銅メダルに輝いた。王座奪還の期待がかかる今大会。しかし、本人が最も意識を置くのは200メートルバタフライだという。

「まず200メートルバタフライが、自分はこの世界水泳をやっていくにあたって本当に凄く重要な種目。初っ端(決勝は24日)なので、2大会連続のメダルでいい色を目指して泳ぎたい。200メートル個人メドレーは、世界水泳でメダルを獲ったことがないので、今年はメダル獲得に挑戦したい。400メートル個人メドレーは、前回大会のブダペストで王座から退いてしまったので、もう一度世界チャンピオンに返り咲きたい」

 4月の日本選手権は200メートルと400メートルの個人メドレー、200メートルバタフライの出場3種目全てで優勝。予選では「血流を回すイメージで泳ぎました」と“疲労回復”に充てる余裕ぶりで強さを発揮した。エースライバル萩野公介ブリヂストン)が当時は不調による無期限休養で不在。今大会は瀬戸が日本競泳界をリードする立場となり、全種目で結果を求めていく。

 200メートルバタフライに本格的に取り組み始めたのは、14年になってから。「その時にポンっと54秒台で入って『お、丈志さんとかと勝負出来るかも』って思った」。同種目で08年北京、12年ロンドンで五輪2大会連続銅メダルの松田丈志氏への挑戦心も芽生えた。だが、壁にぶつかるごとにその自信は徐々に薄れていった。

「最初に始めた時は200メートルバタフライは『全然、楽だ』という風な感じだったけど、最近になってきついと凄く感じる。もう1個上の53秒台や52秒台に行くには、やっぱりここのきつさを乗り越えなきゃいけないのかなと凄く感じていますね」

 バタフライにおいて世界で戦える理由を問われても「まだ自分は戦えていると思っていない」と控えめ。17年世界水泳は準決勝で1分54秒03の自己ベスト銅メダル獲得につなげたが、リオでは5位に終わった。

「長水路で1分54秒台という選手は、ざらにいる。3秒頭とか2秒台、丈志さんの日本記録(1分52秒97)を出して、ようやく世界のトップかなと。そこに行くために早く自己ベスト53秒台を出して、少しでも丈志さんの日本記録に挑戦していきたい。53秒台、そして3秒台を切って2秒台というのが一つずつ見ている目標になっている」

 そのために“鬼”のメニューと向かい合った。レース後半にタイムが伸びない原因は「乳酸に耐えられる体が作れていない」というもの。これまでガッツで泳いでいた部分について「最後の踏ん張りが利いていない」と素直に見つめ直した。「今回、世界水泳で金メダルを獲るためのキーワードは『乳酸に耐えられる体』です。やっぱり自分の中で自信をつけるためには、夏に向けて乳酸に耐えること。自分が一番嫌いなトレーニングをしないといけない」と“耐乳酸トレ”を実行した。

 フォームうんぬんの前の体作り。地味で、過酷で、精神的にも苦しくなる。それでも、結局は全ての種目に生きる重要な時間。「嫌いです」と断言する“鬼”から逃げなかった。「100メートルを50本とか多い回数を、全て全力で泳ぐ。休み時間も長くとって回復させつつやっていく。トータル距離は大体2000メートル前後ですね」。回復すれば、すぐにGO。永遠と続くループに気が遠のく。本気を出し続けるのも難しい。全ては世界一になるためだが、体に異変を感じるほど強烈なものだった。

「毛穴がバーって開いてる感じ。水の中なので汗は感じないけど、ピリピリと体中が全部痺れている感じですね。正座してちょっと足が痺れたけど、動かなきゃいけないみたいな。耐乳酸トレーニングをやっている時は、本当に気持ち悪いですね。本当に追い込んでいると、吐き気もする。体がパンパンでダメージすごいので、頻度も考えなきゃいけない。練習で吐いたことはないけど、吐きそうになるのはこの練習です」

心も体も強靭に、自分の武器完成へ「逃げずにやれたもん勝ち」

 標高2100メートルの米アリゾナフラッグスタッフの合宿で吐きそうになったこともある。乗り越えられるのも、自分でやると決めたから。胃の中のものとともに、弱音までも飲み込んだ。

「凄く苦手な練習でメンタルも強くなるし、やっぱりそういう練習って高校生の時に凄くしてたなって思いました。大学生になると頻度が減るというか、筋肉も増えて回復が追いつかなくてちょっと避けている傾向だった。やっぱり東京オリンピックに向けて金を獲るためには、まず今年の世界水泳で金。そのために自分の苦手な耐乳酸トレーニングをやる。

 『武器を作る』ですね。(コーチに言われてやったら)ビビってしまう練習。これをうまくこなせたら今年は間違いなく400メートル個人メドレーは金を取れると思うし、200メートルバタフライにも繋がってくる。200メートルバタフライで戦っていくには、やることは全てやっていかないと」

 世界は強敵ぞろい。200メートルバタフライには、フェルプス級の逸材として注目を集める19歳のクリストフ・ミラーク(ハンガリー)がいる。6月のジャパンオープン後には、来日していたライバルと寿司に出かけた。猛者の姿を思い浮かべるほど「やっぱり自分が200メートルバタフライでやってく中での武器作りが必要」と刺激を受ける一方だった。

 同種目の五輪は、04年アテネで山本貴司氏が銀メダルを獲って以降、松田氏、リオ銀の坂井聖人(セイコー)と4大会連続でメダルを獲り続けている。瀬戸にとってこの事実は、プレッシャーではなく背中を押してくれる責任感となった。

バタフライを代表でやっている以上、世界の舞台で戦ってメダルを取り続ける種目でありたい。今回は2番手が派遣標準記録を切れなかった。毎年代表に入れるようにするのはもちろんですが、やっぱり日本の底上げとして世界で活躍するのが大事。日本に帰ってきた時に、みんなが目標にすると思う。まず今年の世界水泳で2大会連続メダルは確実に獲って、あとは色にこだわってやっていきたい」

 2月には山本氏が水泳部の監督を務める近畿大で合宿した。先輩の写真が飾られる中で水をかくと「速く泳げている気がした」と不思議な感覚も。バタフライで一時代を築き、後半に強さを発揮する現役時代の姿は忘れられない。

「後半が本当に凄かった。それこそ武器があるじゃないですか。貴司さんのスパートの泳ぎもそうですし、やっぱり自分は何かしら200メートルバタフライの武器が必要。個人メドレーでは、武器を少しずつ作れてきているので、200メートルバタフライの武器を作るために、どういうところが得意なのか考えてやっていかないと」

 4度目の世界水泳は、トビウオジャパン男子の主将で迎える。最も重きを置く200メートルバタフライの決勝は7月24日東京五輪開幕のちょうど1年前だ。「そこが終わったら、本当に刻一刻と凄く時間が経つのが早いなと感じると思う。とにかく時間はすぐだというのを意識して、本当にやるべきことから逃げずにやれたもん勝ちかな」。リーダーとして逃げる姿を見せることなく立ち向かう。

 ◆世界水泳、テレビ朝日系で連日中継 7月21日に開幕する競泳は、決勝をテレビ朝日系地上波AbemaTVで最終日まで8夜連続放送。予選はBS朝日AbemaTVで放送する。(THE ANSWER編集部)

初めて男子主将として世界水泳を迎える瀬戸大也【写真:Getty Images】