英語の習得状況を評価する指標として、欧州の他国言語習得に使われている英語評価基準「CEFR」を用いて、より実践的な評価を行おうとする運動が始まっている。従来の評価基準であった「TOEIC」などは点数を上げることが目的化し、その結果と実践的な能力との隔たりが生まれているとの批判に答えた動きだ。新たに、「CEFR評価に基づいた企業向け英語研修」を始めるというフロム・ゼロ代表取締役、小川隆夫氏に、CEFR評価を導入した企業向け英語研修のメリットについて聞いた。

――英語力を測るために、近年、CEFR(セファール)という基準が用いられるようになってきているようです。そもそもCEFRとは、どのような基準なのですか?

  CEFRは、ヨーロッパ諸国の様に、隣接した様々な国において、他の国の言語を習得するにあたり、目的に応じて段階的に学び、その習得状況を共有できるように作られた基準です。

――これまで一般的に使われてきた、英検やTOEICなどとは、どこが違うのですか?

  まず、CEFRにおいても6段階のレベルが存在し、そのレベルでどの程度の習得状況なのかを漠然とではありますが判断することもできます。ただ、CEFRによる評価の際に用いられる指標は、レベルや点数を評価の軸とするのではなく、例えば、英語であれば英語表現にて(特定の環境下において)「○○ができる」というようにその対象者が出来ることを具体的に表されることが特徴です。そのため、自身の習得状況を確認出来ると共に、習得状況を共有することも可能となります。

  しかし、CEFRは評価だけではなく、目的に応じた英語習得を行う為の全体的な指針である為、ただ高い能力を目指す為の基準ではなく、予め個々が定めた目的、目標を目指す為に「専門家」と一緒に「計画」し、「学習、教授」を行い、その経過を「評価」していくというプロセスの指針、指標、教授方針を表したものであり、それがCEFR基準になります。

――CEFRカリキュラムを導入することによる企業としてのメリットは?

  企業の英語能力指標として、「TOEIC○○○点以上を取得する」という目標を定めることが多々あります。その場合、すべてにおいてではありませんが、大概の受験者は英語としての理解ではなく、解き方、答え方というようにテストの為のテクニックを覚えていくという方法に陥りやすく、実践的な言語能力に結びつかない問題が起きることもあります。

  テストの傾向から、スピードやテクニックを要する試験そのものが苦手という方もいます。それでも、英語がとても正しく使えている方もいらっしゃいます。

  そのようなギャップを埋めるために、一般的なテストには現れない対話力を評価し、把握することによって、新たな人材活用価値を見出すことも可能になるはずです。

  ビジネスにおいて大切なことは、人材の能力、環境の現状を出来る限り具体的にし、求める能力について「今、求めるもの」と「これから必要となるもの」を具体的にし、そして、経営サイドでは如何に正確に人材把握や能力判断、能力の維持・向上に向けた計画を行うことが重要と考えます。

  フロム・ゼロのCEFRを用いたカリキュラムは、企業の英語習得目的、展望を第一に考え、そこから必要な評価指標の作成、評価とトレーニング、具体的な現状把握と目標に向けた傾向対策、評価後の学習サポートを実施し、経営側の目的の達成の為に学習者、管理者の英語に対する負担や悩みを解決してまいります。

――フロム・ゼロの英語カリキュラムの特徴は?

  当社では、特にビジネスにおいて必要な「考えまとめる力」を重点に起き、「CEFRによる具体的な評価」、「対話力トレーニング」を組み合わせながら実施いたします。特に、CEFR評価は評価者との対話によるスピーキングを中心にした独自で開発した評価方法を行います。

  特徴としましては、今までの筆記や選択式試験とは違い、受験者の理解度を確かめながらレベルに合わせた質問をその場で作り上げていきます。

  記述式のように試験後、記載内容から加点、減点の調整をする試験と違い、その場で発言内容から発言能力をチェックし、随時、評価者は会話内容を調整することにより、英語能力をはかることができます。

  会話のテンポを計ることはありますが、人それぞれの回答があるものですので、テクニックやスピードを重視する一般的な試験とは異なり、言葉に慎重な方など個々の会話の癖や性格等も考慮して判断することが可能となります。

  試験の際、やはり面談者との相性も評価に影響してしまうのではないかと心配をされる方もいらっしゃると思われます。弊社では評価状況を録画し、弊社の評価チームにて多面的な確認を行い、全体的な状況も踏まえながら最終的な評価をさせて頂いております。

  この評価に基づいて、研修内容と期間などを実情に合わせて、再度計画します。傾向と今後の対策を含め、ポートフォリオを作成します。

  それぞれの企業が目的とする英語能力に応じて、内容や期間は異なります。研修は、1クラス6人程度の少人数レッスンを基本としていますが、各企業の実情に合わせて、様々なプランが考えられます。レッスン内容やスケジュールについては、企業ごとの完全オリジナル版になります。ただ、話すだけのトレーニングではなく、話すときの表情、考えを整理する、自身の意見を言う、共同作業を行うなど、色々な複合型の能力も要所に入れ対話力や表現力を高めてまいります。

  このスケジュール策定には標準的に数週間が必要ですが、ここで導入企業のニーズをしっかり把握することによって、より満足度の高い研修を実施することができます。

――今後の計画は?

  4月1日に企業向け英語コンサルティング窓口として東京・銀座に支店をオープンしました。ここは、CEFRを用いたカリキュラム、評価やトレーニングの研究、その他、提供サービスの計画、様々な企業様のご相談に応対させて頂く場となっておりまして、この銀座を拠点に首都圏の各企業向けに提案して参ります。

  また、日本では、「CEFR」についての認識が広まり始めたところで、実際にその内容について理解している方は少数にとどまります。より多くの方々に、CEFRについて知っていただくための、シンポジウムの開催を5月下旬に計画しています。英語教育の研究者の方々を招いて、望ましい英語教育について議論をしていただき、当社のCEFRへの取り組みについても紹介し、意見をいただきたいと思っています。

  「CEFR評価に基づく企業向けの英語研修」という分野については、当社が最も早く提供することになりますので、高い品質を保った講座を提供し、「CEFR」という評価が日本で認知されることを後押しできるように、進めていきたいと考えています。