詳細画像はこちら

もくじ

アンティークス・ロードショー 完ぺきな仕事場
詳細なレポート コンディションを評価
ハガティー・クラシック・インデックス
市場は存在 うれしい宣告
番外編:ハガティー社おすすめ いま手に入れるべき10台

アンティークス・ロードショー 完ぺきな仕事場

それなりの照明と多少のメークアップ、そして10インチハイヒールがあれば、マーカス・アトキンソンも、BBCが誇る人気司会者、フィオナ・ブルースの代わりにアンティークス・ロードショーの司会が務まるかもしれない。

だが、フィオナが番組スタッフとともに邸宅内でアンティーク探しをする一方、わたしが会ったときのアトキンソンは、レミンスターの近く、交通量の多いラウンドアバウトのそばにある、まるで家畜小屋のような建物の中で、クリップボードを持って何人かのスタッフとともに佇んでいた。

だが、それも当然だろう。フィオナと同じく、彼も列をなすアンティーク愛好家たちに対応していたのであり、彼が査定をするのは、古いズボンプレッサーやティーポットではなく、こうしたエンスージァストたちが持ち込む、由緒正しい希少モデルだ。

セドリック・エグビーもそんなアンティーク愛好家のひとりであり、かつて電力局で会計士を務めていたこの76歳は、ウェールズクナイトンにある自宅から、表向きは同好の士とティータイムを楽しむため、実際にはアトキンソンと彼のチームが、自身の所有する1962年式シリーズ2ジャガーEタイプ4.2コンバーチブルに対して、どれくらいの評価を与えるかを知るために、30kmほどの道のりをやってきたのだった。

詳細画像はこちら
「いまもEタイプが世界でもっとも美しい1台であることに変わりはありません」と、彼はボンネットを軽くたたきながら断言する。

「価格が高騰を始めた1990年代に、米国から輸入された車両であり、ハンドル位置が左から右へと変更されています。7年前に3万8000ポンドで手に入れています。まさに、子供のころの夢がかなった瞬間でした」

この「家畜小屋」だが、実はBrightwells Auctioneers and Valuersが所有する真新しい建物のひとつであり、レオミンスターに拠点を置くこの伝統あるオークション会社では、定期的に最新モデルからクラシックカー、さらには工場設備、アンティークグッズ、馬、家やワインのオークションを開催している。

そして、クラシックカー専門の保険会社であるハガティー社からやってきたアトキンソンと彼のチームにとって、ここは完ぺきな仕事場となっているのだ。

詳細なレポート コンディションを評価

彼らはこの日、セドリックのようなクラシックカー愛好家が持ち込む希少モデルの検査と査定を行っているのであり、ハガティーでは、英国中で開催されるクラブイベントやショーでこうしたサービスを行っている。

所有する車両を登録して、ハガティーがチャリティーに寄付するための15ポンドを支払ったオーナーには、アトキンソンと彼の専門家チームが、5ページにわたる詳細なレポートを作成する。

すべてのコンポーネントごとに評価と写真撮影が行われ、その後、それぞれの車両には、「プロジェクト」から「コンクール」レベルまで、5段階に分かれたコンディションの評価が与えられることになる。

そして、ようやく、オーナーが待ち望んだ瞬間がやって来る。ハガティー社による査定であり、車両コンディションと、この保険会社がもつクラシックモデルの価格に関する膨大なデータベースをもとに、評価額が決定されるのだ。

詳細画像はこちら
では、なぜハガティー社ではこうしたサービスを行っているのだろう? 簡単に言ってしまえば、彼らは合意した価格に基づいて、顧客の車両に対する保険金額を決定しているからであり、廃車が避けられない場合、ハガティー社では、よくある自動車保険契約のように保険料の一部だけではなく、保険契約時の合意額を支払っている。

だからこそ、彼らにとっては、最初にそれぞれの車両価値を正確に把握しておくことが重要になるのだ。

今回は25名のオーナーが参加しており、集まった車両のなかには、何台かのEタイプとアルファ・ロメオGTジュニアダイムラーE20、さらには996型ポルシェ911が含まれていた。

インスペクションエリアでは、ハガティー社で査定責任者を務めるチャーリー・パターソンが、1972年式ローバーP6 3.5 V8 Sのエンジンを入念に調べている。

オーナーが細やかな神経の持ち主かどうかは、配線ルートやボルトの状態、ゴムホースの品質、さらにはクリップといったもので見分けることができます」と、彼は言う。「このクルマのすべてが、慎重なメンテナンスを受けてきたことを示しています。素晴らしいコンディションです」

ハガティー・クラシック・インデックス

ローバーの後ろで順番を待っているのは、シトロエンDS21コンバーチブルのようだ。パターソンがボンネットを開けると、バルクヘッドに設置された見事な作りのVINプレートに驚かされた。

プレートによれば、有名なコーチビルダー、アンリ・シャプロンが手掛けたDSのようです」と、彼は満足げに話す。「希少なモデルです」

だが、オーナーサイモン・ハスキューによれば、この車両はさらに希少な存在だという。「このクルマは英国企業が生産した3台のレプリカの1台です。2006年、この車両を手に入れるために2万6000ポンドを支払っています。VINプレートは後から取り付けたものです」

別の場所ではアトキンソンが愛らしいトライアンフGT6を点検している。6年前、オーナーがボロボロの状態で手に入れたものをレストアした車両だ。このクルマを非常に気に入ったアトキンソンは、オーナーに是非譲ってほしいと頼んでいるが、相当な幸運が必要かも知れない。

詳細画像はこちら
ハガティー・クラシックインデックスでは、基準となる50のモデルの価値を常に追跡しているが、昨年4月から12月にかけての、前年からの価格の上昇率は1.07%というものであり、2012年のインデックス創設以来、最低の伸びに留まっている。

「いま、市場は微妙な状況にあります」と、2000以上のモデルと、4万台以上の車両の価値を網羅したハガティーのプライスガイドで編集担当を務めるジョン・メイヘッドは言う。「ひとびとは慎重になり、去年は過熱気味だった価格も、落ち着き始めています」

「一方で、ランチアデルタインテグラーレのような人気モデルは、相変わらず市場を上回るペースで価格上昇を続けており、ポルシェ924やメルセデスSL R107といった車両も、価格の上昇ペースを上げています。対照的に、フェラーリ・テスタロッサや308、アストン マーティンDB4、さらにはジャガーEタイプといった、かつての花形モデルの価格は急速に落ち着きを取り戻しています。実際、2018年末時点では、われわれが価格を調査している2000のモデルのうち、1/4が価格を下げています」

市場は存在 うれしい宣告

それでも、メイヘッドは先行きに楽観的だという。「ファミリーカーであれ、ラリーやレースモデルであれ、実際に使用可能なクラシックに対する需要は堅調です。市場はきちんと機能しており、ひとびとは価値あるモデルを求めているのです」

もし、本当に価値ある1台を手に入れたいのであれば、メイヘッドは、1980年代後半から1990年代前半生まれの、目立たないが趣味性のあるモデルがお勧めだと言う。

「GTIだけでなく、8台ものプジョー309を購入した人物を知っています。近頃ではパフォーマンスモデルである必要などありません。趣味性があって、やや希少で素晴らしいな価値を保っているモデルであれば、市場は存在するのです」と、彼は話している。

詳細画像はこちら
では、セドリックのEタイプに市場はあるのだろうか? この引退した会計士は、アトキンソンが車両の検査を行っている間、そわそわした様子でカップからコーヒーを啜っていた。

「良いでしょう」と、アトキンソンは言う。

これはハガティー流の表現で、問題無く走行が可能であり、MOTに合格するとともに、素人目にはコンディション良好に映ると言うことを意味している。

中途半端な称賛のように聞こえるが、続いてアトキンソンは自らのアンティークス・ロードショーを締めくくるべく、その評価額を宣言した。「6万5000ポンド(883万円)です」

ようやくセドリックは笑みを見せた。どうやらナイトンへと戻るドライブが待ちきれないようだ。

番外編:ハガティー社おすすめ いま手に入れるべき10台

サーブ96 V4

素晴らしい状態を保っている車両のスタートプライスは約7000ポンド(95万円)となる。

ジャガー&ダイムラーX300

V12とダブルシックスのスタートプライスは3000ポンド(41万円)だ。

フィアット・パンダ4×4

オークションでは1100ポンド(15万円)から見つけ出すことができる。

ランドローバー・初代ディスカバリー

コンディション良好な個体を約4000ポンド(54万円)から手に入れることができる。

アウディR8 5.2 V10クーペ

より安価なV8よりも選ぶべきはこちらであり、約4万5000ポンド(611万円)がスタートプライスとなる。

アルファ・ロメオSZ

今年ザガートが創立100周年を迎えることで、価格は上昇に転じるだろう。

ポルシェ924、944及び928

現代的なフィーリングを持つこうしたクルマに対する市場の評価は急速に高まっている。

アルファ・ロメオ・スパイダー

2000年代初期のモデルは不当に低く評価されてきたが、その状況も変わりつつある。

MGメトロ・ターボ

もう1台の急速に価値を上げている存在だ。

メルセデスC55

1万ポンド(134万円)から手に入れられるような状況は長くは続かないだろう。


■深読みの記事
クラシックカーの価格、どう決まる? カギはデータと徹底的なチェック
ダイハツの「DNGA」 手放しに喜べないワケ 背景に「新興国」 独自の価値が必要
ヤナセの「あの」ステッカー 知られざる厳密なルール 貼りつけ位置、本当の理由
東京モーターショー 海外メーカー相次ぐ不参加なぜ? 大きな課題 変わる役割

クラシックカーの価格、どう決まる? カギはデータと徹底的なチェック