Point
ガリレオ衛星が見られる双眼鏡スペックと機材を紹介
■実はガリレオ衛星は近年アツい。その魅力とは?
ガリレオが地動説を確信する要因のひとつになった

あの明るい星、何者…?

現在(2019年7月)21時頃、南の方角にひときわ明るい星が見える。他の星と比べてイレギュラーな明るさなので「いったいなんの星…?」と気になってしまうレベルだ。この星の正体はというと、木星である。

木星は月や土星とならんで、観望会でおなじみだ。そこで望遠鏡で見たことがある人もいるだろう。観望会で木星の表面の縞模様を観察するのもいいのだが、双眼鏡で手軽にできるガリレオ衛星の観察をおすすめしたい。

ガリレオ衛星って?

ガリレオ衛星は、木星の4つの大きな衛星で、1610年にガリレオ・ガリレイによって発見されたことから、まとめて「ガリレオ衛星」と呼ばれる。

ガリレオは、望遠鏡で天体を観察した初めての人と言われている。当時はキリスト教の世界観から、地球を中心に太陽などの天体が周りをまわっている「天動説」が信じられていた。

しかし、ガリレオは木星の周りを小さな衛星がまわっているのを見て、「小さい地球の周りを太陽がまわるのはおかしいのでは」と、地球が太陽の周りをまわる「地動説」へ大きな確信を持ったそうだ。

ガリレオ衛星の魅力

Credit: Pixabay

また、ガリレオ衛星はそれぞれ特徴があり、近年注目が増している。一番内側をまわる「イオ」は活発な火山活動が見られ、400個は火山があると推測されている。火山から出る放出物は、木星にオーロラが起きる要因になっている、

二番目に内側をまわる「エウロパ」は表面の厚い氷の下に、液体の海があると考えられており、生命の存在が期待されている。昨年は間欠泉が存在する証拠が発見され、2022年には探査機が打ち上げられる予定だ。

三番目に内側をまわる「ガニメデ」は、太陽系の中で半径も質量も最大の衛星。エウロパと同様に厚い氷の下に広大な液体の海があるとされ、生命の存在が期待されている。また、金属の核を持ち、地球と同じような磁場が存在すると考えられる唯一の衛星だ。

ガリレオ衛星の中でもっとも外側をまわる「カリスト」は太陽系で3番目に大きい衛星。ほかの3つのガリレオ衛星のような大きな活動が見られず、表面にクレーターがたくさんある。星の形成当時の状態がそのまま残っているとも言われている。

このようにロマンのあるガリレオ衛星だが、実は一般的なスペック双眼鏡で観察することが可能だ。観望会ではあえてテーマにしないので、自分で見るならではの喜びもある。

そこで今回は私が実際に使用しているものをあわせて、ガリレオ衛星が観察できる双眼鏡と必要な機材、そして観測のポイントについて紹介したい。

観察に必要な機材一式

観察に必要なのは、双眼鏡と三脚、それらを接続するビノホルダーの3つ。私が実際に使用しているのは、ビクセンの双眼鏡ASCOT 7×50(倍率7×対物レンズの口径が50ミリ)」)に、「Amazonベーシック 三脚 150cm 3段 軽量中型 3WAY雲台」、ビクセンの「双眼鏡用アクセサリー 三脚アダプター ビノホルダーH(プラスチック製)」だ。

双眼鏡にネジ穴がないタイプの場合、ベルクロ式の固定ベルトなどを使うのがよさそう。

ちなみに、三脚は低価格だと耐荷重が1.5kgほどのものが多いが、3kgくらいあるものだと、重さのある双眼鏡をのせても安定して安心だ。一眼レフのカメラをつけて、天体写真に挑戦することもできる。

ビノホルダーは、上のように三脚にセットする。

ビノホルダーのねじを、双眼鏡のネジ穴部分に入れてまわして取り付ける。

あとは木星を双眼鏡でとらえて、ピントをあわせるだけ。できれば月明りが少ないと、より見えやすくなる。

コルキットで見た木星とガリレオ衛星をスマホを接眼レンズに近付けて撮影したもの。写真では4つ全部にピントがあわず写っていないが、肉眼では4つ衛星が見えた。

実際の見え方は、ガリレオ衛星の場合、35倍の望遠鏡、「コルキット スピカ」で見たときと似たような印象だ。

ほかには、月がクレーターでデコボコしているのはわかるし、土星が環と合体して楕円形に見え、まるい形をしていないことは確認が可能。

なお、観察したい日時のどこに木星があるのかは、国立天文台のサイト「今日のほしぞら」を使うとわかりやすい。

手振れが一番の問題

ガリレオ衛星が見れる双眼鏡スペックだが、倍率は7~10倍、対物レンズの口径は42ミリあれば可能だ。もっと低価格な双眼鏡だと、たとえば「SVBONY SV40」でも見ることができそうだ。ただし、倍率が高いほど手振れが影響する。

重要なのは倍率よりも手振れをしないこと。基本的に三脚固定が望ましいが、どうしてもない場合は、ベランダの柵に肘をつき、双眼鏡をかまえ、脇をしっかりしめて固定する。

つまり、三脚として腕を使うイメージだ。じっくり観察はできないが、私はこの方法でガリレオ衛星が見えることは確認している。

それぞれのガリレオ衛星の公転を観察しよう

Credit: 木星のまわりを周るガリレオ衛星 / Credit: Pixabay

なお、4つのガリレオ衛星の日々の位置は、Ole Nielsenのサイトで知ることが可能だ。上からのぞきこむわけではなく、真横から見ているので、一番近い位置に見えるのがイオ、遠く見えるのがカリストとは限らないのである。これでガリレオ衛星が木星の周りをまわっていることを、ガリレオと同じように実感することができる。

最後に

双眼鏡は野鳥を見たり、星空を観察したりできるほか、観劇にも使えるので、ひとつ持っているのはオススメだ。私の場合、伝統芸能から2.5次元ミュージカルとしばしば観劇に赴くので、購入して思った以上に活躍しているアイテムのひとつでもある。

木星は9月まで見頃なので、ガリレオ衛星を観察して、ガリレオ・ガリレイの追体験をしてみてはいかがだろうか。

ただし、ガリレオの発言とされる有名な言葉「それでも地球はまわっている」は、マリーアントワネットの「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」と同様に「あいつなら言いそう」という、実際には言ってないようだ。人のいる横で「なりきりプレイ」をする際は、注意されたい。

 

月面着陸時に船長が見た景色が完全再現

written by ofugutan
これがあればOK! 木星のガリレオ衛星が見られる双眼鏡スペックと機材を紹介