あの明るい星、何者…?
現在(2019年7月)21時頃、南の方角にひときわ明るい星が見える。他の星と比べてイレギュラーな明るさなので「いったいなんの星…?」と気になってしまうレベルだ。この星の正体はというと、木星である。
木星は月や土星とならんで、観望会でおなじみだ。そこで望遠鏡で見たことがある人もいるだろう。観望会で木星の表面の縞模様を観察するのもいいのだが、双眼鏡で手軽にできるガリレオ衛星の観察をおすすめしたい。
ガリレオ衛星って?
ガリレオ衛星は、木星の4つの大きな衛星で、1610年にガリレオ・ガリレイによって発見されたことから、まとめて「ガリレオ衛星」と呼ばれる。
ガリレオは、望遠鏡で天体を観察した初めての人と言われている。当時はキリスト教の世界観から、地球を中心に太陽などの天体が周りをまわっている「天動説」が信じられていた。
しかし、ガリレオは木星の周りを小さな衛星がまわっているのを見て、「小さい地球の周りを太陽がまわるのはおかしいのでは」と、地球が太陽の周りをまわる「地動説」へ大きな確信を持ったそうだ。
ガリレオ衛星の魅力
また、ガリレオ衛星はそれぞれ特徴があり、近年注目が増している。一番内側をまわる「イオ」は活発な火山活動が見られ、400個は火山があると推測されている。火山から出る放出物は、木星にオーロラが起きる要因になっている、
二番目に内側をまわる「エウロパ」は表面の厚い氷の下に、液体の海があると考えられており、生命の存在が期待されている。昨年は間欠泉が存在する証拠が発見され、2022年には探査機が打ち上げられる予定だ。
三番目に内側をまわる「ガニメデ」は、太陽系の中で半径も質量も最大の衛星。エウロパと同様に厚い氷の下に広大な液体の海があるとされ、生命の存在が期待されている。また、金属の核を持ち、地球と同じような磁場が存在すると考えられる唯一の衛星だ。
ガリレオ衛星の中でもっとも外側をまわる「カリスト」は太陽系で3番目に大きい衛星。ほかの3つのガリレオ衛星のような大きな活動が見られず、表面にクレーターがたくさんある。星の形成当時の状態がそのまま残っているとも言われている。
このようにロマンのあるガリレオ衛星だが、実は一般的なスペックの双眼鏡で観察することが可能だ。観望会ではあえてテーマにしないので、自分で見るならではの喜びもある。
そこで今回は私が実際に使用しているものをあわせて、ガリレオ衛星が観察できる双眼鏡と必要な機材、そして観測のポイントについて紹介したい。
観察に必要な機材一式
観察に必要なのは、双眼鏡と三脚、それらを接続するビノホルダーの3つ。私が実際に使用しているのは、ビクセンの双眼鏡「ASCOT 7×50(倍率7×対物レンズの口径が50ミリ)」)に、「Amazonベーシック 三脚 150cm 3段 軽量中型 3WAY雲台」、ビクセンの「双眼鏡用アクセサリー 三脚アダプター ビノホルダーH(プラスチック製)」だ。
双眼鏡にネジ穴がないタイプの場合、ベルクロ式の固定ベルトなどを使うのがよさそう。
ちなみに、三脚は低価格だと耐荷重が1.5kgほどのものが多いが、3kgくらいあるものだと、重さのある双眼鏡をのせても安定して安心だ。一眼レフのカメラをつけて、天体写真に挑戦することもできる。
ビノホルダーは、上のように三脚にセットする。
ビノホルダーのねじを、双眼鏡のネジ穴部分に入れてまわして取り付ける。
あとは木星を双眼鏡でとらえて、ピントをあわせるだけ。できれば月明りが少ないと、より見えやすくなる。
実際の見え方は、ガリレオ衛星の場合、35倍の望遠鏡、「コルキット スピカ」で見たときと似たような印象だ。
ほかには、月がクレーターでデコボコしているのはわかるし、土星が環と合体して楕円形に見え、まるい形をしていないことは確認が可能。
なお、観察したい日時のどこに木星があるのかは、国立天文台のサイト「今日のほしぞら」を使うとわかりやすい。
手振れが一番の問題
ガリレオ衛星が見れる双眼鏡のスペックだが、倍率は7~10倍、対物レンズの口径は42ミリあれば可能だ。もっと低価格な双眼鏡だと、たとえば「SVBONY SV40」でも見ることができそうだ。ただし、倍率が高いほど手振れが影響する。
重要なのは倍率よりも手振れをしないこと。基本的に三脚固定が望ましいが、どうしてもない場合は、ベランダの柵に肘をつき、双眼鏡をかまえ、脇をしっかりしめて固定する。
つまり、三脚として腕を使うイメージだ。じっくり観察はできないが、私はこの方法でガリレオ衛星が見えることは確認している。
それぞれのガリレオ衛星の公転を観察しよう
なお、4つのガリレオ衛星の日々の位置は、Ole Nielsenのサイトで知ることが可能だ。上からのぞきこむわけではなく、真横から見ているので、一番近い位置に見えるのがイオ、遠く見えるのがカリストとは限らないのである。これでガリレオ衛星が木星の周りをまわっていることを、ガリレオと同じように実感することができる。
最後に
双眼鏡は野鳥を見たり、星空を観察したりできるほか、観劇にも使えるので、ひとつ持っているのはオススメだ。私の場合、伝統芸能から2.5次元ミュージカルとしばしば観劇に赴くので、購入して思った以上に活躍しているアイテムのひとつでもある。
木星は9月まで見頃なので、ガリレオ衛星を観察して、ガリレオ・ガリレイの追体験をしてみてはいかがだろうか。
ただし、ガリレオの発言とされる有名な言葉「それでも地球はまわっている」は、マリーアントワネットの「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」と同様に「あいつなら言いそう」という、実際には言ってないようだ。人のいる横で「なりきりプレイ」をする際は、注意されたい。
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