主演ドラマ「ラジエーションハウス放射線科の診断レポート〜」が高視聴率をマークし、令和も絶好調の窪田正孝。最新主演映画は、石田スイの人気コミックを映画化した『東京喰種 トーキョーグール(17)に、新たなスタッフキャストを迎えた続編『東京喰種 トーキョーグール【S】』(公開中)だ。昨年30歳という節目を迎えた窪田は、いまや押しも押されもせぬ売れっ子俳優となったが、本人は意外にも「俳優としてどうやったら生き残れるか?」と常に自問自答しているという。そんな窪田の、役者としてのいまに迫る。

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窪田が1作目の『東京喰種 トーキョーグール』から続投したのは、不慮の事故に遭い、人を喰らわないと生きられない喰種(グール)と人間のハーフ【半喰種】になってしまった金木研役。今回彼の前に、「美食家(グルメ)」と呼ばれる史上最悪の喰種、月山習(松田翔太)が現れる。

■ 「松田翔太さんは日本人にない感覚を持っている方」

前作の萩原健太郎監督から監督のバトンを受け取ったのは、川崎拓也、平牧和彦の2人で、ヒロインの霧嶋薫香役も山本舞香バトンタッチした。全員が「やるからには1作目を超えたい」という想いで臨んだという窪田。

「1作目を引き継ぐなか、監督やスタッフキャストが変わったことで、ある意味、1作目に固執しないというか、違う場所に来たという気がしました。もちろん、まったく別物の感じがしつつも、前作のテーマはちゃんと受け継いでいます」。

カネキは今回、半喰種になったことを受け入れつつ、人間と喰種の共存のために闘っていくが「1作目では、自分が喰種に乗っ取られていく感覚があったけれど、今回はちゃんと喰種の自分を受け入れられた気がします」と、カネキを演じた窪田の心情がリンクしていったという。

また、本作の現場で「とても大きい存在だった」と語るのが、宿敵である月山習役の松田翔太だ。留学経験が豊富でバイリンガルの松田について窪田は「日本人にない感覚を持っている方」と表現する。「台本の読み方が違うというか、日本人の心を持っていながら、それ以上になにか漏れでているものがあるんです。それは、翔太さんがこれまで生きてきた経験や、ご家族のことはもちろん、自分から海外へ行って、新しいことに挑戦しようとした情熱なのかなと。そういう野心を持っている翔太さんに、すごく魅力を感じました」。

カネキに対して異様に執着心を持つ月山。松田は怪しくも妖艶なオーラを発しながら、すさまじい攻撃力でカネキを襲っていく。「今回は月山が軸となって物語が進むので、軸である翔太さんが暴れてくれると、どんどん波紋が広がっていきました。役者は通常、できればゼロから全部を発信したいけど、原作がある作品だとそれが60%くらいからのスタートとなります。そこから現実的に動くと自分では30%くらいを構築していくしかない。でも、翔太さんは1回自分のなかにすべてを取り込んで吸収してから『現実に動くとこうなる』というものを提示されるので、その切替えがすごいんです。月山のリアルさが実に不気味で、すごく説得力がある映像になったなというのが僕の感想です」。

■ 「もっと新しいことをやりたいという気持ちとずっと葛藤してきました」

これまでいくつものシリーズ作品に関わってきた窪田は、その難しさも年々感じているそうだ。「例えば、自分が全部出してやりきったと思ったのに、シリーズがその後も続くとなると、惰性でしかなくなっていくのではないかと思ったりもする。でも、それを求められるのが僕たち俳優の仕事でもあるし、それはいま、自分が本当に充実した環境に身を置けているからこその悩みでもあります。もちろんシリーズを続けられることって、本当はうれしいことだけど、肉体的にはきついし、もっと新しいことをやりたいという気持ちとずっと葛藤してきました」。

引く手あまたになればなるほど、時間とのせめぎ合いが起き、また、キャリアを積むほど、いろいろな角度から現場を見られるようになるが、逆にスタッフサイドのことを考えて動く癖もつき、そこがネックになることもあるそうだ。

「時間がないなか、どんどん撮って行かなきゃいけないという環境に慣れてくると、どこか流れ作業となってしまいそうになります。例えば、このシーンは自分が広めに動いたほうが、あとで編集しやすいだろうなとか、そういう物理的なことにも気づくようになってしまう。できればそういう考えはすべて排除したいけど、ある種、職業病的な部分もあると思うんです」。

だからこそ、もっと作品をよくしたいという向上心が一番必要とされる。「1作目をやれたことはすごく良かったし、そこで得た反省点を、本作だけではなく、違う現場でも活かしていきたいとは、いつも思っています。そういう意味では全部つながっていますね。1作目はいろいろ大変でしたが、それを乗り越えたからこそいまがある。1つのことを置き去りにし、目を背けて違うことをやっても、結局また元に戻ることになったりするので、できれば1つ1つをちゃんと完結させていきたいです。それは主演であろうがなかろうが、どの立ち位置でも言えることです」。

■ 「これから先もずっとこの仕事で飯を食っていきたい」

昨年30歳になった窪田は「この道で10年くらいやってきたからには、これから先もずっとこの仕事で飯を食っていきたい。でも、そうするためにはどうしたらいいのか?と考えます」と、いまの心の内を吐露する。

「売れて安心するほうが怖いです。『ラジエーションハウス放射線科の診断レポート〜』も視聴率を取れたことはすごくうれしかったし、満足もしてはいますが、そもそも役者は孤独な仕事で、あくまで“個”だと思うんです。『あいつはこういう芝居しかやらない』とか『主役しかならない』といったふうに、自分のブランドを確立したくはないなとも思います。年齢を重ね、いずれ生徒から先生役、親父役を演じるようになり、役者としての立ち位置は変わっていきますが、僕は、最後までこの仕事で飯を食っていきたいから、自分になにができるのか?と、自分自身を問いただしている感じです」。

その一方で、先輩俳優から「30代が一番おもしろいよ」とも言われているようで、最近、その意味が少しわかってきたという。また、窪田は今年3月、公演中だった舞台「唐版 風の又三郎」で半月板損傷の怪我に見舞われたが、それをきっかけに日々の生活も見直したのだとか。

「この1年間で、すごく意識的な変化がありました。半月板をやってしまったことが大きくて、怪我の功名じゃないですが、そこからちゃんと身体のケアをするようになりました。20代は、ただがむしゃらに体を動かしていたけど、やはり30代になるとそうはいかず。早めにケアをするようにしたら、1クールドラマの現場もすごく楽になりました。寝る前にストレッチをするだけですごく違いますし、塵も積もれば山となる、という感じで小さな変化が大きな変化につながるのかな。だから、30代は本当に楽しくなるんだろうなと思います」。

地に足をつけ、本作でもキレキレのアクションと俳優スピリットを見せている窪田正孝。30代最初の主演映画『東京喰種 トーキョーグール【S】』は、前作からさらに進化した窪田の勇姿が堪能できる1作となった。(Movie Walker・取材・文/山崎 伸子)

『東京喰種 トーキョーグール【S】』の窪田正孝を直撃