【なぐもんGO・30】 発泡ウレタン製のボディを持つ二人乗り電気自動車「rimOnO」は、交通事故被害の軽減や地方で車を必要とする生活事情の改善を目的に開発が進められていた。現在は開発を休止しているが、スタートアップ企業でも量産できるよう、設計や素材を工夫している。コンセプトが愛らしいデザインが反響を呼び、商品化についての問い合わせも多かったという。しかし、なぜ開発を休止せざるを得なかったのか。リモノの伊藤慎介代表取締役社長CEOに、理由を聞いた。

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●「超小型モビリティの認定制度」の壁



 商品化を求める声が多かったにもかかわらず開発を休止した理由について、伊藤社長は「全国の公道を自由に走ることができないから」と説明する。壁になっているのは、現行の「超小型モビリティの認定制度」だ。

 超小型モビリティとは、rimOnOやセグウェイ電動キックボードなどのような、自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人~2人乗り程度の車両を指す。超小型モビリティの認定制度は、こうした小型車両と他の車両が安全に走行できるように環境を整える役割を持つ。

 現状、超小型モビリティは、観光地などのエリアに限って走行許可を得ることはできるものの、市町村をまたいで走らせることはできない。制度の検討は約10年にわたって行われているが、「なかなか前には進まない」(伊藤社長)という。

 議論が進まない理由は、いくつか考えられる。例えば、大きな車両と衝突した際、小型の車両は大きな被害を受ける可能性があるから。速度の差で他の普通車両の交通を阻害してしまう可能性があるから、などだ。こうしたリスクを回避するために、制度で小型車両が走行できる場所や条件を絞っている。

 結果的に、rimOnOを走らせるためには面倒な手順を踏む必要がある上、市区町村レベルの限られたエリアから出ることもできない。実際に使われるケースがごく一部に限定されてしまえば、当然ながら販売台数は少なくなり、事業としての収益化が期待できない。また、たとえ製品化したとしても、交通事情の改善という当初の目的を果たすのは難しい状況だ。ついには出資を募るのが難しくなり、やむなく休止になったのだという。

 伊藤社長は「製品による地方の交通事情の改善が難しいなら、サービス面で改善していくことも考えた」と、乗り合いタクシーやライドシェアサービス、自動運転車両などのモビリティサービスの活用も検討したと話す。しかし、「実現したとしても、利用者が少なく赤字の事業では継続が難しく、結局、交通事情は改善しない」と懸念する。

 「超小型モビリティに含まれるセグウェイや電動スクーターなどは、制度さえ整えば、家電量販店でも販売されるようになるかもしれない。実際に海外では販売されている。日本がいつ追いつけるのかわからないが、超小型モビリティが認められるためにも、啓発活動は続けていきたい」と語る佐藤社長。

 制度が整った際にrimOnOの開発を再開するかは「未定」としているが、会社設立当初の理念である地方の交通事情の改善については、コンサルタントなどでサポートしていく。ただ、このまま凍結させるには、rimOnOは惜しい製品だと思う。交通事情に問題を抱えている国自身が、こうしたスタートアップ企業をもっと手厚く支援していくべきではないだろうか。(BCN・南雲 亮平)
リモノの伊藤慎介代表取締役社長CEO