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もくじ

スロットレーシングクラブ 大人の楽しみ
実車同様 改造には3Dプリンター
見事なシャシー 空想と現実
細部へのこだわり 電気代はわずか
番外編1:スロットカーレースの魅力
番外編2:レースに参加するには?

スロットレーシングクラブ 大人の楽しみ

スケーレックストリックドーピングをしていると彼らは言うが、一度でも1/32サイズスロットカーで、5つのレーンを持つ全長約33.5mのコースを周回してみれば、その理由を理解できるだろう。

「彼ら」とは、ストックポートにあるサウスマンチスタースロットレーシングクラブメンバーたちであり、彼らが拠点としているのは、煙突という煙突の改修を行ったかの有名な煙突職人、フレッド・ディブナと彼の大鉈から奇跡的に逃れることに成功した、レンガ造りの煙突を持つ古びた木材工場だ。

建物の奥深く、迷路のような廊下を辿って彼らを探し出すのは容易ではないかも知れないが、もし、スロットカーとコントローラーを借りて、ふたつある大きく頑丈なコースでの体験走行をするために、ここへとやってきたのであればその甲斐は十分にある。

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コントローラーへと繋がるケーブルが這いまわるカーペットに膝をついて、コースパーツを取り付けたり、他のひとびとをかき分けて、ソファの下から何とかスロットカーを探し出そうとしたりするようなことは、ここでは必要ない。

ここは、大人の楽しみに相応しい運営が行われているスケーレックストリック、つまりはスロットカーレーシングの世界であり、メンバーは立ったままで、固定されたコースレースカーが走行し、例えコースアウトしても、マーシャルの一団がマシンコースへと戻してくれる。

クラスにもよるが、参加車両のなかには、メンバーによって徹底的に改造されたスケーレックストリックマシンや、例えば、Slot.itというイタリアトップメーカー製の車両などが含まれている。

クラブメンバーのラス・モンクマンが、所有する2台のスケーレックストリックミニクーパーの改造車両と、ノーマル車両とを比べてみせてくれた。

実車同様 改造には3Dプリンター

裏を見れば、その違いは明らかであり、約1万8000回転まで回るノーマル車両の大きなモーターと、白い樹脂製ピニオンギアと剥き出しの配線、そしてピックアップブッシュはすぐに見慣れたものとなる。

対照的に、2台の改造されたミニクーパーにはコンパクトイタリアモーターが積まれ、それぞれ最大回転数2万2500rpm、230g/cmのトルクと、2万5000rpm、240g/cmというスペックを誇る。

ラスの「ピット」に仕舞い込まれている3台目のモーターも同じく2万2500rpmを許容するが、そのトルクは、ほとんど制御不能な430g/cmにも達するという。

彼の改造したマシンノーマル車両のもうひとつの違いは、24枚のギアを持つデフのサイズにも及んでおり、さらに、コースの溝をトレースするピックアップガイドも長く、太いものとなっている。

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これは、ノーマルのスケーレックストリックや、それらに合わせた樹脂製のコースとは違い、クラブが使うスロットカーと木製トラックでは磁力が働かない一方で、マシンの重量がわずか90gに留まっているためだ。

実車同様、マシンコース上に留めておくには、タイヤが重要な役割を果たしており、エキスパートであれば、コーナードリフト状態で駆け抜けていくこともできる。

改造車両のシャシーは、非常に見事な仕上がりを見せ、各車両のシャシー中央には、複数の配線を持つモーターが取付けられているが、これは同じくクラブメンバーアンジェロ・アマトの手によるものだ。

昼間コンピュータで設計を行うだけでは飽き足らず、夜になると3Dプリンターまで持ち出して、アンジェロは作業を行っている・・・

見事なシャシー 空想と現実

メンバーがスケーレックストリックのボディシェルを持ち込んでくるので、ボディが取付けられるのはもちろん、新しいモーターとランニングギアが搭載できるようにシャシーをデザインして、3Dプリンターで成型をしています」と、彼は話す。

「1台当たり、3Dプリンターでの成型には最大2時間が必要です。こんなことが出来るクラブはそれほど多くはありません」

ラスが次のレースへの準備(真円になるよう旋盤でゴム製タイヤを削ったあと、タイヤが柔らかくなるようにオイルを塗り込むのだ)を中断して、どれほどアンジェロが作るシャシーが素晴らしいかを説明してくれた。

「シャシーには硬さが必要ですが、モーターを取り付ける箇所にはある程度の余裕が求められます。この余裕というのが、モータードライブトレインにとっては重要なのです」と、彼は言う。

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スロットカーにはサスペンションが付いていないので、モータードライブトレインが多少動くようにしておくことで、例え挙動が乱れても、タイヤコースとの接触を保つことができるのです」

それでも、シャシー設計はアンジェロの専売特許というわけではない。例えば、戦前モデルなど、他のクラスでは、ピアノ線や真鍮製のシャシーも使われている。

ラスは見事な造形を見せるメルセデスW154を裏返して、そのシャシーを見せてくれたが、ピアノ線を美しくまとめた素晴らしいものだった。

クラブでは、こうしたモデルに特化した、サポートレースも開催している。メンバーのひとりは、いかにして自身のスロットカーにスターリング・モスのフィギュアを取り付けたかを話してくれたが、ある意味、それは、空想と現実の世界の境界が、曖昧になって来ていることを示しているのかも知れない・・・

細部へのこだわり 電気代はわずか

ラスのミニに戻ろう。鉛のような小さなウェイトを使って、いかにしてシャシーの重量を調整し、その重心位置をさらに下げようとしているのかを見て驚かされた。小さなデジタルケールを取りだして、重くなりすぎない様にマシンの重量を測定している。

重すぎるウェイトは加速と減速に影響を及ぼすだけでなく、各レース前には、クラブのオフィシャルの手で、それぞれのマシンの重量が厳密に測定されているのだ。

続いてラスは、インテリアにおける素晴らしい腕前を披露してくれた。彼はノーマル車両のシートダッシュボード、ウインドスクリーンを取外し、歯科医が使うバキューム式成型機で製作した、より軽量な、オリジナル部品へと変更している。

「このミニのウインドスクリーンは0.78gですが、ノーマル車両では2.739gもありました」と、彼は嬉しそうに話す。

だが、こうした細部に対するこだわりも、ハンドコントローラーに比べれば問題ではない。手の平ほどの大きさの、親指で押し込むタイプを想像していたが、ラスが手渡してくれたのは、数多くのノブが付いた、まるでピストルのような形状をしたものだった。

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左側のノブには「アタック」という表示がしてあり、このノブを回すと加速が変わると言う。その次のノブはチョークの役目を果たしており、より細かなコントロールができるように電圧を制御している。3番目のノブはブレーキングに関連しており、トリガーを離した時の反応を調整する。

コントローラーの中心には、コースアウトにうんざりしているようなスロットカーレーサーであれば、思わず手を出さずにはいられない、4つの小さなスイッチが並んでいる。簡単にいえば、スロットレスポンスを調整するためのものであり、滑らかなレスポンスから、非常に荒々しいものまで調整が可能だ。

レースは毎週木曜日と隔週月曜日に行われているというが、電気代はどれくらいになるのかとラスに訊いてみた。

「たった15ポンド(2000円)です」と、彼は得意満面に答えてくれた。「しかも、そのほとんどが電気ポット代なのです」

番外編1:スロットカーレースの魅力

ムースレスポンスに優れ、驚くほどの速さを備えたスロットカーは非常に魅力的な存在だ。

オーバーステアリングコントロールする術はないかも知れないが、単にコントローラーグリップを握りしめる前に、コーナーを無事脱出して、さらなる加速を見せられるよう、減速してコーナーアプローチする方法についてもよく考えてみるべきだろう。

ミニは確かに高重心ではあるが、優れたグリップと驚くほどの安定性を見せる一方、違うクラスに所属するイタリア製のNSRであれば、より低く、長く、そしてさらなる速さを味わうことができる。

それでも、ハードブレーキングや、ラフな加速をすれば、こうしたモデルは簡単にリアを振り出す傾向がある。

ドリフトという意味では最高だが、操作を誤れば、簡単にコースアウトしてしまうことを意味しているのであり、サウスマンチスタースロットレーシングクラブのラス・モンクマンは、「コースからの落下というのも、コースアウトのひとつです」と話す。

「一度コースから落下してしまえば、ポジションを取り戻すことは出来ません。遅かれ早かれ、他のマシンコースアウトするだろうと望むしかないのです」

レースの合間、メンバーたちはそれぞれのマシンの車高とメカニカルコンポーネントのチェックに余念がない。マークシャーロックもそんなひとりだ。

「ほかのマシンサイドにぶつかってしまいました。すぐにミニクラブマンのフロントを修復しなければなりません」と、彼は笑いながらも、やや必死の面持ちで話してくれた。

レースでのライバルは21歳のルーキーカメラマンをしているマックスです。素晴らしいスタートを切ると、彼はそのままエキサイトして、マーシャルの手を煩わせることになるでしょう。わたしは冷静に集中を保つことで、最終的にはトップチェッカーを受けるつもりです」

つまり、スケーレックストリックに夢中なった日々も無駄ではなかったということだ。

番外編2:レースに参加するには?

英国には60ものスロットカークラブが存在しているのだから、あなたの近所にもかならずひとつはあるはずだ。

つねに新規メンバーを募集しており、たいてい体験走行のためのマシンコントローラーを借りることができるだろう。

500ポンド(6万8000円)もあれば、すべてを揃えることができる。
スロットカー:60ポンド(8100円)
コントローラー:200ポンド(2万7000円)
■交換用タイヤセット(最大2年間使用可能):6ポンド(810円)
タイヤオイル缶:4ポンド(540円)
タイヤ清掃用テープ:3ポンド(410円)
■工具類、及びスペア(デジタルケールドライバー、及び寸法チェック用のノギスなど)


奥深きスロットカーの世界 大人の楽しみ 精巧な造形 決め手はコントローラー