「弱者男性は同じ弱者男性を救えないのか」という話が、少し前にネットで話題になった。おれもまあ、おそらく発端に近いであろう「おっさんおっさん大嫌いだし弱い男はもっと嫌い」というはてな匿名ダイアリーの記事を読んだ。そしてうーむとうなってしまった。

【画像】今回の結論(になっていない結論)

 その匿名ダイアリーでは、学歴やルックスなどさまざまな理由からまったくモテず、女性が憎くてたまらなかった男性の書き手が、35歳になって女性を憎むエネルギーがなくなってきたこと、さらに自分が男女双方からいじめられてきたことを告白。そこから導き出される結論として、強者の男性は弱者男性に興味がないこと、弱者男性もそんな強者男性を怖いと思っていること、さらにそれを怖いということすら吐き出せず、インターネットで強者のフリをして女叩きにせいを出すしか選択肢がなかったことがつづられていた。

 結論としては「男は怖いから女に救ってもらいたいが、現状そんな手段はないし、おっさん同士で群れてやっていくのはおっさん自身が嫌がる」という話だ。うーむ……。

 ……先に書いておくと、ここから書く文章は「うーむ」とうなってうなりっぱなしみたいな内容である。最後まで読んでも何にも解決してないので、一応それを念頭に置いて読んでほしい。

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ライタープロフィール

しげる岐阜県まれのライタープラモデルアメリカや日本や中国のオモチャ、制作費がたくさんかかっている映画、忍者や殺し屋や兵隊やスパイが出てくる小説、鉄砲を撃つテレビゲームなどを愛好。ねとらぼGirlSideで恋愛や人間について考えるコラムを連載中。

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●弱者男性が群れてやってくの、やっぱり難しいっすよね

 思うに、弱者男性(という言い回しも漠然としてるのでちょっとどうかと思うけど)が集まって生活して、相互に援護しつつ社会の荒波から自分たちの身を守ることは可能である。可能だとは思うんだけど、天文学的に低い確率で成立する関係性だろうな……というか、よほどうまく偶然が作用しないと難しいと思う。

 まず「自分は社会的経済的その他もろもろの条件において弱者である」と認められなくてはいけないし、同じように考えている気の合う人間を見つけなくてはいけないし、そういう人たちがある程度近所に住んでなくてはいけないし、できれば関係者全員がある程度以上の収入を得ているのがベターだろう。

 そう考えていくと、やっぱり男性同士がうまく相互にカバーしつつ死なないようにやっていくというのは難しいことなのだと思う。

 そもそも、「俺って弱いなあ」と開き直るのがまず難しい。先ほどの匿名ダイアリーの人ではないが、「弱い男性」が嫌いな男性は多い。それが自分のこととなればなおのことだ。なぜそれが嫌いなのかという理由はさまざまだろうけど、「男は強いものでなくてはならない」という思い込みや、男性同士の関係で弱者はどうしてもスポイルされがちであるという点から、後天的に刷り込まれたものだったりする。

 アル中の治療はまず自分が中毒だと認めるところから始まるというが、それと同じである。ヘビーな酔っぱらいほど「俺は酔っぱらってねえよ~」と言う。自分が酔っぱらっているのを認めるのは、自分を直視できる人間だけだ。そしてそれはある程度の胆力を必要とする。

●恋愛で救われると言いたくない! けど効果はある……!

 となると、あまりこういうことを言うのはどうかと思うけど、やはり現状一番社会的にも価値が保証されており、そこに至るための各種マッチングサービスや相談所や、そもそも世間的に話題にしやすいネタだというコンセンサスが存在しているなど“インフラ”が整備されており、簡単にもろもろの問題を解決できるのは、恋愛という方法なのではないか……という気がしてくる。なんせ、弱者男性が弱者男性同士で助け合うのは前述のようにめっちゃ難しいのだ。まだ異性同士の恋愛の方が楽そうに見える。

 しかし、おれだって本当はこういうことは言いたくない。というのも、逆に「恋愛が全てを解決してくれる」という通説がまことしやかに信じられているからこそ、男同士で肩を寄せ合って生活していくのが難しくなっているのではないかとも思うのだ。鶏と卵というか、「うるせえバーカ! 何が恋愛だ! 死ね!」と言いたくなる気持ちもわかる。

 なんせ恋愛は「弱者男性同士で連帯してやっていく」みたいな方法よりも一般的で、なおかつ一応世間的には楽しくステキなものと見なされているので、各方面からの圧もある。人から「彼女(彼氏)作りなよ~!」みたいな、意見以下のぼんやりしたことを言われて「ヘヘ……そっすね……」と愛想笑いしつつ「こいつ死なないかな~」と思った経験のある人も多いことだろう。

 恋愛は全ての問題を一発で解決してくれるようなものではない。恋人ができたところでそれが原因で年収が1000万円を超えることはないし、いきなり健康になったりもしない。それに加えて、特に恋愛をしたくない人だっているだろう。やりたくなければやらなくたっていい。

 それでもやっぱり、恋愛で埋まる心の穴というのはある。

 もちろん人によるし、万人に有効な処方箋ではないけども、それでも信用している人間に精神的にも肉体的にも認められることの効果は非常に大きい。ナメてはいけないものがあると思う。自宅に掃除機をかけるようになった、人格に社会性が芽生えた、物腰に余裕が発生し他人を気遣うようになったなど、いきなり変化した人間をおれはけっこう見てきた。

 「なるほど自分はこれでもいいのか」と自認できるのは、やっぱりプラスの効果がある。変に精神的にこじれているとその限りではないと思うけど、でも時間をかけて1人の人間と関係を構築すれば、そんなこじれだって快方に向かうこともあるだろう。万能ではないが、効き目自体はちゃんとある薬……という感じだと思う。

●その心の穴は、本当に恋愛か?

 重要なのは、自分が恋愛を必要としているのかどうかを見定めることだろう。自転車パンクの修理だって、まずはタイヤチューブのどこに穴が空いているのかを確かめないと前に進まない。医者だって薬を出す前には診察をするのだ。

 金がなくてしんどいのか、誰かに褒められたいのか、スケベな目にあいたいのか、友達がほしいのか、あるいはそれらの寂しさが複数束になって襲ってきているのか……。

 己の欲求を腑分けして、まず自分が何をほしがっているのかをいったん考えてみなくては、何をすればいいのかすらわからない。

 自分のことを弱者男性(女性でもだけど)だと自認している人にとって重要なのは、欲求を明文化するプロセスなんじゃなかろうか。全ての寂しさや息苦しさの原因が恋愛であるケースは、多分そんなに多くない。今より10万円ほど収入が多ければ解決してしまう問題もある。漠然と「恋人がほしい」と思っているよりも、「本当にそうか?」とそれを疑ってみることが大事なのではないか。

 と、ここまで書いておいてアレなんだけど、実際のところこれがかなり難しい。自分がどうしたいのかなんて、そんなにすぐわかるんなら誰だって苦労しない。

 でも多分、手元に紙とペンを用意してとりあえずどうしたいかを書き出してみるだけでもだいぶ違うはずだ。金が欲しいなら収入を増やす算段を組まなくてはいけないし、やっぱり恋人がほしいなら、開き直ってそのためのインフラを利用する必要があるだろう。幸い、恋愛というのは世間の人にとっての最大関心事のひとつである。オンラインオフラインを問わず、手段とノウハウは死ぬほど転がっている。

 恋人ができるかどうかというのは結局のところかなり運に左右されるっぽいので、最終的には「試行回数を増やしてジッと待つ」くらいしか解決策がなさそうだとも思う。正直しんどい。

 でもどうせ、行動してもしなくてもしんどいのだ。もちろん「どっちにしろしんどいなら、もう俺は家で寝ている方を選ぶ!」というのもあるし、寝てるだけでうまくいったりすることも世の中にはあるから、そういう人を見ると余計にしんどくなる。正味な話、このしんどさと向き合う方法、おれもまだ今んとこよくわかっていない。「それが人生なんだよ」と言われたらそれまでだけど、もうちょい楽をしてやっていけないかな……と甘っちょろいことをずっと考えている。

ねとらぼGirlSide/しげる

ライターしげるが恋愛や人間について考える連載。今回は答えが出ない問題について。