近年、離婚する夫婦が増えているといわれています。

厚生労働省の『平成30年2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況』によると、2018年の婚姻件数は60万6866組ですが、離婚件数は20万8333組となっています。50年前の1968年の婚姻件数は95万6312組、離婚件数は8万7327組と、婚姻件数は人口減少も相まってか減少傾向にありますが、離婚件数は2倍以上に増加しています。

離婚原因については、一番多い「性格の不一致」というものから、「生活費を渡してくれない」さらには「DV」などさまざまな深刻な理由が上げられています。その中には「不倫」という、夫婦の絆を壊す致命的な理由も含まれています。

今回紹介するのは「別れさせ屋」という職業です。

恋人と別れたい時、または夫や妻を不倫相手と別れさせたい時などに、この別れさせ屋の力を借りれば、自分で努力することなくターゲットと別れさせてくれるのです。

自分は労力を使わずに別れられるなんて夢のよう、と思うかもしれませんが、「でも本当に別れさせてくれるの?」と「うまい話には裏がある」を疑う人も多いでしょう。

今回は気になる職業別れさせ屋の実態について探っていきます。

別れさせ屋は案外身近でやっている

別れさせ屋の仕事は正式な名称でいうと「別れさせ工作」と言います。別れさせ工作を仕事として請け負っているのは、主に探偵社です。

インターネットで「別れさせ屋」と検索してみたところ、別れさせ工作を請け負う探偵社が複数ヒットしました。

探偵業や別れさせ工作というと、筆者にとっては裏社会で行われるような怪しいイメージだったのですが、クリックひとつで仕事の概要や料金表が出てくるのをみると、案外身近に潜んでいるものだと感じます。

「LIMO[リーモ]の今日の記事へ」

友だちの縁切りまで行う別れさせ屋

「別れる」と聞くとカップルを連想する人が多いと思います。筆者も漠然と「どうしても自力で別れられないカップルの駆け込み寺のようなものかな?」と思っていました。

しかし調べてみたところ、実は別れさせ屋の依頼でもっとも多いのは、結婚前のカップルではなく、「夫や妻を不倫相手と別れさせたい」というものとのこと。そしてなんと依頼の中には、友だちとの縁切りというものもあるそう。

そんなことも他人に頼む人がいるのかということと、友だちとの関係すら自分でなんとかできない人もいる、という事実に驚いてしまいました。

求められるのは人を騙すだけの演技力

一般企業の会社勤めと違って、探偵業や別れさせ屋というととても特殊で怪しい職業のように思えないでしょうか?

筆者も何か特殊な技術がないとできないものなのか?と思い、「別れさせ屋 求人」で検索したところ、別れさせ屋の看板を掲げている会社で求人情報が見つかりました。

正社員での募集のほか、1案件ごとに給料を払うタイプの登録社員の求人もあり、「秘密厳守できる人」「忍耐力のある人」「明るく元気な人」など、普通の企業の募集要項でもみられるような言葉が並んでいます。

しかし、普通の企業と違うところは「容姿に自信があり芸能関係に所属、または所属していたことがある人」が求められているところ。

「身分を隠してターゲットと接触し、情報を集める」「疑似恋愛をして情報操作を行う」など、別れさせ屋には人を「自分に夢中にさせて別れる気にさせる」だけの演技力がもとめられるようです。

別れさせ屋とターゲットの間に起きた悲劇「恋仲になった相手を殺した」

人と人との縁を切るほどの演技力。それが事件となってしまったこともあります。

2009年4月、ターゲットの元夫から依頼を受けた別れさせ屋のA被告(男性、30代)が、その後ターゲットであるBさん(女性、30代)と恋仲となった末、殺害してしまった事件です。

被告が別れさせ屋だったことを知ったBさんが別れ話を切り出したところ、A被告は逆上してBさんを殺害。

A被告はBさんのことを本気で愛していたと主張していますが、実際のところBさんの財産を狙って近づいたとみられています。

この事件により、別れさせ屋という職業の名前は一気に広まったのですが、同時にお金のために別れさせ工作をする人、別れさせ工作を依頼する人への批判も広がることとなったのです。

結婚指輪より高い「別れさせ代」

また、別れさせ屋の詐欺問題も深刻です。

別れさせ屋とのトラブルでは「お金を払ったのに連絡がとれなくなった」「高額な依頼料金を払ったのに結局失敗した」などが見受けられます。

しかも、別れさせ屋に頼んだという事実を公表するのが恥ずかしい、という理由で騙されても訴えなかったり、泣き寝入りするケースが多いのです。

別れさせ屋の依頼料金は決して安価なものではありません。

ある別れさせ屋C社の料金表をみたところ、1番安いプランでも65万円から、高いプランだとなんと450万円もの料金がかかることが分かりました。

しかも成功すればそれに追加で成功報酬の支払いが求められるため、1回依頼するだけでも決して少なくないお金がかかるのです。

よく「3カ月分の給料で買った結婚指輪」といいますが、幸せを手に入れるために払ったお金よりも高いお金を別れるために使う…そう考えるとなんだかとても寂しく思えます。

一生の後悔を背負わないために

「大好きな恋人が浮気をしていた」「一生添い遂げようとしていた伴侶が不倫をしていた」それが分かった時の衝撃や悲しみは大きいものです。

周りが見えなくなり、冷静な判断ができなくなると、衝動的に別れさせ屋に依頼したいと思ってしまうこともあると思います。

しかし一瞬の判断を間違えると、一生の後悔に繋がりかねません。

もし、どうしても自分の力では別れられないという時は、周りの信頼できる人に相談したり、離婚問題に強い弁護士に相談するなど、安全で正しい手段を選びましょう。

【参考】
平成30年2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況』厚生労働省
『「別れさせ屋」と元夫を提訴 絞殺女性遺族』日本経済新聞