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もくじ

広がるディーゼルラインナップ
アルピナD5 S、どんなクルマ?
日本でアルピナを選べるということ

広がるディーゼルラインナップ

サーキットスピードで改めて気づかされるアルピナディーゼルの親和性の高さ。それは走りのキャラ立てにおいていたずらにアジリティを追求することなく、全負荷領域まできっちりドライバーの安心感を意識した走り味を追求するという彼らの姿勢に由来しているのではないだろうか。

とはいえ一方で、ディーゼルをこれほど楽しく気持ちよく走らせる銘柄も多くはない。

99年といえばまだディーゼルエンジンがいかにも実用一本槍な農耕馬的存在として認識されていた頃合いだろうか。

ちなみに東京都ディーゼル車NO作戦と題した規制強化が施され、当時の石原慎太郎都知事がペットボトルに入った粉塵を振り回した記者会見が行われたのも99年のことだ。その年に、アルピナは自社初のディーゼル銘柄となるD10を欧州で上市している。

そんな時世ゆえ、E39型5シリーズをベースとしたD10は日本に正規輸入されることはなかったが、その後E90系3シリーズをベースとしたD3の正規輸入に踏み切ったのは10年後の09年。そこでの実績はBMWジャパンの商品展開戦略にも少なからず影響を与えたはずだ。

その後、F10系5シリーズをベースとしたD5、F25系X3をベースとしたXD3と、アルピナディーゼルモデルのバリエーションを広げ、現状日本市場においては販売のほぼ半分、もしくはそれ以上がディーゼルで占められるという。

アルピナD5 S、どんなクルマ?

現状、日本でのディーゼルラインナップにおいて最新のリムジンとなるのは、G30系5シリーズをベースとしたD5 Sだ。

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シャシーは530Xdすなわち四駆をベースとしており、そこに540Xdに搭載されるB57系直6をベースとして独自のチューニングを施したパワーユニットを搭載している。

パワーは540Xdに対して6ps高い326ps、トルクは2.0kg-m高い71.4kg-mを発揮。数値的にD3より低いのは世代交代に伴う環境規制の強化を受けてのものだ。

ちなみにD5 Sの0-100km/h加速は4.9秒、最高巡航速度は275km/hと、G30系でいえば540iにも比肩する速さといえるだろう。

サーキット走行まで堪能したD3に比べると、様々な補機類の搭載もあってかD5 Sのエンジンのフィーリングは確かにマイルドだ。が、受け止めようによっては洗練されたと言えなくもない。それほどに回転感は一段と滑らかになっている。

トルクに谷などあろうはずもなく、発進直後からグイグイとレスポンスする一方で、トップエンドの回転数はやや低く留まるもパワーの伸び感はしっかり保たれ頭打ちも感じられない。

D3と違ってタイヤも新しかったこともあり、D5 Sのライドフィールはもう文句のつけようもないものだった。果たしてレッドカーペットを歩むとはこういう気持ちよさを言うのだろうか。

その丸さやしなやかさを知るにつけ、一体この脚はどうなっているのだろうと選んで凹凸を踏みにいってしまうほどやみつきになる。SUVのXD3も速度域が上がれば見事なアルピナライドをみせるが、低速域ではどうしても高重心の車体を支えるサスセットのアラが乗り心地に現れる。リムジンこそがアルピナの真骨頂だと思う理由はそこにある。

日本でアルピナを選べるということ

にわかに信じ難いが、このD5 Sのみならず、近年のアルピナの多くのモデルのダンパーはベースモデルと同じものを使っているそうだ。

聞けばタイヤの銘柄やスペックを開発時点から一本化し、それに合わせこんでスプリングマウント類のファインチューニングを施すことでこの乗り味が実現しているという。

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年間販売台数は2000台程度と聞けば、BMWにとっては誤差のような数字かもしれない。が、それでもアルピナBMWと特別な関係を築き続けている。そこにはもはやビジネスの利害的な問題を超えたなにかがあるということだ。

古くはノイエクラッセのパワー不足を補うツインキャブキットの供給から始まったという両者の歴史にはわれわれには窺い知れないものがあるのかもしれないし、BMWの大株主であるクアント家と現在も独立資本のファミリービジネスであるアルピナのボーフェンジーペン家の間には欧州的なエスタブリッシュメントの関係があるのだろうかと邪推も働いてしまう。

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ともあれわれわれにアルピナという選択肢があるのは間違いなくハッピーなことだ。初上陸から40年にわたり、輸入業務を一手に担ってきたニコルオートモビルズの地道な努力もあって、アルピナの各モデルは全てのBMWディーラーで取り扱われている。

もちろん車両が全国の店舗に常備されているわけではないが、展示や試乗の機会があれば、ぜひその作り込みや味付けの妙を体験してみていただきたい。


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