Maxim Integratedは7月19日、都内で技術説明会を開催し、同社が2017年12月より出荷を開始した90nmプロセス採用プラットフォーム(P90)製品を生産するパートナーが三重富士通セミコンダクターならびにUMCであることを明らかにした。

P90は、プラットフォームとしてベースとなる技術は変えずに産業分野の違いにより、スマホタブレットを中心としたコンシューマ向け「P90C」、データセンター/クラウド向けで16Vにも対応する「P90B」、ヘルスケア/インダストリアル向けで36Vにも対応する「P90D」、そして自動車向けで80Vに対応する「P90U」とさまざまな用途に対応することを可能としている。

Maximでファウンドリ関連を担当するSenior Vice President, Technology & Manufacturing GroupVivek Jain(ヴィヴェック・ジェーン)氏は、「最初に立ち上がったのは一番のボリュームゾーンであるP90Cで、生産開始が2017年9月、出荷開始が2017年12月だ。その後、高電圧への対応作業が進められ、その他のソリューションが展開されていくという手順でプラットフォームが拡張されてきた」と、P90について説明する。そもそもプロセスの微細化はムーアの法則に沿って進められてきたものだが、主にメモリやロジックで進められてきた。アナログやミクスドシグナル関連の半導体でもようやく90nmに到達したというのが、今回の取り組みで、これにより得られるメリットとしては、電力密度および電力効率の向上、より多くの機能統合、そしてスタンバイ時の消費電力の低減と、ロジックなどで得られるメリットと基本的には変わりがない。

同社の製品で比べた場合、例えば前世代のS18(180nm)と電力密度を比べると、10Vや14VのレンジP90とS18では3倍ほどの改善がなされたとする。また、自動車向けパワーマネジメントIC(PMIC)を比べると、前世代のS45(0.45μm)とP90では、ダイサイズそのものが48%減となり、自動車LED照明システムディスクリート部品で構成した場合と比べると、プリント基板面積は47%減、部品点数もICで機能統合されたことにより40%減と、小型化、省部品化が図れるようになったとする。

Maximの製造を支えるパートナー

今回、同社はP90を生産するのが三重富士通セミコンダクターならびにUMCであることを明らかにしたわけだが、それ以前のプロセスについては、米国のTowerJazz工場(テキサス州サンアントニオ、2016年Maximが売却)やセイコーエプソンの日本の酒田工場(2006年より活用)、台湾Powerchipパートナーとして活用してきたほか、TSMCへの製造委託も行ってきた。

同社が語るパートナーとTSMCへの製造委託についての違いについて同氏は、「パートナーは我々が開発したプロセス(Maximはオレゴン州ビーバートンに工場を有している)を移管したり(エプソン酒田工場などの場合)、我々が作ったアーキテクチャを元に共同でプロセスの構築を行う(今回の三重富士通セミコンダクター)といった存在。これにより必要な技術はどういったものかを各ビジネスユニットが決定し、それをファウンドリ部隊が三重富士通セミコンダクターエンジニアたちと基礎的なものを作って、チューニングしていくといった、自社の特色ある技術を外部ファブでも生かすことが可能になった。一方のTSMCは、TSMCが用意した開発キットを活用して作っており、かならずしもMaximの特色ある技術が含まれているとは限らない」と説明する。

三重富士通セミコンダクターエプソンに次ぐ日本で2番目のパートナー企業(UMCは三重富士通セミコンダクターの親会社)となったわけだが、同社を選んだ理由について同氏は、既存パートナーファブでは不可能であった90nmプロセスが可能なリソグラフィ技術とCu配線に加え、自動車関連向け認証も取得済みで、自動車関連での実績もきちんと有していることを挙げており、そうした高品質な自動車向け製品を作るだけの技術力、そして品質が採用の決め手になったとする。

「新たな我々のパートナーである三重富士通セミコンダクターが、どういう未来を見据えたロードマップを考えているかについては興味がある」と同氏は次のプロセスをどう実現していくかを見据える。ただし、「次世代プロセスについては、自社開発の技術を使うかどうかはまだ不透明。これまで同様、自社の技術を使う、という選択となれば、P90でもやったように、パートナーと協力してプロセスを立ち上げるが、TSMCのプロセスでも良い、ということになれば話は変わってくる」と、まだロジックのように簡単に次のプロセスへ進む、というわけには行かないことを強調する。また、自社工場を残し続ける点については、「長期供給を保証しており、そうした製品を供給する必要がある。そのためオレゴンのファブは今後30年にわたって製造を継続する。現状180nmが中心だが、販売数もまだまだ多く、このファブがなくなることは無いし、この5年の間にも今後の活用を見越したファブの近代化改修を行っている」とするが、「90nmは300mmウェハであり、オレゴンの工場では生産できない。しかし、では長期供給をするために300mmのファブを新たに用意するか、というと現状、そうした考えはまったくない」と、300mmを自社でどうこうするつもりはないとの考えも明らかにした。

○90nmでフォーカスする自動車分野

MaximがここまでしてプッシュするP90。もっとも数が出るのは上述したモバイル機器分野ではあるが、同社がP90モバイル以上にフォーカスする分野が自動車だという。

Maxim Vice President & General Manager,Automotive Business UnitRandall Wollschlager(ランドール・ウォールシュラジャー)氏は、「P90を使ったPMICにより、これまで以上にこまかく制御できるようになるため、例えばLEDヘッドライトをよりインテリジェントなものへと進化させることができるようになるなど、さまざまな恩恵を得ることができるようになる。つまりアナログ半導体を活用することでデジタルやロジック半導体の機能尾より活用することが可能になる」と自動車分野におけるP90の担う価値を説明。こうした進化したプロセス技術とプラットフォームの存在が、新製品の投入期間も短縮できるようになるため、Maximの自動車業界内におけるポジションを高めてくれるとする。

なお、自動車分野では48Vのマイルドハイブリッドに対する動きがあるが、「完全電気自動車(フルEV)が普及する間の技術であり、長きにわたって活用されるものではない。そうした意味では、48Vへの対応ももちろん重要事項だが、その先にあるフルEVの時代に向けた技術開発も重要になってくる」と同氏は説明。Maximらしい技術を今後も提供していくことで、その存在感を高めていきたいとしていた。
(小林行雄)

画像提供:マイナビニュース