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AIの重要性を説くソフトバンクグループ孫正義会長 筆者撮影

 「日本はAI後進国である」と語るのはソフトバンクグループ孫正義会長だ。

 「本当に日本はAI後進国なのか」はあらためて検証が必要だが、確かに世界的には確実にAIの活用が進んでいる。

 グーグルアジア太平洋地区の記者を集めたイベントSolve with AI」を都内のオフィスで開催した。

 Solveとは「解決する」という意味。つまり、地球上の様々な社会問題をAIで解決する取り組みを披露するというイベントなのだ。

●AIで社会課題を解決

 ここ最近、プラスチックゴミによる海洋汚染が問題になっている。アメリカなどでは、プラスチックストローを排除し、紙製ストローに切り替えるのが当たり前になりつつあり、その流れは日本にも押し寄せてきている。

 そんな中、インドネシアのベンチャーGRINGGOでは、スマホカメラを使い、ゴミを撮影すると、AIがその中から価値のあるゴミを見つけ出すアプリを開発。ゴミ収集員に売れるゴミを見つけてもらい収入を得ることで、さらにゴミの収集量を増やしてもらい、結果、海岸や街をきれいにする支援になるというわけだ。

 また、インドでは、3000万人が綿の農家として生計を立てているが、2017年には50%の綿が害虫の被害に遭い、収入を減らしたことがあった。そこで、インドのベンチャーであるWADHWANI AIという会社では、畑に設置した、粘着剤のついた「虫取り紙」をスマホカメラで撮影すると、AIが虫の数や種類を判別。どのように対処すればいいかのアドバイスをもらえる仕組みを開発した。

 一方、森林においては、いま、違法な木材の伐採が問題となっている。広大な森林ですぐに違法な伐採をしている集団を見つけるのは難しい。しかし、放置しておけば、違法伐採によって、森林が大規模にダメージを受けることになってしまう。

 そこで開発されたのがグーグルが提供するテンサーフローTensorFlow)という機械学習(マシンラーニング)を用い、チェーンソーの音を検知して、アラートを発信。すぐに違法伐採者を取り締まれるという仕組みだ。

 チェーンの音を検知するために、木に太陽光発電で動くスマホを設置。機械学習でチェーンの音を聞き分けてアラートを出すというわけだ。森林には、鳥や動物の鳴き声が響き渡っているだけに、チェーンソーを音を聞き分けるにもAIが必要というわけだ。

●AIでくずし字を翻刻

 個人的にも「面白い」と思ったのが、「くずし字」を自動的に読みって現代語に翻刻(翻訳ではないらしい)するAIだ。その昔、古文の授業でくずし字を読み解くのが難しくて本当に嫌いだったが、AIを使うことで、くずし字を現代語にすぐに変換してくれるという。

 情報・システム研究機構データサイエンス共同利用基盤施設ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター特任研究員であり国立情報学研究所のタリン・カラーヌワット氏は「日本では1000年以上、くずし字が使われてきたが、1900年に教科書からくずし字が消えた。いまでは人口の0.01%以下の人しか読むことができない。しかも、今では図書館などで古い書物がデジタルデータ化されているが、画像が多くてアクセスできない。すべても書物を書き起こすと研究者一人当たり500年かかってしまう」と語る。

 そこで、国文学研究資料館が持つくずし字のデータを学習させるとともに、1文字ずつくずし字を認識。これにより、1ページあたり2秒でくずし字を現代語として置き換えることに成功。書物にもよるが、1時間あれば1冊の翻刻が可能になったという。

 精度としては85%ほどなのだが「16冊の書物で試したデータに過ぎない。将来的に、学習が増えれば正確性も上がってくるはずだ」(タリン氏)とのことだ。

●AIは地球を救う

 では、なぜここまでAIは急激に進化したのか。

 グーグルのシニアフェローでAI部門トップジェフディーン氏は「私が学生の頃は演算能力が足りず、フルの画像処理はできなかった。しかし、いまではコンピューターが劇的に速くなり、大規模な問題解決に使えるようになった。1990年には32GigaFLOPSだったものが、2019年には420TeraFLOPSにも進化した」と語る。

 今回のイベントでは、医療やアクセシビリティ、動物の生態調査などでのAI活用も紹介された。今後、ますますAIが地球を救う場面が増えていきそうだ。


AIは地球を救う