大盛況のうちに千秋楽をむかえた、舞台「機動戦士ガンダム00-破壊による再生-Re:Build」。Blu-rayDVD7月26日に発売されるのを前に、本作の脚本と演出を担当した松崎史也さんのインタビューを前後編でお届け。後編では、舞台オリジナルMS誕生秘話や、松崎さんの舞台に懸ける想いを語ってもらった。

舞台版で初お目見えした新型MS、GNW-004X「ガンダムスローネフィーア」。アリー・アル・サーシェス用にカスタマイズされた第4の「ガンダムスローネ」

――2.5次元の舞台だと、MSのような特殊なものは映像で見せる場合も昨今はあります。

松崎 MS自体の造形美とか、動きのカッコよさは、アニメの方が絶対にいいわけです。勝てないものをやると、舞台という別の媒体でやる意味がなくなってしまう。だから、勝てるところで勝負する、舞台でやる意味で勝負するのが、僕の考え方です。それは「00」に限らず、他作品でも常にですね。アニメが好きだからこそ、舞台では違った形にすることを考える。だって、ファンネルが初めてあの特徴的な動きを映像で見せたときの、「すげえ!」という気持ちは、忘れられないわけですよ。アニメには、そういう分かる人にしか分からないロマンがある。剣が光ってて、抜くと「ブーン……」と効果音が鳴るとかも、そう。ビームサーベルというアイテムだからこそ感じるロマンですよ。そういうロマンを、演劇でもできる範囲で表現はしますが、できないことは一切やらない。それが舞台として表現する上では正しいだろう、と。

――ところでMSといえば、舞台オリジナルの新型MS「ガンダムスローネフィーア」はどういった経緯で?

松崎 あれはですね……脚本の初稿を出したときに、舞台に監修として参加していただいていた水島(精二)監督が、「脚本がおとなしい」とおっしゃったんです。詳しくいうと、「悪くないけど、これだとただのテレビシリーズ総集編になってしまう。もっと舞台のオリジナル要素を入れたらいいのでは?」みたいな話でした。それなら、僕はMS好きなわけですし、駄目でもともと、舞台で初めて登場するMS、それもガンダムタイプの新型を脚本に入れてみよう、と。だから自分としては当然、提案はしてみるものの、ダメといわれるつもりだったんですよ。それが、通ってしまった(笑)

――まさかの。

松崎 うれしいおどろきでした。スローネフィーアにはサーシェスが乗ることは、最初から決めていたんですよ。というのも、サーシェス役の窪寺(昭)さんも僕と同じ、「ガンダム」大好き男なんです。僕より3歳上で、“ファーストガンダム”からのファンですね。若手が中心の「00」のカンパニー(※舞台の出演者)の中では、窪寺さんが新機体の価値を一番わかってくれる人だった(笑)。そんなことも意識しながら、ダメ元でアイデアを出したら、原作側のスタッフの皆さんもノリノリになってくれて、ウィップという鞭状の新兵器までデザインしてくださった。実は当初、ウィップ無しでの殺陣をつけて稽古していたんですけど、機体のデザイン画が上がってきたときに、「このアイデアは殺陣に取り入れなきゃ駄目でしょ!」 となって、慌てて変更したんです。急な話の上、どう取り入れるかのアイデアもそこから考えて苦労はありましたが、そんなこともひっくるめて、すべて「ガンダム」の仕事をやらせていただく上でのご褒美のような経験でした(笑)

――ホットな現場でらっしゃったんですね。シナリオの話もあらためて掘らせていただければ。特に後半です。その新機体も含めて、アニメからかなり大胆なアレンジが加えられています。

松崎 舞台は登場させられる役の数にアニメ以上の制限があり、長さも2時間程度という制限があります。そうした限界もあって、沙慈、ルイス、マリナ、アレハンドロといった、本来であれば外せないレベルキャラクターたちの出番を削って、ガンダムマイスターの4人にフォーカスした物語を書くという方針を最初に立てました。結果として、戦場に立つ人たちを中心にした物語になり、トリニティ3兄妹の出番も増えることになりました。理由はほかにもあります。これは僕のこだわりなのですが、舞台は「死ぬこと」を一番描きやすい媒体だと思っているんです。

――なぜでしょう?

松崎 物語が終わると、カーテンコールで役者が絶対に舞台上に出てくるからです。たとえばマンガだと、死んだらその登場人物は終わりですよね。「あしたのジョー」で力石徹が死んだとき、実際に葬式が開かれましたが、ああいうことができるのは、死んだらもう二度と出て来ないからではないか。でも舞台では、フィクション、役の上では死んだ俳優が、絶対に舞台の最後に、生きた姿をお客さんの前に現す。そうした形式があることにより、舞台ではより残酷な死を描けるというのが、僕の考えなんです。

――なるほど

松崎 僕が舞台にこだわるのは、そこが大きいんですよね。生きて死ぬ……役者が舞台の上で、命の炎を燃やして、散っていく。そのとき役者が本気を出せば出すほど、お客さんにはその熱気が届きやすい。後半は、舞台としての「00」の中で、登場人物たちが次々と散っていく中で、その生き様をもっとも強く届けられるような形のシナリオを書いたつもりです。「00」が、本来であれば戦争に巻き込まれるはずのないような人間が、戦争に巻き込まれていくところに重点を置いていたアニメだということは自分なりに理解していて、その意味では沙慈やルイス、マリナたちが登場した方がいいことは百も承知なのですが、舞台におけるダイナミックさ、2時間の中で伝えられるメッセージを考えると……登場人物たちが、戦うことを迷っている時間がなかった。

――そうして作り上げられた舞台は、終演後もまだまだ盛り上がりを感じさせます。これだけ好評だと、2nd Seasonも気になるところですが……

松崎 そうですねえ……。

――少し、燃え尽きた感があったりします……?

松崎 正直なところをいえば、終わった直後、一度燃え尽きはしました(笑)。でも、お客さんのあたたかい声ですよね。そういうのって、思ってる以上に作る側にとってはガソリンになるというか。やり終えたときは「こんな大変なものはもうやりたくない」と思いましたけど、今はもう、ごくフラットというか、またやるとなったら、さらに新しいものをやろうという意欲があります。挑戦する機会があるかぎりは、なるべく挑戦を続けていきたい。そのために、舞台に次の展開に繋がるシーンも入れましたし。キャスト達も、もし次があるなら絶対にまた参加したいといってくれていますし、水島監督もオリジナル展開を、まるで「共犯者」のように一緒になって考えてくださる。関係者のみなさんにそんなふうに感じてもらえる作品は、幸せだなと思います。(WebNewtype・【取材・文:前田久】)

舞台「機動戦士ガンダム00 破壊による再生 Re:Build」のBlu-ray&DVDが7月26日に発売