大盛況のうちに千秋楽をむかえた、舞台「機動戦士ガンダム00 -破壊による再生-Re:Build」。Blu-rayDVD7月26日に発売されるのを前に、本作の脚本と演出を担当した松崎史也さんのインタビューを前後編でお届け。ガンダムを舞台で上演するという前代未聞の企画にどう挑んだのか、その「舞台裏」に迫った。

松崎史也さんが「ガンダム」への熱い思いをつぶやいたTwitter

――「機動戦士ガンダム00」の舞台化が発表された際、Twitterで「ガンダム」への熱い思いをつぶやいていらっしゃいましたよね。

松崎 あはは。はい、書きました。

――本題に入る前に、まずはそんな松崎さんの「ガンダム」体験からお聞きしたいです。

松崎 わかりました。僕、‘80年生まれなんですけども、ちょうど小学生のころに「SDガンダム」が周囲を席巻していたんです。……というか、そのころ本家が動いていなかったんですね。

――「機動戦士ガンダムΖΖ」の放映が‘87年に終わり、その後、’93年の「機動戦士Vガンダム」まで、しばらくテレビシリーズでの「ガンダム」の展開が空白状態だった時期ですね。

松崎 そうです。だからカードダスだとかBB 戦士といったSD関連のアイテムで、武者頑駄無や騎士ガンダムの方を先に意識したんですよ。「元ネタはわからないけど、なんだかカッコいい」みたいな感じでした。いちおう、「SD ガンダム」の商品にも、ΖガンダムだとかνガンダムΖΖガンダムといった機体はありましたし、パイロットらしきキャラもいたので、元になった作品の知識がまったくなかったわけではないですが。で、そうこうしているうちに中学生になると、まわりに詳しい人物が現れ始めて、最初に見るべき「ガンダム」はこれだと教えてくれるわけですよ。

――どれだったんですか?

松崎 まずは「機動戦士ガンダム」の劇場版三部作を見て、それじゃ物足りないと感じたら、普通に全部のテレビシリーズを第1話から見ていけばいい……みたいな感じでした。というわけで、「機動戦士ガンダム」を見たあと、「Z」を見て、そのあと、「逆襲のシャア」を見る。「ZZ」はちょっと後回しにして……(苦笑)。

――まずはアムロシャアの物語を追いかけたかった。お気持ち、よくわかります(笑)

松崎 もちろん、あとからちゃんと「ZZ」も見ましたけどね。で、友達に教えてもらいながら、映像だけじゃなく、小説の「(機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」を読んだり、周辺の展開にも手を出して……みたいな感じで追いかけていきました。だから、少し上の世代の方のようなハマり方とは少し違いますよね。知ったときには既に「スゴいアニメ」というポジションにあって、地位が確立された「文化」のひとつとして追いかける形でのハマり方でしたから。マンガアニメゲームがすごく好きな子供としては、なるべく「ガンダム」のことを知っていたほうがいい……みたいな風潮があって、それに合わせるような気持ちがあったというか。唯一、何も知らない状態からどハマリしたといえるのは「SDガンダム」ですし、あまり「ガンダム」のことを正面きっては語れない気持ちもあるんです……。

――いやいや、ご謙遜されなくとも。では、あらためまして、そんな原体験をお持ちの松崎さんに、「00」の舞台化のお話が来たとき、率直にいってどんなお気持ちでした?

松崎 怖かったですね。ただ……作品のファンの方に、いちばん怒られない「ガンダム」の舞台を作れるのは自分だとも思ったんです。この言葉が適切かはわかりませんが、オタクとして自分より濃い人は、世の中にたくさんいます。でも舞台の演出を仕事にしていて、自分くらいオタクの感覚がわかる人間は、そう多くない。そんな自負と自覚があったんですね。だから他の演出家が手がけるよりは、自分がやった方が絶対に良くなるだろう、と。ならば自分がやろう。自分が演劇で培ってきたノウハウと、「ガンダム」らしさを融合できる。そんなことを考えて、引き受けることにしました。

――「ガンダム」を舞台化するとなると、モビルスーツ(以降MS)の表現がハードルだったかと思います。完成した舞台では、舞台装置と演者が一体になったかのような強烈な演出がなされていましたが、あのアイデアにはどう辿り着かれたのでしょう?

松崎 そもそも最初にお話をいただいた時点で、原作チームの方々には、「『00』は人間ドラマが中心なので、MS戦にはこだわらなくてもいい」と言われていたんです。でもこちらからいわせてもらえば、「それは、あなたたちが『ガンダム』というシリーズの中心にいるからそう思うんじゃないか!」と。

――(笑)

松崎 「『人間ドラマが中心』っていうけど、見に来る人は『ガンダム』だと思って見に来るんだよ、それは!!」と(笑)。……そうした理由もですし、それ以上に、主役となるガンダムマイスターの4人の存在意義を示すために、MSの描写は不可欠だと思ったんです。戦争を止めるための力、アイコン……僕、ジョン・レノンが好きなんですけど、彼はビートルズで活躍した後に、「イマジン」で平和を歌うようになった。「ウィー・アー・ザ・ワールド」を歌ったマイケル・ジャクソンたちもそう。誰でも世界平和を祈ることはできるし、そうした普通の人々の祈りも素晴らしいけれど、多くの人に声が届く立場になってから平和を祈ることに意味がある側面は、どうしてもある。やはりMSという機体の存在がカッコいい、美しいことで、平和へのメッセージをより強く伝えられるという部分が、「ガンダム」と名の付いたシリーズには絶対にある。その意味で、4人のガンダムマイスターの、正義とは言い切れないかもしれないけど、平和を求めるための武力を描くこと。自分たちの信念はこの機体にあるのだと、彼らが感じていることをきちんと舞台でも見せる意味はすごく大きいので、MSを出さないわけにはいきませんでした。自分がやる以上は、出すという前提で作品のことを考えるしかなかったんです。

――はい。

松崎 とはいえ、最初からバッと、舞台で実現したMSの見せ方が頭の中にあったわけではないです。ただ、可能な技術レベルと、予算規模……つまりは、演劇的な技術の引き出しの中のどれを使って、どういう初めての挑戦をしてみるかという意識はありました。MS戦の演出は、今作のために自分が編み出したオリジナルのものだと認識しているんですけれども、そこに至る原型のようなものはあったんです。

――どのようなものですか?

松崎 大きな舞台装置を動かすという演出は、元々舞台の世界にはある発想なんですね。「00」の舞台でいうと、トレミーの内部を表現した階段の演出のようなものですね。ああした形で、舞台装置を動かすことで場面転換をする手法は、以前からあるものです。ただ、以前手がけた別の作品の舞台で、陸上の障害物レースのような場面を描く必要があって、舞台装置の移動をかなりの高速で繰り返したことがあったんです。演者の前に障害物が移動しては、また元の位置に戻ってきて、移動して……という動作を繰り返して、舞台に動きをもたらす、みたいな。そのノウハウはMS戦に使えそうだなと思っていました。その舞台で装置を動かしてくれていた子が、「00」の舞台にもアンサンブル(※MSの台座を動かす黒子役)として参加してくれました。彼らじゃなければ、あのタイミング感、あのスピード感で、かなりの重量がある装置を決められた位置に正確に動かすことはできなかった。理論上は他の人でも可能であっても、実際にそれをできる技術は、彼ら以外に持っていない。そうした意味で、先例を踏まえての進化であったとはいえます。

――アンサンブルは、舞台のカーテンコールでもMVPとして紹介されていましたね。

松崎 お客さんからの拍手が大きくて、きっと彼らも嬉しかったと思いますね。

【後編では”舞台オリジナルMS”誕生秘話が明らかに!】(WebNewtype・【取材・文:前田久】)

舞台「機動戦士ガンダム00 破壊による再生 Re:Build」のBlu-ray&DVDが7月26日に発売!