香港では21日、市民らは「逃亡犯条例」改正案の完全撤回を求めて、再び大規模な抗議デモを行った。主催側の民間人権陣線(民陣)によると、約43万人の市民が参加した。同日夜、香港警察当局は、幹線道路を占拠する若者らに対して、催涙弾やゴム弾などを発射して強制排除した。また、一部の市民は暴力団の組員とみられる人らに襲撃された。少なくとも36人が負傷したと伝えられた。

同日、市民らは、香港島中心部にあるヴィクトリア公園から出発して、警察本部などの官庁所在地湾仔(ワンチャイ)までデモ行進を行った。6月9日から続いた抗議デモと同様に、市民は改正案の完全撤廃、真の普通選挙、林鄭月娥氏の「抗議デモに参加した若者は暴徒だ」との発言の取り消しなどを要求した。

その後、一部の市民は警察本部前で抗議活動を続けた。また、他の市民らは香港島西側に位置する中国当局の出先機関「中央駐香港連絡弁公室(中連弁)」の前で再集結し、中国当局が香港の高度な自治や言論の自由を破壊しようとしているとして、強く抗議した。市民は同庁舎に卵やガラス瓶などを投げつけ、スプレーで「改正案反対」のスローガンを庁舎の壁に吹き付けた。警官隊が中連弁に向かったとの情報を受けて、市民らは中連弁周辺から中環(セントラル)へ撤退した。

警察当局は「速龍小隊」と呼ばれる警察当局の機動隊を投入し、強制排除に乗り出した。機動隊は、香港島の上環(ションワン)周辺で市民に向けて、催涙弾、ゴム弾とビーンバッグ弾などを放った。米ラジオ・フリー・アジア(RFA)21日付によると、警官らは市民らに対して、地面や足など下の方向ではなく、平行にゴム弾などを発射した。国際ルールでは、警官隊がゴム弾などを使用する場合、抗議者の上半身を狙ってはいけないと定められている。

一方、中国本土に近い香港新界元朗区の地下鉄駅の構内と車両内では、デモに参加した市民は突然、数十人の集団に、木の棒や竹の枝で無差別的な襲撃を受けた。報道に当たった香港メディア「立場新聞」の女性記者を含む報道関係者数人や、立法会(議会)議員の林卓廷氏も襲われ、頭から血を流すなどケガを負った。集団のメンバーは全員、上半身に白いTシャツを着ていた。

市民が撮影した動画では、襲撃が起きた最中、警官数人が現場に駆け付けたにもかかわらず、市民を救助することもなく、現場から離れた。事件発生1時間後に、警官隊が現場に到着した。

インターネット上に掲載された動画投稿によると、襲撃を避けて地下鉄車両の中に逃げ込んだ市民の中には、「殴らないで」と泣きながら、跪いた人がいた。

7月21日夜、香港新界元朗区の地下鉄駅で市民らは白いTシャツを着た数十人に木の棒などで暴行された(スクリーンショットを合成)

RFAが得た情報によれば、襲撃前、白いTシャツを着た数十人は元朗区に集まり、集会を行った。中には体にタトゥーを施された男が「元朗に混乱をもたらした人を叩き殺す」と話した。また、その場に新中国共産党の何君尭・立法会議員が現れ、白いTシャツの集団らに「ご苦労様」と声をかけたという。この集団は地元の暴力団メンバーだとみられるが、現時点では確認されていない。

香港メディアによると、暴行を受けた市民のうち、少なくとも36人が病院に搬送された。男性市民1人が危篤状態で、4人が重体だという。

民陣、香港記者協会、独立評論人協会、民主派立法会議員らなどはそれぞれ声明を発表し、報道関係者と市民への暴行を強く非難した。議員は襲撃事件について警察当局と暴力団が手を組んだ可能性があると批判した。

香港各界は、警察当局が上環で市民に対して催涙弾を発射して鎮圧した一方で、元朗で市民を襲撃した集団への取り締まりが遅れたことに強い憤りを示した。

(翻訳編集・張哲)

香港では7月21日、市民43万人が「逃亡犯条例」改正案の完全撤回を求めて抗議デモを行った(LAUREL CHOR/AFP/Getty Images)